スーパーに行ったら買おうと思っていた商品が品切れだったり、レジに行列ができていたりして、思ったよりも時間がかかってしまうことが多々あります。

データは光の速さで移動しますが、食料品はそうはいきません。張り巡らされた高速インターネットにより情報通信はますます高速化していますが、商品の売買に伴って必要になる物理的な業務の効率化は立ち遅れたままです。しかし、それも変わろうとしています。

ホワイト・ペーパー(英語)「最先端の小売と物流のオートメーションを実現」を読む

TIのシステム・エンジニアのGustavo Martinezは次のように述べています。「規模の大小にかかわらず多くの企業が、センサ・テクノロジと機械学習を使用し、ショッピング体験の向上を目指しています。顧客は、レジ待ちの長い列に並ぶこと、買いたい商品が店にあるかどうか、あったとしても他よりも値段が高い、等ということにうんざりしています。」

ポケットに入るショッピング・ヘルパー

機械学習とGPSテクノロジを組み合わせることで、見込み客が小売店の近くに来たときに、その人に合わせた広告を配信する技術はすでに実現しています。次のステップは、Bluetooth®ビーコンなどの店内設置センサを使って、棚1つ1つのレベルで異なる、ごく局所的な宣伝を行うことです。

このような技術により、例えば「バニラ・クッキーが半額」といったカスタマイズ通知をスマートフォンに表示させると、顧客はしばらくクッキーの売り場で商品を眺めるでしょう。あるいは、紙製の値札を液晶ディスプレイの値札に置き換えると、近くに来る顧客ごとに内容が変わるような、臨機応変な値引き表示を棚そのもので展開できるでしょう。

Gustavoは次のように語ります。「このスマート・ディスプレイは、買い物客に店内を案内するのにも役立ちます。お店のアプリは、顧客の買い物リストの品物すべてを買い回るのに最も効率的なルートを提示でき、顧客が近づくと棚に組み込まれたディスプレイを点灯させて、探している品物を見つけやすくすることができます。」


レジ待ちの列の終わり

店舗でのショッピング体験の最も大きい変化の1つに、セルフレジの出現があります。セルフレジは、店側の人件費の削減になるだけではありません。

Gustavoは、「一番は、レジの列に並ばなくても済むことです。少なくとも私にとっては、買い物に行く際、レジ精算のために10分か15分も余計に待たなければならないのが一番面倒です。」と述べています。

しかし、セルフレジも万能ではなく、未包装の果物など、バーコードのない商品の打ち込みといった、比較的手間のかかる作業が残っています。また、店員が売り場を駆け回って、問題に対処したり年齢制限のある商品について補助をしたりすることもまだ必要です。

TIのシステム・エンジニアのAldwin Delcourはこう述べています。「一部の企業は、セルフレジにカメラを組み込み、マシン・ビジョンを使って購入する商品を特定できる方法を探っています。カメラの前にリンゴを置くだけでシステムが自動的に商品を認識するので、膨大なメニューから商品を探し出す必要がなくなります。」

セルフレジの台数が増えても行列をまったくなくすことはできていませんが、列の終わりは見えてきたかもしれません。小売オートメーションの最先端を行く店舗では、顧客は店に入るときに自分のスマートフォンをかざします。カメラと棚に設置されたセンサでかごの中に入れられた商品を数え上げて、顧客が店から出るときに自動的に代金を精算します。

現時点では、これを実現するには、機械学習のアルゴリズムで処理するために、場合によっては何十万もの店舗からクラウドへデータ・ストリームを送信する必要があります。

Gustavoは、「吸い上げられるデータは相当な量になるので、非常に難しい課題を突き付けられます。この負荷を軽くするために、TIでは店側でデータを処理する方法に注目しています。」と述べています。



Gustavo Martinez(左)とAldwin Delcour(右 

TIのミリ波センサは、物体にあたって跳ね返ってきた高周波数の電波から物体の形、大きさ、距離を正確に識別することで認識作業を単純化します。場合によっては、低消費電力の機械学習アプリケーションに特化して設計されたTIのSitaraTMプロセッサで店内処理が可能になるかもしれません。

在庫切れの心配がない、高度なセンシングを装備した店舗

顧客が店内でスムーズに買い物するには、買いたい商品が確実にそこになければなりません。ユビキタス・センシングは、顧客の追跡だけでなく在庫の追跡も可能で、商品の残りが少なくなると、素早く検出して、補充を注文できるようにします。

Aldwinはこう述べています。「店には、商品を取ると後ろから新しいものが押し出されるような、バネの仕組みがあるかもしれません。センサを背部に設置すれば、商品の移動距離を検知し、残数が少なくなったことと、次の配送を依頼する時期かもしれないことを中央コンピュータに知らせることができます。」

補充注文が出された後は、店内で顧客を案内するのと同じテクノロジを使って在庫ピッキング係を倉庫内で案内できるので、注文処理のプロセスがずっと迅速で効率的になります。

未来の金曜日の夕方

未来の食料品店での買い物はこのようになっているかもしれません。金曜日の夕方、近所のスーパーのアプリからフィッシュ・タコスのレシピが送られてきます。今までの買い物行動から、あなたがメキシコ料理好きで金曜日の夜は料理を楽しむ人であると、スーパーの社内の機械学習アルゴリズムが突き止めているのです。「おすすめ」をクリックしてデジタル・ショッピングリストに材料を追加したら、スーパーに向かいます。

ドアを通るとポップアップ通知が出て、すべての材料の売り場を示す地図が表示されます。対象の商品に近づくと、その下のラベルが点灯します。売り切れになっているものはありません。

材料を全部かごに入れたら、そのままドアを通り抜けます。警備員が追いかけてくる代わりに、スマートフォンでレシートが発行されて、すべての商品の代金があなたの口座から支払われたことを知らせます。

このすべてのプロセスには数分しかかかっておらず、フィッシュ・タコスの材料を全部買ってすぐに帰宅することができました。あとは金曜の夜を自由に過ごすのみです。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2019年11月21日)より翻訳転載されました。
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