性能と効率の向上が絶えず求められるリアルタイム電力変換の領域において、設計者にとって重要なのは、スケーラブルで持続可能な産業用および車載用電力変換ソリューションの設計に労力を注ぐことです。こうした需要は、一方でサーボ・ドライブ、電力供給、グリッド・インフラストラクチャ、オンボード充電といったアプリケーションにおいて、MIPS(毎秒100万回の命令数)、パルス幅変調器(PWM)、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)などのリアルタイム制御システム要件が増大することにもつながります。また、開発者にとっては、シンプルで低リスクな製品ラインを構築し、維持することが必要になります。性能の拡張性とポートフォリオの互換性が備わることで、開発者は労力の少ないコスト効率に優れた方法でリアルタイム制御リソースを拡張し、長期的な電力変換ソリューションのプラットフォームを維持することができます。

分散アーキテクチャを通じたリアルタイム制御リソースの拡張

再生可能エネルギーの普及により、ソーラー・インバータのようなアプリケーションでは電力レベルの上昇傾向が強まっています。電力レベルが上がれば、電力変換プロセスにおいて重要な役割を担うMIPS、PWM、ADCなどのリアルタイム制御リソースがより多く必要になります。こうした必要性への対処方法として一般的なのは、単一の中央コントローラでソーラー・インバータ・システム内の複数の電力段を制御するというものです。では、このコントローラでリソースが不足し、より高い電力レベルや増加する電力段の数に対処できなくなった場合は、何が起きるのでしょうか。その解決策として設計者が追い求めてきたのが、分散アーキテクチャです。

分散アーキテクチャの背景にある考え方は、複数のリアルタイム制御マイコンを接続して、システムで使用できるリソースとペリフェラルの数を増やすというものです。この実装なら、設計者が以下の点を妥協することなく製品に必要な性能と効率を確保できます。

  • マルチチップ・ソリューションのコスト
  • 絶縁を介して複数のデバイスを接続する複雑さとインターフェイスの速度
  • 外部メモリ・インターフェイスのあるホスト/マスタでのペリフェラルの不足

TIのC2000リアルタイム制御マイコンのポートフォリオは、上記の3項目に対処しつつ、分散アーキテクチャの実装を通じて電力変換の真価を発揮するデバイスです。

  • TIのC2000リアルタイム制御マイコン・ポートフォリオの最新製品であるTMS320F28002xファミリは、コストが低く、分散アーキテクチャを通じて設計者がBOMコストを最適化できます。システム・コストをさらに最適化するには、アクセラレータ、構成可能ロジック、アナログ・コンパレータ、ペリフェラルなど、C2000リアルタイム制御マイコンに搭載されている他の機能を利用すれば、システムレベルの統合が可能です。
  • Fast Serial Interface(FSI)を使用すると、信頼性と堅牢性に優れた、最大200Mbpsでの高速チップ間または基板間通信を容易に行えます。FSIは、CANやSCIのような他のインターフェイスに比べて有利です。これらのインターフェイスは、低速でスキュー補正を行えないので、絶縁を介して複数のマイコンを接続する手段としては採用できません。スキュー補正機能と固有の速度から、FSIは、複数のマイコンを接続してリソースの拡張性を確保するための、実現可能で労力の少ない堅牢なインターフェイス・オプションとなっています。図1は、どのようにFSIを活用すれば、複数のリアルタイム制御マイコンを接続して、ソーラー・インバータやその他のアプリケーションにおけるMIPS、PWM、ADCの拡張性を確保することができるかを示しています。 
  • F28002xにはHost Interface Controller(HIC)が採用されており、マイコンをブリッジとして機能させる��とで、最終的にはマスタ・プロセッサでFSIやコントローラ上のその他のペリフェラルを間接的に使用できるようになります。ホスト・プロセッサでFSIを使用できるかどうかに関係なく、F28002xがあれば、設計者は分散アーキテクチャを通じて拡張性を確保することができます。

 1:複数のコントローラを接続してリソースの拡張性を確保するためのFSIの活用方法

ポートフォリオの互換性を通じて移行とプラットフォーム開発を容易にする

リソースの拡張性に加え、設計者は製品のプラットフォームの構築と維持という課題も抱えています。これらを効率的に行うには、ハイエンドからミッドエンド、ローエンドまでの製品ラインを構築する、労力とリスクの少ない手法が必要です。

C2000リアルタイム制御マイコン・ポートフォリオは、デバイス・ファミリ間にペリフェラルとコードの互換性があるので、開発者が少ない労力で幅広い製品を使用できます。これにより、類似するマイコン・テクノロジーを基に幅広い製品を移行および構築するプロセスがシンプルになり、持続可能なプラットフォーム・ソリューションが実現します。図2は、第3世代のC2000リアルタイム制御マイコンに含まれるピン互換、ペリフェラル互換、コード互換のデバイス・ファミリのポートフォリオであり、ハイエンドからミッドエンド、ローエンドまで、多岐にわたります。 

2C2000ポートフォリオ全体のペリフェラルおよびコード互換性

発展を続ける車載用および産業用電力変換の市場において、設計者は、リアルタイム制御リソースの簡単な拡張方法と、長期的なプラットフォーム・ソリューションを構築、維持する方法という2つの重要な設計課題への対処に役立つイノベーションを探し求めています。FSIを介して複数のC2000リアルタイム制御マイコンを接続することにより、ソーラー・インバータや分散型多軸サーボ・ドライブのようなアプリケーションにおけるMIPS、PWM、ADCの拡張性を確保する方法は、リアルタイム制御リソースを拡張するための、労力とリスクの少ない、コスト効率に優れたソリューションです。それに加え、C2000ポートフォリオに含まれるデバイス・ファミリにはコードおよびペリフェラル互換性があるので、少ない労力とリスクで長期的なプラットフォームを開発できます。F28002xデバイス・ファミリは、分散アーキテクチャを通じてリアルタイム制御リソースを拡張するコスト効率に優れた方法を提供するだけでなく、互換性のある既存のC2000ポートフォリオに加わるので、長期的かつ持続可能なソリューションの構築にも利用できます。

参考情報
+ F28002x に関するデータ・シート、リファレンス・デザイン、サンプル
+高速シリアル・インターフェイスによる分散型多軸サーボ・ドライブのリファレンス・デザイン
+ C2000™ マイコンを使用する 2相インターリーブ LLC 共振コンバータのリファレンス・デザイン.

+C2000™ マイコン向けモーター制御ソフトウェア開発キット.
+C2000™ マイコン向けモーター制御ソフトウェア開発キット.

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年3月20日)より翻訳転載されました。
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