つながることで新たな価値が生み出される、コネクテッド・ワールドやネットワーク化社会への移行が加速しています。2013年時点で、世界人口の96%以上が携帯電話を利用し、発展途上国の人口の74%以上がモバイル・ブロードバンドを利用していました。2019年までにワイヤレス・データ・ネットワークのトラフィックはさらに10倍増えると予測され、地球上のほとんどの人がモバイル・サービスを利用するようになります (1,2)

躍進するM2M(マシン・ツー・マシン)通信との間でも大きな帯域幅の奪い合いになるでしょう。飛行機が国境を超える際に、1台のジェット・エンジンが0.5テラバイト以上のセンサ・データを集め、その多くを各地上局に伝送する必要があることをご存じでしたか。また、ガス・タービン・エンジンの1枚のブレードに付いている1つのセンサが毎日何ギガバイトものデータを生成していることをご存知でしょうか。

テザリングを伴わない接続に対するニーズは飛躍的に増加しており、それはいくつかの要因により加速されています。新しいワイヤレス・リンクは新たに現れたアプリケーションやデータ量の多いコンテンツで埋め尽くされてしまいます。ストリーミング・メディアとクラウド・ベースのサービスが、ワイヤレス・インフラのペイロード(3)の最大80%を占めることになるでしょう。今後登場する一層高精細なビデオ・コンテンツは、より高帯域幅に対するニーズをさらに加速していくでしょう。

ワイヤレス接続は、多くの形態のケーブル接続を急速に置き換えつつあります。世界の多くの地域で、ブロードバンド・アクセスにワイヤレスが最も多く利用されています。また、多くの携帯機器にはもはやUSBやディスプレイ・インターフェイスが付いておらず、全ての通信をワイヤレス接続に委ねています。また、多くのデバイスが人の手をあまり介さずにワイヤレスで相互通信しています。産業用と商用アプリケーション、およびその他のワイヤレス・センサ・ネットワークにおいてM2M通信の導入はますます増えてきました。

端末デバイスの演算タスクとストレージがクラウド上に移行するに伴い、クラウド・サービスは成長しています。ライドシェアリング(自動車の相乗りサービス)やドローンによるリモート・センシングなど、新しいモバイルのe-コマース・アプリケーションが多数登場しています。その結果ワイヤレスのトラフィックは、主にデバイスとクラウド・サーバー間のバックグラウンドでますます増えていくでしょう。

つまり、2つの大きな要素が5G標準における革新的技術に対するニーズを促進します。1つ目の要素は、ネットワーク容量を100倍に高められるよう、既存のワイヤレス利用例を最適化し、拡大していくことです。2つ目の要素は、マシン・タイプ(M2M)、車両間通信、およびその他のミッション・クリティカルな低遅延アプリケーションなどの新しいサービスに対応することで、遅延は10倍改善されます。ここでは、5G標準規格の要件や同規格で実現されることの予測と、その影響について説明し、将来のワイヤレス・インフラにおける弊社の強力な製品ポートフォリオについて触れました。

次世代5Gワイヤレス・ネットワークの4つの主要要素
1. 容量の拡大とスペクトル効率:世界のワイヤレス・データ需要は2014年から2020年までに30倍以上に増加すると予測されています(3)。そのような急成長に対応するために、5G標準では10倍の容量向上と3倍のスペクトル効率の改善を達成することを目標としています。スペクトルは、最近の平均的な価格が2ドル/MHz/1人と非常に貴重で、不足しています。5G標準規格では、既存のライセンス・バンド(免許が必要な周波数帯域)とアンライセンス・バンド(免許が不要な周波数帯域)に加えて、6GHz以下からミリ波周波数までの新しいセルラー・バンドも使用します。また、同標準規格は、スペクトル・シェアリング、MIMO、スモールセル技術、マルチバンド・クラスタリングなど、多数の先端技術を使用して、新しいサービスを提供できるよう貴重なスペクトルを効率良く利用します。

2. 進化を遂げ、柔軟性を備え、異種混在環境に対応:新しい5G標準規格は、進化しているエコ・システムや新しいアプリケーションに対応できるよう柔軟性が求められます。携帯デバイス上で利用される新しいモバイル・アプリケーションやサービス、新しい自動車通信、産業インターネット、およびその他多数のアプリケーションやサービスで求められる遅延および帯域の要件は進化しています。5Gは、既存のセルラー標準規格が進化することで、その恩恵を享受することができます。また、電波密集地域向けのミリ波スペクトルの新しい無線技術のほか、Wi-Fiを含むライセンスおよびアン・ライセンスバンド帯での既存無線リンクを調整し、最適化させます。

3. QoS(クォリティ・オブ・サービス):将来のワイヤレス・システムは、通話途絶や電波到達圏の狭さ、時間のかかるダウンロードなど、長く続いてきた課題を解決すると期待されています。アプリケーションによって求められるQoSは大きく変わります。高い信頼性が求められる車両通信やM2M通信に求めらえる低遅延、ストリーミング・ビデオに対する高データ帯域、多くのユーザーにとって電波到達圏が広いことはワイヤレス・サービスの幅広い普及には欠かせません。

4.エネルギー効率:携帯デバイスのバッテリ寿命を延ばし、「エコ仕様」のアクセス・ポイントのエネルギー効率を上げることは消費者やサービス・プロバイダにとって不可欠です。多くのM2Mネットワークは多数のノードを持ち、稼働率は比較的低い一方で、ビデオ・ストリーミングではより高いピーク・データレートでより少ないノード数を求められます。このため、無線リソースを状況に応じて割り当てることがその構成を最適化し、エネルギー効率を改善します。

5Gを可能にするイノベーション

5Gのアーキテクチャによって、ネットワーク、無線アクセス、および物理層は何年間も進化し続けるでしょう。全てのレイヤーで、拡張性がある画期的なサービス需要のイノベーションが実現されるでしょう。TIでは、5Gワイヤレス無線通信を進化させる、さまざまな革新的な製品ポートフォリオにわたり、以下のような広範な研究開発プロジェクトを進めています。

・高速データ・アクイジション:5Gの広い帯域、マルチ無線という特徴は、最大限の柔軟性と多数のバンドおよび標準に対応できる強力なフロントエンドを提供するため、広範なワイドバンド・超高速のADコンバータおよびDAコンバータが求められます。

Massive MIMO(大規模MIMO)を使用した先端的なRF回路プロセッシング:5G用のパワーアンプやアンテナ、フィルタ、マッチング回路の数は、64以上にも達します。これらの部品の効率化と高集積化は、全体的な電力効率と無線性能の向上に欠かせません。

・クロックとタイミング:高速のデータ取得と高性能なワイド・マルチバンド無線には、超低ジッタ・タイミングと周波数のリファレンスが必要です。5G無線のスペクトルにスペクトル・アジャイル機能には、高速ロッキング・リファレンスが一層必要になります。

・ミリ波テクノロジー:27GHz以上の高周波で多数のアンテナを持つ高集積MIMO無線が5Gシステムには欠かせません。

・電源管理:次世代無線用のインテリジェントな電源管理は、分散電源管理のための遠隔監視および通信を実現すると共に、可変的な負荷とトラフィックに対して電力供給を最適化するよう状況に応じて再構成できます。

シームレスで場所を選ばない接続は、今後も経済成長とかつてない大きな商機をもたらす大きな推進剤となるでしょう。それはまた、社会的な交流やグローバル化にも大きな影響を与えるでしょう。また、新たに登場しているマシンタイプ通信は、多くの市場分野においてより高い生産性と効率を実現します。画期的なイノベーションは、このビジョンの実現に欠かせません。TIは、このミッションの実現に全力で取り組んでおります。

参考情報
・TIのワイヤレス・コネクティビティ・リファレンス・デザインについて
・TIのワイヤレス・コネクティビティ概要について
5Gを実現するワイヤレス・インフラ技術と製品について

(注釈)
1: IEEE proceedings, June 2016
2: Ericcson Mobility Report Nov 2013
3- Bell Labs Nokia Consulting Report, Apr 2016

※すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2016年6月14日)より翻訳転載されました。

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