テキサス・インスツルメンツ・インドでは、エンジニアの技術的な知識を向上させるため、TIのマイコンを活用して設計したアプリケーションを募集するコンテストを実施しました。多くの応募がありましたが、ここではその中から、革新性に富み、日本の設計者の方々のアイディア作りに役立つ設計プロジェクトとして次の3つの応募作品を選び、詳しく解説します。

設計のヒントとしてお役立てください。

              ・ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子

              ・先進的な駐車場管理システム

              ・スマート・リモート・コントロール・システム

今回は、「ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子」と「先進的な駐車場管理システム」をご紹介します。

ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子:
Boschers(ボスチャーズ)チーム

このシステムでは、利用者が簡単な音声コマンドを使って車椅子とロボット・アームを操作できます。

システム全体の制御には、TIのTiva C シリーズ TM4C1294 接続済みLaunchPad評価用ボードを使用しています。Tiva CはARM® Cortex®-M4Fベースの32ビットMCUで、このような組込みシステムの制御にちょうど手頃です。

音声コマンドの認識は、専用LSIのHM2007を搭載した音声認識キットを使用しています。複数話者対応で、最大40語の認識ができます。このビデオでは、車椅子操作用のコマンドとして"LEFT"(左折)、"RIGHT"(右折)、"FRONT"(前進)、"BACK"(後退)、"STOP"(停止)の5つ、ロボット・アーム操作用のコマンドとして"PICK"(コップをつかむ)、"FEED"(利用者に水を飲ませる)の2つのコマンドが出てきます。

車椅子の駆動はDCモーターを左右1個ずつ使用して、左折、右折、前進、後退などの動作を可能にしています。モーター・ドライバには、専用LSIのL298を搭載したモーター駆動ボードを使用しています。

LaunchPad評価用ボード、音声認識キット、モーター駆動ボードはいずれも安価で広く使われているものです。

ビデオの中では、実際に音声コマンドを用いて車椅子を左右、前後に走らせたり、台に置いてあるコップをつかんで所定の位置(利用者の口元の位置を想定している)に移動するデモが行われています。このシステムでは、車椅子もロボット・アームも手作りで見た目はぱっとしませんが、動作は的確に行われていることが分かります。

手足に障がいを持つ人にとって音声で自由に操作できる車椅子やロボット・アームがあれば、とても便利になることを理解できるビデオでもあります。

●ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子のデモ・ビデオ(英語)を視聴

 

先進的な駐車場管理システム:
Maven Systems(メイブン・システムズ)チーム

このシステムは、複数の駐車スペースを持つ駐車場において各スペースの空/満を常時管理していて、駐車場に入ってきた自動車に対して最も近くにある空きスペースを自動的に案内します。

自動車側はAndroidアプリを用いて空きスペースの案内を受けるので、特別な装置を取り付ける必要がありません。駐車場側では、PCベースのサーバ、無線通信機能を持つ2種類のハブ、各駐車スペースに設置されたセンサ(このデモでは超音波センサを使用しています)という簡単な設備で駐車場管理と案内を行います。

2種類のハブのうち、1つは駐車場の入り口付近に設置されるもので、プライマリ・ハブと呼ばれています。プライマリ・ハブは、上位のサーバまたはハブから駐車スペースの空/満に関する最新の情報を取得して、駐車場に入ってきた自動車のAndroid端末(スマートフォンなど)に情報を提供します。入り口が複数あるような駐車場や、複数のフロアに分かれた駐車場では、それぞれの入り口にプライマリ・ハブを置くことが必要でしょう。

もう1つは駐車場内に適宜設置されるもので、セカンダリ・ハブと呼ばれています。セカンダリ・ハブは、他のハブの通信を中継したり、近くにいる自動車を案内することができます。これらのハブは、また各駐車スペースのセンサが検知した空/満の情報をサーバに伝送します。

このように、システム内ではいくつかの無線通信が行われるので、それぞれに適した通信方式が選ばれています。

各駐車スペースに設置されたセンサには、Bluetooth Low Energy(BLE)通信を行うCC 2541モジュールが接続されていて、ハブ経由で空/満の情報をサーバに伝送します。

ハブには、近くの自動車やセンサと低消費電力のBluetooth/BLE通信を行うCC 2540モジュールと、サーバとの通信を行うためのLPRFモジュールが搭載されています。また、ハブのコントローラとしては超低消費電力のMSP430マイコンを使用しています。

ビデオでは、ハブやセンサ���動作とAndroidアプリの動作がよく��かるデモが紹介されています。まず、すべての駐車スペースが空のとき、駐車場入り口のプライマリ・ハブにAndroid端末を近づけると、アプリでは最も近い空きスペースであるP1への案内が表示されます。それに従ってP1に自動車が入ると(デモでは、P1の位置にAndroid端末を置くことによって駐車状態を示しています)、次に入り口に入ってきた自動車(Android端末)には最も近い空きスペースであるP2への案内が表示されます。

さらに、P1に置いたAndroid端末を取り除くと、次に入り口に入ってきた自動車(Android端末)には最も近い空きスペースとしてP1への案内が表示されます。

アプリでは、最も近い空きスペースを案内するだけではなく、駐車場にあるすべての駐車スペースの空/満がリアルタイムで表示されるので、利用者自身の選択の余地もあり、すぐにでも実用化に進めそうな完成度の高さが感じられます。

●先進的な駐車場管理システムのデモ・ビデオ(英語)を視聴

 

TIマイコン設計コンテストの応募作品から (2): 「スマート・リモート・コントロール・システム」はこちら

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