テキサス・インスツルメンツ・インドでは、エンジニアの技術的な知識を向上させるため、TIのマイコンを活用して設計したアプリケーションを募集するコンテストを実施しました。多くの応募がありましたが、ここではその中から、革新性に富み、日本の設計者の方々のアイディア作りに役立つ設計プロジェクトとして次の3つの応募作品を選び、詳しく解説します。

設計のヒントとしてお役立てください。

              ・ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子

              ・先進的な駐車場管理システム

              ・スマート・リモート・コントロール・システム

今回は、「スマート・リモート・コントロール・システム」をご紹介します。

スマート・リモート・コントロール・システム:
S&S / Karmic Design(カーミック・デザイン)チーム

このシステムは、インターネット/LANや近距離無線を利用してさまざまな家電製品の電源のオン/オフをリモート制御することによって、家庭内の節電を実現するものです。電源のオン/オフは自動制御、手動制御のどちらもできます。

システムを構成しているのは、『マスター・コントロール・ユニット』と『クライアント』の2つの無線ユニットです。どちらのユニットもTIのEZ430- RF2500Tターゲット・ボードを使用しており、相互に通信できます。TIが供給しているEZ430- RF2500ワイヤレス開発ツールには2枚のターゲット・ボードやUSBスティック型のeZ430-RFエミュレータが含まれており、無線通信システムの開発が容易にできます。

『マスター・コントロール・ユニット』は、家庭で使用しているインターネットのモデム/ルータとLAN接続して使用します。それによって、インターネットやLANに接続されたスマートフォンやPCを使って、多数の家電製品の電源オン/オフの状態を表示したり、操作することができます。スマートフォンやPC側は通常のWebブラウザだけで使えるので、特別な装置やプログラムの追加は必要ありません。

『クライアント』はリレーを用いてAC電源をオン/オフする機能を持っており、家庭で使用しているさまざまな家電製品の電源をここから取ることができます。家電製品の側にも特別な装置やプログラムの追加は必要ありません。

『マスター・コントロール・ユニット』と『クライアント』の間は無線通信なので、設置場所を選びません。『マスター・コントロール・ユニット』はモデム/ルータの近くに、『クライアント』は家電製品に電源を供給するACコンセントの近くに設置できます。

『マスター・コントロール・ユニット』は、TIのEZ430- RF2500Tターゲット・ボード、ENC28J60ボード、LDO電源レギュレータのLM 3940から構成されています。EZ430- RF2500Tは、超低消費電力マイコンのMSP430 F2274とローコストローパワー無線チップのCC 2500を搭載した小型で低消費電力のボードです。このMSP 430マイコンはシステムのサーバとして働き、イーサネット経由でスマートフォンやPCと、無線経由で『クライアント』と通信します。MSP 430マイコンをイーサネットに接続するために、LANコネクタとイーサネットのMAC/PHY機能を搭載した市販のENC28J60ボードを使用しています。また、『クライアント』との無線通信はCC 2500で行います。

この『マスター・コントロール・ユニット』はインターネットのWebサーバとして働き、それぞれの家電製品の電源オン/オフの状態と、電源の操作ボタンをWebブラウザに表示します。ユーザーは在宅中でも外出中でも、好きなときに好きな場所からスマートフォンやPCのWebブラウザを使って電源オン/オフの状態を確認し、指1本でオン/オフを切替えることができます。操作の結果は即座に『マスター・コントロール・ユニット』を経て『クライアント』に送られ、その家電製品のオン/オフを切替えるとともに、結果がスマートフォンやPCにフィードバックされます。

『クライアント』は、EZ430- RF2500Tターゲット・ボード、電源制御用のトリガ回路とリレーユニット、LDO電源レギュレータのLM 3940から構成されています。さらに、ビデオで紹介しているデモシステムでは、制御対象の家電製品として、3個の電球をリレーユニットに接続しています。『クライアント』側のMSP 430マイコンは、『マスター・コントロール・ユニット』からのコマンドによってそれぞれの家電製品の電源オン/オフを個別に切替えるとともに、切替えた結果を『マスター・コントロール・ユニット』に返信します。それによって、『マスター・コントロール・ユニット』側では常に家電製品の電源の状態を管理でき、ユーザーがスマートフォンやPCでリアルタイムに状態を確認しながら操作できます。

ビデオでは、スマートフォンから手動で3個の電球の電源オン/オフを操作するデモを行っています。指先で操作ボタンにタッチすれば、操作した電球のオン/オフがすぐに切り替わり、スマートフォンの画面表示にもすぐに反映されます。このデモでは手動操作だけですが、所定の時刻にオン/オフしたり、一定時間経過後にオン/オフするような自動制御を実行��るプログラムを作るのは容易でしょう。

すで���家庭で使用しているインターネット接続、家電製品、スマートフォンやPCをそのまま利用して、ごく小型かつ低コスト、低消費電力のユニットを追加するだけで、家電製品の電源切り忘れを防止したり、いつでもどこでもこまめに電源オン/オフを制御できる節電システムを簡単に構築できます。既存の建物に簡単に後付できる節電システムは、社会全体の省資源、省エネルギーにも大きく貢献できるでしょう。

●スマート・リモート・コントロール・システムのデモ・ビデオ(英語)を視聴

 

TIマイコン設計コンテストの応募作品から (1): 「ロボット・アームを装備した音声制御方式の車椅子」と「先進的な駐車場管理システム」はこちら

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