Kripa Venkat

超音波テクノロジは100年以上にわたり、民生、医療や軍事向けアプリケーションなどに使われてきました。先進国のほとんどの人々は、医療用の超音波測定を - 生まれる前から - 体験しています。最新の進歩および使用事例には、産業および車載市場の自動化があります。

このテクノロジは、驚くほど幅広いアプリケーションの組み合わせに採用されています。非侵襲的で腐蝕もなく、非接触という特性を持つことから、医療用、製薬、軍事や工場での使用向けの、最適な選択肢となっています。さらに、超音波の動作環境が、人の可聴領域外にあることも利点の一つです。

流量計測では、液体や気体の流れや流速をリットル/時間(lph)やガロン/分(gpm)などの単位で量子化して測定します。ガスや水道、光熱などの、住宅用の簡単な公共料金メータから、産業用の石油、採掘、廃水処理、塗料、化学製品などの危険な液体や気体のゲージや混合器まで、家庭や産業の環境で数多くの流量計が使用されています。これらの例を、図1に示します。流量計は、機構的には、センサ・ユニット、計測ユニットおよび通信ユニットの3種類で構成されています。これらのユニットまたは機能ブロックは、機械式の物と電子式の物があります。

1: 住宅用の流量計と、産業用アプリケーション向けの流量計の例

流量計の多くは、機械式センシング機能で構成されています。これらには機械的な可動部分が含まれます。インダクタとコンデンサ(LC)、巨大磁気抵抗効果(GMR)、トンネル磁気抵抗効果(MR)やホール効果などを使ったセンサで、流れに比例して変化するプロペラやインペラの回転を検出し、データに変換して計測ユニットに送ります。この方式は、可動部分があることで、摩耗や不正確さを発生する可能性があります。

流量計の精度は、媒体の汚染、汚れの蓄積、構成部品の伸縮や経時劣化などによって悪化することがあり、定期的な再較正が必要です。さらに改ざんの可能性もあり、センサが不正確な計測値を送出することがあります。これらのメータ製品の寿命は7年未満と短い上に、低流量や、微小な漏れを計測する能力もありません。図2に、回転機構をベースとし、LCセンサを使った水量計 の構造を示します。

2: 回転機構をベースとし、LCセンサを使った流量計の構造

超音波センシングはこれらの問題のいくつかを軽減します。このセンシング手法は、±1パーセント未満の非常に高い精度や、10年以上の長い動作寿命を提供するとともに、多様な物質を計測できる上、媒体の汚染や、配管の腐蝕などの影響に対する調整機能も備えています。超音波メータには可動部分がないことから、再較正が不要なほか、汚れの蓄積や経時変化による性能の劣化の心配もありません。

流量計測向けの超音波センシングでは、主として、100kHzから4MHz���範囲の周波数の超音波の伝搬遅延時間を計算します。複数のトランスデューサを電気パルスで駆動し、音波を上流方向と下流方向に送信します。各方向への伝搬時間をタイム・オブ・フライト(TOF)と呼び、上流方向と下流方向のTOFの時間差から、実際の流速値が得られます。

測定用配管の内外に1組または複数組の超音波センサを設置し、計測したTOFから流速値を計算します。図3に、代表的な超音波 センシングの仕組みと、配管内のトランスデューサ構成のいくつかを示します。選択する超音波センサは、流量計測が必要な媒体の種類によって異なります。通常、液体の流量計測には1MHz以上の高い周波数のセンサを使い、気体の場合は500kHz未満の低めの周波数のセンサを使います。

3: 超音波センシングによる流量計と、配管内のセンサ配置の例

 この方式では、通常はps(ピコ秒)やns(ナノ秒)単位で表されるTOFの精度が、流速の測定分解能と精度に直接影響します。その他の重要な性能係数としては、ゼロ・フロー・ドリフト (ZFD)、シングルショット標準偏差(STD)、計測可能な流量の最小値と最大値、流速、体積、絶対 (Abs) TOFやデルタ (Δ) TOFなどがあります。

 いくつかの標準規格が流量計の精度を規定しています。最も一般的な標準規格には、ISO(国際標準機構)4064、OIML(国際法定計量機関)R49や、EN(欧州統一規格)1434があります。各標準規格に適合するためには、高レベルの精度が要求されます。TOFの決定には、波形キャプチャ機能を使用した、時間-デジタル変換、ゼロクロス検出や相互相関などの手法があります。

 TIのMSP430 FR6047マイコンは、超音波センシング・テクノロジを使った高精度のTOF測定向けに特化した、水流計測向けの高統合SoC(System-on-Chip)であり、A/Dコンバータをベースとした新しい波形キャプチャ機能を内蔵しています。図4に、このMSP430™マイコンと超音波トランスデューサとの簡素化したインターフェイスを示します。 

4: MSP430マイコンと、配管内に配置された流量計測用超音波トランスデューサとのインターフェイス例

 上の図では、MSP430 FR604マイコンに統合された超音波センシング・サブシステムのペリフェラルに、1組の超音波トランスデューサ を直接インターフェイスしています。複数の柔軟なオプションによって、各トランスデューサの独立した駆動と、8MSPSの高速シグマ-デルタ型A/Dコンバータを使った応答波形のキャプチャが可能になっています。キャプチャした波形は、数種類のデジタル・プロセシング・アルゴリズムや関数の組み合わせによって、さらに処理します。MSP430 FR6047マイコンに内蔵された波形キャプチャ手法は、クラス最高の5ps未満の分解能を提供することから、住居や産業の環境において、液体や気体のセンシング向けの画期的なシステム設計が可能です。

超音波水流計の大多数は電池動作です。MSP430 FR6047超低消費電力マイコンの平均消費電流は、およそ3μAであることから、10年以上の長い電池動作時間を提供します。また、この計測アーキテクチャを使い、液体の流速値と、順方向と逆方向の流れの温度勾配値との積を得ることで、ヒートメータを構成することも可能です。

流速計測向けの超音波センシングは、より小型、より低価格、精度の向上や堅牢性、製品の動作寿命やスマート・グリッドへのコネクティビティなど、数多くの利点を提供します。

 

その他の資料:

-          “流量計測向けの超音波センシング・テクノロジ”ホワイトペーパー(英文)をダウンロード

-          MSP430FR 6047マイコンの詳細: こちら

-          超音波センシング・ビデオ・シリーズ(英語)を閲覧

-          EVM430-FR 6047 評価モジュールをオンラインで注文

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/industrial_strength/archive/2017/09/26/using-ultrasonic-technology-for-flow-measurement?HQS=epd-mcu-msp-flowmeter-pr-blog-fr6047-wwe

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