超音波センシングは、産業用および住居用のガス流量測定分野における新しいテクノロジです。実際、超音波は機械式の流量測定に比べて大幅に低い流量の測定が可能でありながら、消費電力も非常に小さいため、より優れた代替技術となっています。超音波流量計には可動部品がないので、機械的な摩耗による問題も発生せず、製造コストも低く抑えられます。

超音波ガス・メーター・ソリューションに用いられている主な測定手法は、一般には上流および下流の超音波信号がスレッショルドを超えたタイミングによって測定する、タイム・オブ・フライト測定です。TI のソリューションでは、これらの上流および下流信号を内蔵 A/D コンバータ(ADC)で収集し、デジタル相関によってタイム・オブ・フライトを測定します。その後、体積流量とユーザーが定義可能な流管の幾何的特性により実際の流量を測定します。

信号の相関がフィルタのように機能するので、この手法はノイズの影響をあまり受けません。また、信号内の振幅の変動が信号間の相関に大きく影響することはないので、TI のソリューションは、そうした変動という観点でも堅牢なソリューションと言えます。幅広い周波数範囲にわたってトランスデューサを励起することにより、さらに高い測定精度が実現でき、トランスデューサが古くなったり、温度変化の激しい環境にさらされたりしても再較正は必要ありません。

超音波ガス・メーターには、多くの場合、予想される流量に対する測定誤差とともに、検出可能な最小流量が規定されています。代表的なソリューションでの検出可能な最小流量は、毎時 40 ~ 120 リットル(lph)とされています。検出可能な最小流量は、温度範囲(通常は -35℃ ~ 65℃)全体での流量計のゼロ・フロー・ドリフトによって決まります。

代表的なソリューションは 5 ~ 20ns のゼロ・フロー・ドリフトで動作しますが、TI のソリューションなら製品を 1ns 未満のドリフトで動作させることができます。広帯域周波数情報は励起信号でエンコードされるので、TI の高度な専用アルゴリズムで低振幅信号を正確に検知でき、高電圧励起が不要になるほか、関連するシステム・コストおよび電力が低減します。

こうした励起電圧の低減に加え、TI の超低消費電力、低消費エネルギー・アクセラレータを利用すれば、複数のベクトル演算を中央処理装置(CPU)の介入なしに並列実行できるようになるので、測定電流を大幅に低減できます。表 1 からわかるように、TIの超音波ガス計量ソリューションは、他の既存の超音波ソリューションに比べて、ゼロ・フロー・ドリフト、検出可能な最小流量、消費電力を大幅に改善できます。

超音波ガス計量ソリューション ゼロ・フロー・ドリフト 検出可能な最小流量 消費電力
標準的なソリューション 5~25ns 40~120lph  1 秒 あたり 100µA 超で測定
TI の超音波ガス計量ソリューション 1ns 未満 7lph 未満  1 秒あたり 20µA 未満で測定

表 1 :TI の超音波ガス・メーター・ソリューションと既存ソリューションの比較

TI では、超音波ガス計量製品の開発とテストを促進するリファレンス・デザインの一部として、超音波ガス・メーターのソフトウェア・ライブラリと PC グラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)も提供しています。GUI では新しい超音波メーターの特性評価が可能で、便利な評価およびテスト手法として利用できます。

図 1 は、ADC の下流および上流キャプチャ波形の GUI スナップショットです。上流の波形は赤線、下流のキャプチャ波形は青線で示されています。GUI を利用すれば、超音波励起の変化や流管の設計変更による影響を速やかに見極めることができます。

 図 1 :超音波上流および下流波形の ADC キャプチャ

ここで説明した高分解能の超音波センシング手法の多くは、他の各種アプリケーションにも適用できます。次回の超音波センシングに関するブログ記事では、絶対タイム・オブ・フライト測定を正確に較正して誤差 0.5% 未満のガス濃度測定を実現する方法について説明します。

その他のリソース

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※上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/msp430blog/archive/2017/12/14/ultrasonic-sensing-part-1-an-effective-and-improved-approach-to-gas-flow-metering

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