MSP430 MCUスマート・アナログ・コンボを用いた血糖値測定器およびパルス・オキシメータの設計


超低消費電力のスマート・センシングおよび計測機器では、センシング・アナログ・フロント・エンド(AFE)、A/Dコンバータ(ADC)、マイクロコントローラ(MCU)を統合することがますます求められています。

このシリーズでは、いくつかのスマート・センシング・アプリケーションと、それらを実装するためのプラットフォームとしてTIのMSP430™マイコンの活用方法について説明します。今回は、血糖値測定器とパルス・オキシメータの2種類の医療機器を取り上げます。

 

血糖値測定器とは、血糖値を測定する小型のポータブル機器です。通常、皮膚に穿刺針を刺して採取した少量の血液を使い捨ての試験紙に乗せ、それを血糖値測定器が読み取って血糖値を算出します。血糖値測定器は、ミリグラム/デシリットルまたはミリモル/リットル単位で血糖値を表示します。

図1:血糖値測定器

電解試験紙には電極があり、そこにD/Aコンバータ(DAC)が正確なバイアス電圧を加えます。血糖値に比例する電流を測定するために、トランスインピーダンス・アンプ(TIA)が電流を電圧に変換し、次にADCがアナログ電圧をデジタル信号に変換します。ダイナミック・レンジと最小電流の要件により、通常は12ビット分解能ADCが必要です。

 

血糖値テストの結果がアラート音とともに液晶ディスプレイ(LCD)に表示されます。弱視のユーザーのために音声で知らせる機能もよく見られます。この機能を実装するために、音声再生に関してDACはパルス幅変調(PWM)よりもずっと高い性能を持っています。

 

電解試験紙は温度の影響を受けます。そのため、血糖値を正確に測定するには、温度を補正するアルゴリズムのための周辺温度の計測が必要です。

 

血糖値測定器は電池で動作するため、電池電圧をモニタしてLCDに表示したり、電池切れをユーザーに知らせる警告メッセージを出したりする必要があります。通常、これはコンパレータかADCによって処理します。ただし、コンパレータの方がADCよりも電力を消費しません。

 

『MSP430FR2355』ミックスド・シグナルMCUは、構成可能なシグナル・チェーン要素を備え、LCDを除いた血糖値モニタの実装に役立ちます。『MSP430FR2355』にはスマート・アナログ・コンボ・モジュールが4つあります。モジュールそれぞれを、オペアンプ(OA)、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)、または12ビットDACに設定できます。

 

血糖値モニタのアプリケーションでは、次のようにモジュールを構成できます。

  • Ÿ1つのモジュールを電解試験紙の電流測定用のTIAに設定、オペアンプの標準50pA入力バイアス電流は、少量の電流の測定に有効
  • 1つのモジュールをPGAに設定し、12ビットADCと合わせて高分解能A/D変換を実現
  • 1つのモジュールをオーディオ出力に設定し、外部のローパス・フィルタおよびオーディオ・アンプと合わせて高性能オーディオ再生を実現

3つすべての構成を図2に示します。

図2:血糖値測定器でのSACの構成例

内蔵の内部電圧リファレンスには1.5V、2.0V、2.5Vの3つの電圧オプションがあります。このリファレンスをDACのリファレンス電圧に使用できます。DAC入力を設定することで、電解試験紙用の正確なバイアス電圧を生成します。

 

内蔵温度センサは温度補正に使用します。内蔵拡張コンパレータは電池電圧モニタおよびウェイクアップ検知として使用できます。

 

シグナル・チェーン要素には豊富な相互接続があり、外部接続なし、またはわずかな外部部品だけで、さまざまな構成を選べます。

 

32KBの強誘電体ランダム・アクセス・メモリ(FRAM)により、『MSP430FR2355』MCUは血糖値履歴データ・ログの書き込みを超低電力かつ高速で行えます。

 

パルス・オキシメータ

パルス・オキシメータは、(採取した血液から直接酸素飽和度を測定するのではなく)患者の心拍数と血中の酸素飽和度を間接的にモニタします。

 

パルス・オキシメータでの測定時は、小さいクランプのような機器を手の指、耳たぶ、または足の指に取り付けます。わずかな光の束が指の血管を通り抜け、酸素化または非酸素化された血液に吸収された光の変化を測定することで、酸素の量を測定します。

 

パルス・オキシメータのアプリケーションにはMCU内蔵のオペアンプ、DAC、ADCが必要です。しかし血糖値測定器とはやや異なり、パルス・オキシメータは2つのLEDから照射される光の吸収を検知します。『MSP430FR2355』MCUは、このアプリケーションにも非常に適しています。パルス・オキシメータのアプリケーションでは、次のようにモジュールを構成できます。

  • Ÿ1つのモジュールをフォトダイオードの電流測定用のTIAに設定
  • Ÿ1つのモジュールをPGAに設定、DACをDCトラッキング・フィルタとして使用し、12ビットADCと合わせて高分解能A/D変換を実現
  • Ÿ1つのモジュールを、動的強度設定で駆動する赤外線LED用のDACに設定
  • Ÿ1つのモジュールを、動的強度設定で駆動する赤色LED用のDACに設定

4つのすべての構成を図3に示します。

 図3:パルス・オキシメータでのSACの構成例

 

LED強度またはフォトダイオードの温度ドリフトの温度補正に、内蔵温度センサを使用できます。上記で述べたシステム機能の実装に、内蔵の内部電圧リファレンス、拡張コンパレータ、強誘電体ランダム・アクセス・メモリ(FRAM)も使用できます。

 

パルス・オキシメータのアプリケーションの動作理論と設計実装について詳しくは、アプリケーション・レポート"A Single-Chip Pulsoximeter Design Using the MSP430"をご覧ください。

 

設計でのスマート・アナログ・コンボ・モジュールの使用方法について詳しくは、アプリケーション・レポート"How to Use the Smart Analog Combo in MSP430 MCUs"をご覧ください。

参考情報(英語):

著者情報
Mitch Ridgeway
テキサス・インスツルメンツ・インコーポレーテッド
マイクロコントローラ事業部 アプリケーション・エンジニア

※2019年3月1日マイナビニュース掲載のテキサス・インスツルメンツ寄稿記事を転載
※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。