産業用電源を設計する際の一般的な課題の1つが、AC電圧電源をDC電圧電源に変換することです。携帯電話の充電から電子レンジのマイコンの駆動まで、ほぼすべてのアプリケーションでAC電圧をDC電圧に変換する必要があります。一般的には、図1に示すようにトランスと整流器を使用してAC-DC変換を行います。この回路では、トランスの一次側と二次側の巻線比の分だけトランスを通して降圧します。

 図1:トランスとLDOを用いたAC-DC変換の簡略図

磁気的ソリューションにはいくつかの欠点があります。ご存知のように、トランスは磁束を電流に変換することで機能しますが、その変換の結果、トランスから大量の電磁干渉(EMI)が発生します。また、トランスの出力電圧は非常にノイズが多く、このノイズをフィルタするために大きな静電容量が必要です。低消費電力のアプリケーションでは、よりシンプルで費用対効果の高い手法を用いることで磁気部品が不要になります。2つの抵抗器から分圧回路を作成する方法と同じく、コンデンサを使ってACインピーダンス(リアクタンス)を作成できます。これにより電源に到達する前に電圧を下げます。一般にこの構成は、容量性降圧ソリューションと呼ばれます。

基本的な容量性降圧ソリューションでは、負荷がオンでないときにアプリケーションに必要な電流を吸い込む(シンクする)ツェナーダイオードが不可欠です。このツェナーダイオードは、リニア・レギュレータ(LDO)の入力電圧が絶対最大定格を超えないために必要です。

 図2:LDOを用いた基本的な容量性降圧回路(110VAC、5VDC、および30mAの場合)

容量性降圧トポロジの欠点の1つは、抵抗とLDOで多くの電力が熱として放散されるため、効率が低いことです。LDOがレギュレーションを行わないときでも、ツェナーダイオードがエネルギーを消費するため、効率は低いままです。

このシステムの効率を高めるには、サージ抵抗、ツェナーダイオード、LDOのドロップアウトという3つの主要な要素を最適化しなければなりません。図2の基本的な容量性降圧ソリューションの効率の計算方法を式1に示します。

 容量性降圧ソリューションが、Eメーターやファクトリ・オートメーションなどの産業用アプリケーションで非常によく使われる電源構成であることから、TIは容量性降圧アーキテクチャの効率とソリューション・サイズに重点を置いた部品を開発しました。『TPS7A78』は、アクティブ・ブリッジ整流器のような容量性降圧回路の実装に必要な多数のディスクリート部品を内蔵しています。容量性降圧回路を使用した動作に特化して設計された『TPS7A78』は、システム全体の効率を向上させるいくつかの機能を統合しています。例えば、『TPS7A78』は入力電圧を1/4に降下させるスイッチ・コンデンサ段を内蔵し、同じ比率で入力電流を減少させるので、より小型の容量性降圧コンデンサを利用できるようになります。この機能により、ソリューション・サイズを小さくしてシステムのコストを抑えることができ、スタンバイ電力も減少します。

 図3:『TPS7A78』を30mAで使用した30mA容量性降圧ソリューション

容量性降圧段とリニア・レギュレータに代えて『TPS7A78』を使用するとどれくらい効率が向上するかを理解するために、図2に示した従来のソリューションと図3の『TPS7A78』を使用したソリューションを比べてみましょう。リニア・レギュレータを使用した従来の容量性降圧ソリューションの効率は11%です。『TPS7A78』は、同じ負荷に電力供給するように構成した場合、スイッチ・コンデンサの入力電流が低く、必要なサージ抵抗が小さくなるため、40%を超える効率を達成できます。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年3月17日)より翻訳転載されました。
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