コンデンサの定格値と実際の容量との違いを理解することは、信頼性の高い設計を保証する鍵となります。電気メーターのような機器の容量性降圧電源に使われる高電圧コンデンサでは特にそうです。実容量が減り過ぎると、アプリケーションをサポートするための十分な電力が得られなくなるかもしれないからです。

容量性降圧電源の場合、回路の中で最も大きい部品かつ高コストな部品の1つが高電圧コンデンサです。コンデンサのサイズを決めるときには、設計で必要とされる負荷電流に実容量が対応できることが絶対に必要です。

1は、コンデンサ・メーカーであるビシェイ社から市販されている実際のコンデンサの容量値です。計算により、1µFのコンデンサが設計に必要であることがわかったとします(60Hz90VAC_RMSおよび25mA5VOUT)。入手可能なコンデンサを考え、メーカーの公差20%を考慮して、1.2µFのコンデンサを選ぶことができるでしょう。しかし、コンデンサの公差と経年劣化の影響を加味すると、時間の経過によりコンデンサの実容量が50%低下する可能性があります。言い換えれば、ワーストケースの場合、選択した1.2µFコンデンサの容量は、製品寿命の終わり頃には0.6µFしかなくなっているかもしれません。

1:ビシェイから市販されている各種の高電圧コンデンサの例

では、劣化が問題なのでしょうか。10年以上動作することが期待されるアプリケーションの場合、動作温度、負荷電流、湿度により、フィルム・コンデンサの容量が、製品の耐用年数の間に約25%も失われる可能性を想定するのは、おかしなことではありません。表1は、ワーストケースの公差と劣化を考慮した、予想総容量です。

1:実容量への公差と劣化の影響

 

公差の影響を考えると、従来の容量性降圧アーキテクチャで5VOUT時に25mAの負荷をサポートするベストな選択は、2.2µFのコンデンサですが、サイズが大きな問題になります。もっといい方法はないのでしょうか。

劣���による容量損失の影響を軽減する1つの方法は、単純に値の小さいコンデンサを使用することです。例えば、降圧コンバータを使って、DC整流された20V5Vに下げた場合、効率が完全であれば、5V出力時に25mAを維持しながら、高電圧コンデンサには6.25mAをサポートするサイズを選ぶことができます。明確に言うと、上記の例では、リニア電源ソリューションに1µFが必要な場合に、電圧を1/4に下げることで、4倍の負荷電流性能が得られます。この例では、1µF0.25µFまで減少します。

公差についても同じ軽減を考慮すると、計算上必要なコンデンサは0.3µFですが、その上の入手可能なコンデンサの値は0.33µFです。劣化の影響を加味すると、考えられるその上の入手可能なコンデンサは実際には0.47µFです。

電気メーターのようなアプリケーションにDC/DC降圧コンバータを使用する場合の唯一の問題は、非常に高度な耐タンパ性が求められる傾向があることです。つまり、ホール効果センサのような設計の追加回路が外部の磁界に影響されないようすることや、タンパ防止エンクロージャにする必要があり、余計なコストがかかります。

コンデンサのサイズが過大になる問題を解決しながら、耐タンパ性も提供する1つの方法は、非磁性降圧コンバータを使用することです。TIの電圧レギュレータ『TPS7A78』は、トランスやインダクタを必要とせずに、非絶縁低電圧出力を生成します。『TPS7A78』により、2.2µFのコンデンサを0.470µFに減らすことができ、製品の耐用年数を通して25mAの負荷電流を保証します。図2は、上記の2つのコンデンサの面積と体積の比較です。

22種類の高電圧コンデンサの面積と体積の比較 

では、コンデンサのサイズを小さくする重要な理由は何でしょうか。分かりやすい答えとしては、全体のソリューション・サイズです。しかし、そこまで明白ではありませんが、スタンバイ電力と効率という利点もあります。必要なコンデンサの容量が1/4に減ると、スタンバイ電力が約300mWから約77mWに減少します。25mA負荷をサポートする『TPS7A78』の後ろにインテリジェント・クランプ回路を加えると、合計スタンバイ電力は約15mWまで削減されます。

最小限のコンデンサで十分な容量を確保する方法を理解することで、容量性降圧電源を使用する際に、メーカーだけでなく消費者にとってもコストの削減になります。

参考資料

e-book:「LDOの基礎

+技術記事「シンプルな非磁性AC/DC電源を作る方法

+アプリケーション・ノート(英語)“Cap Drop Offline Supply for E-Meters.”

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2019年9月10日)より翻訳転載されました

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