次世代バッテリ・モニタによりバッテリの精度を向上、 持続時間を延長し、同時に安全性を高める方法


近年、掃除機や、電動工具(ドリル、のこぎり、ねじ回しなど)、庭仕事の道具芝刈り機、芝の縁刈り機、芝用トラクターなど)といった一般消費者向け製品は、電源コードを使ってコンセントから電源を取るものから、充電式バッテリ・パックの電力で動くコードレス方式へと変わってきています。自転車のような、これまでは電動ではなかった機器も、バッテリ駆動の電動アシスト自転車や電動スクーターに移行しつつあります。

バッテリ・パックは通常、リチウムイオン、リチウム・ポリマー、またはリン酸鉄リチウムイオンを使用した個別の電池(セル)で構成されますが、使い方を誤ると火事や爆発につながる恐れがあります。バッテリが安全に使用されていることを保証するため、セルのメーカーが定めた条件下でのみ動作するように、バッテリ・パック内部の電子機器がセルをモニタリングします。一般にこのような条件には以下のものがあります。

  • 最大許容充電電圧
  • 最大充電電流および放電電流
  • 充電および放電の規定温度範囲

このため、バッテリ・パック内部の主要なパラメータ、特にバッテリ・パックのセルの電圧、電流、温度の測定が非常に重要になります。これらのパラメータが限度を超えると、測定データに基づき適切な予防措置を作動させます。

測定データは、設計にマージンをどれくらい設けるかを判断できるように、正確であることが求められます。例えば、セルの仕様で完全充電電圧の上限が4.3Vに定められているとき、測定データの精度が±50mVだと、設計者は測定値が4.25Vより高い電圧を示したら充電不可になるようにシステムを設定する必要がありますが、実際のセル電圧は4.2Vにしかなっていない可能性もあります。この場合、セルが完全に充電される前に充電がストップし、結果としてバッテリ容量が無駄になり、アプリケーションでのバッテリ持続時間も短くなります。

『BQ76942』および『BQ76952』のような、バッテリ・パック用の高精度のバッテリ・モニタおよび保護回路は、リチウムイオン、リチウム・ポリマー、またはリン酸鉄リチウムイオンのセルを使用するアプリケーション向けに特化して設計されています。3~10セル(『BQ76942』)と16セル(『BQ76952』)の直列スタック・バッテリをサポートするこれらのデバイスは、セルの電圧、電流、温度を測定することに加えて、バッテリ・パック内部の別のマイコンや電動自転車のシステム・コントローラなど、他の回路とデータを共有することもできます。『BQ76942』および『BQ76952』は、このデータを使って自律的にバッテリ保護回路を作動させることもでき、ホストまたはシステムのマイコンとの連携の有無に関係なく、バッテリ・パックを使用不可にしてメーカー仕様の範囲外での動作を防ぎ、条件が改善すると再度バッテリ・パックを動作可能状態に戻します。

図1に示す『BQ76952』のブロック図では、以下の機能が統合されています。

  • 測定および検知サブシステム。これらのサブシステムは電圧、電流、温度をモニタリングして、パラメータが許容閾値を超えたかどうかを検知
  • 外付けの保護FETやケミカル・ヒューズを駆動するためのアクチュエータ
  • デジタル・ホスト・インターフェイス・サブシステム。いくつかのシリアル通信規格に加え、機能選択用のピン制御をサポート
  • 内部回路用に1つと、外部用に2つの、複数の電圧レギュレータ


1BQ76952のブロック図

図2は、『BQ76952』を使用した16セルのバッテリ・パックの概略回路図です。ホスト・マイコンとの通信にI2Cを使用しています。内蔵レギュレータは、マイコンの電源と、オプションの外付けトランシーバの電源を提供します。


2BQ76952を使用した16セル・システムの概略回路図

『BQ76942』および『BQ76952』の測定サブシステムは、バッテリ・パック内部の各種の電圧、電流、温度を数値化します。これらの測定値は、それぞれに特有の要件があるため、取得の仕方が異なります。例えば、温度の変化はゆっくりとしているので、間隔をあけて測定・計算することが許されます。しかし、バッテリ・パックの電流は突発的に変動することがあるので、途切れなくサンプリングしなければ見逃すかもしれません。

電圧ADCとクーロン・カウンタADCにより生成される値は、測定データを出すために処理されます。このデータはデバイス内部で使われたり、バッテリ・パック内部の別のプロセッサや、電動工具や電動自転車のシステム・コントローラからアクセスされたりします。このデータには次のようなものがあります。

  • 個々のセルの差動電圧と選択された追加のシステム電圧
  • バッテリ・パックの電流と通過電荷(クーロン・カウント)
  • 内部ダイと最大9個の外付けサーミスタの温度測定値

外付けサーミスタの測定をサポートするピンは、汎用ADC入力にも使用でき、最大で約1.8Vの入力電圧をサポートします。電圧ADCは測定ループにより動作し、入力は、いくつかの入力から周期的に多重化されます。『BQ76942』および『BQ76952』の測定サブシステムには、プログラミング可能なオプションがいくつかあるので、測定の速さと正確さのトレードオフのバランスを取って最適化することが可能です。

バッテリ駆動の一般消費者向け製品の普及がさらに続くなか、安全な電圧、電流、温度の範囲内でバッテリが動作するよう保証することが不可欠です。各種機能が内蔵されたバッテリ・モニタにより、設計エンジニアは、この3つの主要なパラメータに対処すると同時に、精度を高めることができるでしょう。TIのバッテリ・モニタを用いた設計の詳細については、以下の「その他のリソース」をご覧ください。

参考情報

+ユーザー・ガイド(英語):『BQ76942』『BQ76952』.

+技術記事(英語)Protector, monitor or gauge – selecting the correct battery electronics for your Li-ion-powered system.”

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年1月6日)より翻訳転載されました。
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