電��設計のヒント: 負の出力電圧を動的に調整する方法


負の出力電圧を生成する標準的な手法はいくつかあり、一方で出力電圧を動的に調整するよく知られた手法もあります。この技術記事では、シンプルなレベルシフト回路を使ってこの2つの手法をつなぎ合わせる「ミッシング・リンク」について紹介します。

負電圧を出力する電源が必要なアプリケーションとしては、試験および測定、航空宇宙防衛、車載機器、医療機器などがあります。負電圧レールを生成する一般的な方法の1つが、普通の降圧コンバータを、反転昇降圧コンバータとして動かすことです[1]、[2]、[3]。降圧コンバータICのグランド・ピンを負出力電圧ノード(-VOUT)に接続し、インダクタ出力をシステム・グランド(0V)に接続します。1は、構成例です。出力とフィードバック(FB)ピンの間の分圧抵抗で、出力電圧を設定します。

1 降圧コンバータを反転昇降圧コンバータとして使用し、負出力電圧を生成

降圧コンバータICを使用して負電圧を生成する場合の主な課題は、ICのインターフェイス接続と信号のレベルシフトをどう行うかということです。入出力(I/O)ピンは、システム・グランド(0V)ではなく負出力電圧(-VOUT)��基準とします。TIのアプリケーション・レポート「反転昇降圧コンバータの操作」(英語)では、システム・グランド(0V)ドメインとローカルICグランド(-VOUT)ドメインの間でイネーブル(EN)、パワー・グッド(PGOOD)、同期(SYNC)の各信号をレベルシフトするいくつかの回路について詳しく説明しています。このレポートには、ボード線図と負荷過渡応答の測定による回路の試験方法についても実用的な提案が載っています。アプリケーション・ノート「反転昇降圧コンバータのレベルシフト制御」(英語)にも、レベルシフト回路の例が含まれています。

次に、動的電圧調整について考察しましょう。普通の降圧または昇圧コンバータについて、参考資料[4]、[5]、[6]に、出力電圧を調整する方法がいくつか載っています。一般的には、2のように、FBピンと可変電圧ソース(VADJ)の間に接続された抵抗を用いる方法がよく使われます。VADJの電圧を上下させて、コンバータの出力電圧を動的に調整します。VADJが(リファレンス電圧VREFと等しい)FBノードの電圧より高いと、電流が抵抗RADJを通ってFBノードに流れることで、出力電圧が下がります。

逆に、VADJの電圧がFBノードの電圧より低い場合は、電流が抵抗RADJを通って逆方向に流れるので、出力電圧が上がります。

これについての1つの解釈は、FBノードへのソース(またはシンク)電流により、トップ(またはボトム)抵抗の値が減少したように見えることです。抵抗RADJは、トップまたはボトムの抵抗と並列に置かれた仮想的な抵抗のように振る舞います。

2 FBノードへのソース/シンク電流でコンバータの出力電圧を動的に調整可能

VADJを生成する簡単な方法の1つは、抵抗コンデンサ・ローパス・フィルタを通るPWM(パルス幅変調)信号を供給することです。マイコンやその他のデジタル・チップが、PWM信号を出力できます。PWM信号のデューティ比を調整することで、VADJを変化させます。ただし、この方法を使って反転昇降圧コンバータの負出力電圧を動的に調整するのは、降圧コンバータICのローカル・グランドが、システム・グランド(0V)ではなく負出力電圧(-VOUT)に等しいため、難しい作業になることがあります。前述のI/Oピンへのインターフェイス接続と同様に、レベルシフト回路もおそらく必要になるでしょう。3をご覧ください。

3 グランド基準のPWM信号を使用してVADJを生成するには、レベルシフト回路が必要

4に、このアプリケーションのレベルシフト回路の例を示します。この回路は、システム・グランド(0V)を基準とするPWM信号を、ICのグランド(-VOUT)を基準とするPWM信号に変換します。PWMソースは、PチャネルMOSFET(金属酸化被膜半導体電界効果トランジスタ)をオンまたはオフにします。PチャネルMOSFETがオンになると、NチャネルMOSFETゲートの電圧が閾値電圧を超え、NチャネルMOSFETがオンになります。すると、それによってVPWMが-VOUTにプルダウンされます。PチャネルMOSFETがオフになると、NチャネルMOSFETがオフになり、抵抗RPUによってVPWMがVBIASにプルアップされます。VBIASは、TIの『LM4040』のような高精度シャント・レギュレータを使って生成できますが、このレギュレータは、-VOUTおよび(抵抗を介して)VINに接続されます。図3に示されるように、RFLTとCFLTはローパス・フィルタとして機能し、VADJを生成します。RADJを流れる電流が、出力電圧を調整することになります。

4 このレベルシフト回路の例では、ディスクリート部品を使用して

グランド基準からIC基準(-VOUT)にPWM信号を変換

図5は、降圧コンバータを反転昇降圧コンバータとして運用した場合に、この方法による負出力電圧の調整能力を示すシミュレーション結果です。スタートして最初の6ミリ秒(ms)の間、負出力電圧(赤で示す「NVOUT」と書かれた部分)は-7Vまで緩やかに下がります。VADJを示す青い線は、スタートアップの間は負出力電圧に追従します。7msの時点でPWM回路が有効化され(PWMの入力波形を紫で示す)、レベルシフトしたPWM(VPWM)を生成します。VADJ(青い線)が上昇し、それに反応してコンバータの出力電圧が上昇します。約2msの移行時間の後、コンバータの状態は新たに定常状態動作ポイント(-2V付近)に達します。このシミュレーションの後の方では、PWM信号を調整することで出力電圧が下がり、滑らかで効果的な結果が得られます。

5 負出力電圧の動的調整にレベルシフト回路をどう使用するかを示すシミュレーション

シンプルな回路を使用して負出力電圧を調整できるようにする方法では、多くの市販の降圧コンバータICを扱うことができます。この回路は、出力電圧を調整する一般的な手法と、レベルシフト信号を組み合わせています。ここで取り上げたレベルシフト回路により、システム・グランドを基準とするPWMソースで、電力コンバータのFBノードへ流れる電流を調整できるようになります。設計上の主な課題は、(負出力電圧と同じ電位の)ローカルICグランド電圧が変化する間の、この流入電流の制御です。この手法は、負出力電圧の動的調整が必要なさまざまなアプリケーションに適しています。

参考情報

アプリケーション・レポート(英語)

Using the TPS5430 as an Inverting Buck-Boost Converter.”

Create an Inverting Power Supply From a Step-Down Regulator

How to Dynamically Adjust Power Module Output Voltage.”

 

Analog Applications Journal(英語)

Using a buck converter in an inverting buck-boost topology.

 

Analog Design Journal(英語)

Methods of output-voltage adjustment for DC/DC converters.”

 

リファレンス・デザイン

30-V to 150-V Adjustable Output Voltage Boost Reference Design for LIDAR Applications

 

著者紹介

Pradeep Shenoy (Texas Instruments)