スタック出力PSRフライバックDC/DCコンバータによりレギュレーション性能を高める方法


車載トラクション・インバータ用のゲート・ドライバ・バイアス電源や、ファクトリ・オートメーション・アプリケーション向けフィールド・トランスミッタの4~20mAループ・センサのように、製品ライフ・サイクルの長さが要求される低消費電力絶縁型設計では多くの場合、簡素で信頼性の高い1次側レギュレーション対応(PSR)のマルチ出力フライバック・コンバータが活用されます。PSRフライバックには、以下に示す2つの重要な特性があります。

  • 絶縁バリアをまたぐ部品が電源トランス1つのみという、高い信頼性と利便性。フィードバック・レギュレーションにはフォトカプラ、補助巻線、信号トランス、または外部リファレンスが不要
  • 総部品数が少なく、特に絶縁出力が複数必要な場合に有利

この技術記事では、レギュレーション性能の最適化につながるスタック出力のPSRフライバック設計について考察します。

スタックされた絶縁出力

2次側を柔軟に構成できる複数出力のPSRフライバック・コンバータは、簡単に設計することが可能です。例としては、グランドを共有するバイポーラ出力(例えば±12Vや15V/-8V)もしくは正出力2つ(例えば3.3V/12Vや5V/15V)にしたり、またはグランド・リファレンスが異なる複数の出力を設計したりできます。

この流れで、図1の『LM5180』を使用したPSRフライバック・コンバータ回路を見てみましょう。左側の2次側回路(青で囲まれた部分)には24Vと5Vの2つの出力があります(それぞれVOUT1とVOUT2として示す)。一方で、右側の2次側回路(赤で囲まれた部分)では、19Vを供給する上側2次巻線を5V出力に加えるDCスタック方式により、等価な実装を行っています。各設計のトランスの巻線比に注目してください。

1:従来の方式とDCスタック方式の、デュアル出力PSRフライバック・コンバータ回路図

ライン、負荷、温度範囲の全体にわたって非常に厳密なレギュレーション精度を得るため、適切にタイミングを調整してスイッチ電圧をその共振転換点(Resonant knee)でセンシングすることは、出力電圧の代わりとして好都合です。しかし、複数ある出力の消磁時間は1つに決まっていません。消磁期間は巻線ごとに固有であり、電圧は最後の消磁の完了時にサンプリングされます。図2のシミュレーション波形では、正規化された2次側電流が、予想される三角形の磁化電流波形へと積み重なります。

2:デュアル出力PSRフライバック・コンバータのスイッチ・ノード電圧と巻線電流波形、この場合、導通時間が最大になる2次側巻線(SEC2)がレギュレーションにおいて支配的となる

巻線をスタックすると巻き数が少なくなるため、リーク・インダクタンスが低下し、2次側同士が緊密に結合します(最適なクロス・レギュレーションに重要)。また、フライバック・ダイオードの逆方向電圧スイングも低くなるため、同相電磁干渉の低減になり、スイッチがオンのときに1次側に反射する容量性の電流スパイクも抑えられます。

トランスの設計

フライバック回路のクロス・レギュレーションの効率が低い主な要因がリーク・インダクタンスである場合、以下が(1次側と2次側、2次側同士の両方で)リークを最小限に抑える手順です。

  1. 1次側巻線(より具体的には、巻き数が最大の巻線)をインタリーブする。
  2. レイヤ間の結合が最良になるようにレイヤ全体に巻き付け、多重より線を使って各レイヤを埋める。
  3. 芯の形は、レイヤ数が最小限になるようにボビンの幅が広いものを選ぶ。
  4. 2次側同士のリーク・インダクタンスを低減するには、
  5. 2次側を同じレイヤでバイファイラ巻きまたはマルチファイラ巻きにする。
  6. 2次側の高電流のレイヤの間に低電流2次側巻線を挟み込んでサンドイッチにする(シールドする)。

図3は、図1で示した設計でのトランスの構成図です。1次側巻線は半々の列に分けられ、2次側はバイファイラで巻かれています。

3:スタック出力トランスの巻き方(a)と構成図(b)

このクイックスタート・カリキュレータを使用すると、トランスの巻線比、磁化インダクタンス、巻線抵抗パラメータの選択と最適化が効率的に行えます。

PCBのレイアウト

図4は、図1と同様のスタック出力のプリント基板(PCB)レイアウトです。この設計では、高電流能力のフライバック・コンバータ『LM25184』と13mm×11mmのトランスを使用しています。ジャンパのオプションで、出力をDCもしくはACのスタック、またはガルバニック分離された独立した出力として設定します。

4:スタック出力フライバック・コンバータのPCBレイアウト

まとめ

厳密なレギュレーションと高い信頼性が常に重視される中、PSRフライバック・コンバータは、単独出力または複数出力の絶縁アプリケーション向けの多種多様な電源回路に適しています。PSRフライバック・コンバータ・ファミリに属する『LM5180』と『LM25184』は、1W~15Wの電力レベルのアプリケーションで高いレギュレーション精度を実現します。

参考情報

+アプリケーション・ノート(英語):“PSR Flyback DC/DC Converter Transformer Design for mHEV Applications

+「Analog Design Journal」記事(英語)“Why use PSR-flyback isolated converters in dual-battery mHEV systems”と関連ビデオ.

+マルチ出力PSRフライバックのリファレンス・デザイン:

IGBT/SiC ゲート・ドライバ向け、出力段搭載、4.5V ~ 65V 入力、小型バイアス電源のリファレンス・デザイン

+“サーボ・ドライブ向け、小型、高効率 24V 入力補助電源のリファレンス・デザイン.

+マルチ出力フライバックのクロス・レギュレーションを改善する方法についてビデオを見る

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2020年6月2日)より翻訳転載されました。
※ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。