この記事では、
EMI(電磁干渉)性能と面積削減に関するAEF(アクティブEMIフィルタリング)の主なメリットを説明するために、AEF機能を内蔵した車載用同期降圧コントローラ設計の成果を確認します。 

 
EMIアプリケーションに取り組んでいる設計者は、設計のEMIを低減すると同時にソリューション・サイズも縮小しなければならないという、2つの重大な課題にしばしば直面します。スイッチング電源で生じる伝導EMIを低減するフロント・エンドのパッシブ・フィルタリングを使用すれば、伝導EMI規格に適合できるようになりますが、特にスイッチング・レートの上昇が全体のEMIシグネチャに悪影響を及ぼすことを考えると、この方法は低EMI設計での電力密度向上のニーズと相反する場合があります。また、これらのパッシブ・フィルタは大きくかさばることが多く、場合によっては電源ソリューションの総体積の30%にもなります。このようにEMIフィルタのサイズを最小限に抑えながら電力密度を上げることは、依然としてシステム設計者の優先課題です。 

 

一方、EMIフィルタリングの比較的新しい手法であるAEFテクノロジを利用すると、パッシブ・フィルタのサイズとコストが大幅に削減されるだけでなく、EMI性能も向上します。 

 

EMIフィルタリング 

パッシブ・フィルタリングは、インダクタとコンデンサを使用してEMIの電流パスにインピーダンス不整合を生じさせることで、パワー・エレクトロニクス回路の伝導エミッションを削減します。それとは対照的に、アクティブ・フィルタリングは入力バスの電圧を感知し、逆相電流を生成して、スイッチング段で発生するEMI電流を直接打ち消します。 

 

これを踏まえて、図1に示すパッシブ・フィルタとアクティブ・フィルタの簡易回路図を見てみましょう。DC/DCレギュレータの差動モード・ノイズに関して、ノートン等価回路の電流ソースとインピーダンスをそれぞれiNZNで表します。 

 

 1:従来のパッシブ・フィルタリング(a)とアクティブ・フィルタリング(b)の回路実装 

 

電圧センスおよび電流キャンセル(VSCC)から構成されるアクティブEMIフィルタ(図1b)では、パッシブ設計のフィルタ・コンデンサ(CF)の代わりに、オペアンプ回路を容量性マルチプライヤとして使用します。図に示すアクティブ・フィルタのセンシング(SEN)、注入(INJ)、および補償(COMP)の各インピーダンスは、GOPで示すゲイン項を得るために、部品の占有面積の小さい、比較的低い容量値を使用します。実効アクティブ容量は、オペアンプ回路のゲインと注入コンデンサCINJ)により定められます。 

 

1には、フィルタの実効カットオフ周波数の計算式も示しています。この実効GOPにより、アクティブ設計では、インダクタとコンデンサの値を削減しながら、パッシブ実装の場合と同等なカットオフ周波数を実現できます。 

 

フィルタリング性能が向上 

2では、CISPR国際無線障害特別委員会25クラス5規格を対象にしたピーク値および平均値検波器を用いる伝導EMI試験を基に、EMIフィルタ設計をパッシブとアクティブの場合で比較しています。各設計は、同期降圧DC/DCコントローラLM25149-Q1による電源段を使用して、13.5Vの車載バッテリ入力から5Vおよび6Aの出力を得ています。スイッチング周波数は440kHzです。 

 

 2:同じ電源段の動作条件でのパッシブ・フィルタ設計(a)とアクティブ・フィルタ設計(b)の比較 

 

3は、AEF回路を有効にしたときと無効にしたときの結果です。アクティブEMIフィルタの方が、フィルタなし、つまり未処理のノイズ・シグネチャに比べて、低~中周波数の減衰が良くなっています。440kHzでの基本周波数成分のピークEMIレベルが50dB近くも低くなっているため、厳格なEMI要件への適合が容易になります。 

 

 3AEFが無効のとき(a)と有効のとき(b)のフィルタリング性能の比較 

 

PCB面積の削減 

2の結果を出したパッシブ・フィルタ段とアクティブ・フィルタ段のプリント基板(PCB)レイアウトを比較したものを図4に示します。インダクタの占有面積は、5mm×5mmから4mm×4mmに減少しています。その上、印加電圧によって大幅にディレーティングされる2個の1210コンデンサが、AEFのセンシング、注入、補償に対応する、小型で値の安定した0402部品に置き換えられています。このフィルタ・ソリューションのサイズは、面積で50%近く、体積で75%以上も削減されます。 

 

 4:パッシブ(a)とアクティブ(b)のフィルタ設計におけるPCBレイアウトのサイズ比較 

 

パッシブ部品の利点 

前述のように、AEFのフィルタ・インダクタンス値は低いので、パッシブ・フィルタ設計のインダクタの場合に比べて占有面積とコストが減少します。さらに、物理的に小さいインダクタは、寄生巻線容量が低く自己共振周波数が高い巻線形状をしているので、CISPR 25の高伝導周波数範囲(30MHz108MHz)でのフィルタリング性能が向上します。 

 

車載設計によっては、バッテリ電源レールに直接接続する際に、フェイル・セーフで堅牢性を高めるために入力コンデンサを直列に2個接続することが求められます。アクティブ回路では、複数の1210コンデンサの代わりに小型の0402/0603センシング・コンデンサおよび注入コンデンサが直列に接続されるため、結果的にスペースをさらに削減できます。小型のコンデンサの方が、部品の入手が簡単で供給の制約がないので、部品調達も簡素化されます。 

 

まとめ 

特に車載アプリケーションにおいてEMIが重視され続ける中で、電圧感知と電流注入を利用したアクティブ・フィルタは、低EMIシグネチャを実現するだけでなく、最終的に占有面積と体積の削減に加えてソリューションのコストの改善につながります。同期降圧コントローラへのAEF回路の内蔵は、低EMIと高電力密度というDC/DCレギュレータ・アプリケーションのトレードオフの問題を解決する助けになります 
 
参考情報: 

+ホワイト・ペーパー: 
電源のEMI削減のための短期間で費用対効果が高いイノベーション 
An Overview of Conducted EMI Specifications for Power Supplies.(英語) 
トレーニング・ビデオ(英語) 
 
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上記の記事はこちらの技術記事20214月5日)より翻訳転載されました。 
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