低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)での電流の流れは、一方通行の道路と同じで、逆方向に流れれば大きな問題につながるおそれがあります。逆電流は、VINからVOUTへではなく、VOUTからVINへと流れる電流です。この電流は一般に、通常の導通チャネルの代わりにLDOのボディ・ダイオードを通って流れ、デバイスの長期的な信頼性に影響を及ぼしたり、デバイスに損傷を与えたりする可能性もあります。
LDOには3つの主要な構成要素があります(図1を参照)。バンドギャップ・リファレンス、誤差増幅器、パスFET(電界効果トランジスタ)です。標準的なアプリケーションでは、パスFETは通常のFETと同じように、ソースとドレインの間に電流を流します。FETのボディを形成するドープされた領域は、バルクと呼ばれ、ソースに接続されています。これにより、スレッショルド電圧の変化を小さく抑えます。
図1:LDOの機能ブロック図
バルクとソースを互いに接続することには、FET内に寄生ダイオードが形成されるという短所があります(図2を参照)。この寄生ダイオードは、ボディ・ダイオードと呼ばれます。この構成では、出力が入力電圧と寄生ダイオードのVFBとの和を上回ると、ボディ・ダイオードがオンになります。このダイオードを通って逆電流が流れると、発熱、エレクトロマイグレーション、またはラッチアップにより、デバイスの損傷につながる場合があります。
図2:Pチャネル金属酸化膜(PMOS)FETの断面図
LDOを設計する際には、逆電流とその防止方法について考慮することが重要です。この記事では、逆電流をアプリケーション・レベルで防止する2つの方法と、集積回路(IC)の設計プロセスで防止する2つの方法を取り上げます。
逆電流の防止には4つの一般的な方法があり、2つはアプリケーション・レベルで、2つは設計時に適用できる方法です。
ショットキー・ダイオードの使用
図3に示すように、OUTとINの間にショットキー・ダイオードを使用すると、出力電圧が入力電圧を超えたときにLDO内のボディ・ダイオードが導通しなくなります。ショットキー・ダイオードを使用するのは、その順方向電圧が低いからです。従来のダイオードでは、順方向電圧がショットキー・ダイオードよりももっと高くなります。通常動作時には、ショットキー・ダイオードは逆バイアスされ、電流を通しません。この方法のもう1つの利点は、出力と入力の間にショットキー・ダイオードを配置してもLDOのドロップアウト電圧が増加しないことです。
図3:ショットキー・ダイオードを使用した逆電流の防止
LDOの前にダイオードを使用
図4に示すように、この方法ではLDOの前にダイオードを使用することで、電流が電源へと逆流するのを防ぎます。これは逆電流を防止する効果的な方法ですが、LDOをドロップアウトなしで保持するために必要な入力電圧が増加します。逆電流状況では、LDOの電源側に配置されたダイオードが逆バイアスになり、電流を流しません。この方法は、次に示す方法と似ています。
図4:LDOの前にダイオードを使用して逆電流を防止
第2のFETを使用
逆電流をブロックするよう設計されたLDOでは、第2のFETを使用して逆電流を防止することがよく行われます。図5に示すように、2個のFETのソースどうしを接続することで、ボディ・ダイオードが互いに向き合う形になります。ここで、逆電流状況が検出されると、一方のトランジスタがオフになり、ダイオードには電流が流れることができません。
この方法の大きな短所の1つは、このアーキテクチャを使用するとドロップアウト電圧が実質的に倍増することです。ドロップアウト電圧を低減するには、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のサイズを大きくして、ソリューション全体のサイズを大きくする必要があります。TIのTPS 7B7702-Q1などの車載LDOは、この方法を使用して逆電流を防止します。
図5:2個のFETを使用して逆電流を防止
MOSFETのバルクをGNDに接続
この方法は、逆電流保護の実装方法としてあまり一般的ではありませんが、MOSFETのボディ・ダイオードがなくなるので、非常に効果的です。この方法では、MOSFETのバルクをGNDに接続することで、寄生ボディ・ダイオードを生じるソースへの接続をなくします。TIのTPS 7A37は、この方法を用いて逆電流保護を実装しています。利点の1つは、MOSFETのバルクをGNDに接続してもLDOのドロップアウトが増加しないことです。
図6:FETのバルクをGNDに接続
まとめ
アプリケーションで逆電流保護が必要な場合は、必要なレベルの保護を提供するLDOトポロジを探します。逆電流保護を備えたLDOがすべてのシステム要件を満たさない場合は、ダイオードを使用した逆電流保護の実装を考慮します。
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