TIの技術が実現する、手頃でポータブルな次世代超音波診断機器


 1954年に世界で初めてSomascopeが発表されて以来、超音波診断技術は大きな進歩を遂げています。当時、水槽と変換レーダフレームを組み合わせたこの診断機器が『Life』誌に掲載された時、多くの読者を驚かせました。その開発者であるDenver Veterans Affairs Hospital の医師、放射線科医、そして2人の電気技師は、1人の技師を水槽に沈め、無骨なトランスデューサーでその技師の身体に音波を送り、エコーを解析することで、腎臓の2D画像を生成しました。

超音波は現在、非常に有益な医療器具として利用されています。X線では検知できない無害で非侵襲の音波による生物学的構造体の視覚化は、癌や婦人病、心臓病、理学療法、血管医学など、幅広い分野で応用されています。Somascopeの発表から60年で、電子工学と圧電材料の進歩、ドップラー超音波の統合、より高精度なイメージング技術と急速に進化する高速な処理性能により、超音波検査は飛躍的に進化しました。

しかし、現在の超音波技術も完璧ではありません。高価で多くの電力を必要とし、また超音波診断機器から発生する干渉ノイズや生成される大容量のデータが原因で正確な画像を得ることができません。このような理由から、TIはこの技術の革新に継続的に取り組んでいます。

超音波をすべての人に
TI Designsリファレンス・デザイン・ライブラリとTIのIC製品ポートフォリオを活用することで、次世代の超音波診断スキャナを容易に設計できます。最近発表されたリファレンス・デザインを用いれば、少ない部品で電力効率の良い、よりスマートな超音波スキャナを開発することもできます。高精度な画像処理と高い信号対ノイズ比により、より高品質な画像を生成できる一方、カート式のスキャナは、よりコンパクトで低ノイズの電源システムの恩恵を受けられます。

これらのリファレンス・デザインやポートフォリオを提供する目的は、心臓などの3D画像をリアルタイムで高精度に生成できる、手頃でコンパクトな超音波デバイスを提供し、より正確な診断と治療計画を可能にすることです。将来的には、医師が使用する聴診器も超音波スキャナに置き換えられる、という業界予測もあるほどです。

今後は超音波診断機器が幅広く普及し、医療が行き届いていなかった地域の人々が先進医療を受けられる世界になるでしょう。以下は、すでに超音波技術から恩恵を受けている実例です。

  • タンザニアのムワンザ州に駐在する米国の10人の医療専門家は、カート式のポータブルな超音波診断機器により、直腸肛門奇形を患った小児患者の手術を行なっています。
  • ウガンダの地方では、低コストで耐久性の高い超音波診断機器により、診療所に来る妊婦の数が増え、妊婦健診が改善しました。
  • ケニアのナイロビの技術開発者は、電気を必要とせずに、胎児の心拍をデジタル計測できる手巻き式のポータブルなドップラー超音波診断機器を開発しました。
  • ナイジェリアでは、助産師とヘルスケア提供者向けに、スマートフォン・サイズのハンドヘルドの超音波診断機器の使い方を訓練する3年間のプログラムが開催される予定です。また、オランダのプロサッカー・チームは、ハンドヘルドのトランスデューサーとスマートフォン・アプリを用いて、怪我をした選手をフィールド上で検査できるポータブルな超音波診断機器を導入する予定です。

完全な固定式の超音波診断システムは10万ドルを超える一方、カートから取り外し可能でポータブルな診断機器も約4万ドルという高コストのために、超音波技術はいまだに多くの人にとって手の届かないものとなっています。

しかし、医療システム向けの設計を担当しているTIのエンジニアで、インドのバンガロールに住むRavindra Munvarは、「技術の進歩はコスト削減に繋がります」と述べています。例えば、超音波画像の解像度を高めるためにチャネル数の増加にしたがい、チャネルあたりのコストは20ドル以上から2ドル未満に低下しました。このような技術的進歩により、ポータブル���超音波診断機器の価格は5,000ドルにまで下がるとRavindraは予想しています。

 高い電力効率と高精度な画像
消費電力の最小化、筐体の小型化、低ノイズを実現しながら、高品質の画像を得たいという顧客のニーズに応えるためにTIではいくつかのアプローチを取っています。

Ravindraは、超音波診断スキャナの電力効率を高めることの重要性について、「チャネルの数が増えるにしたがい、電力使用料も増えます。TIのお客様は電力消費を抑えようと努力しており、特にポータブルなハンドヘルド・システムにおいて電力効率を高めることは当社の大きな責任です。また、冷却システムの要件も電力効率に左右されます。ファンなどの部品の動作は、画像の精度に干渉することから、革新的な冷却機構が求められています」と述べています。

カート式の超音波技術の電力効率を高めることができるTIの新しいリファレンス・デザインを使用することで、設計者はバルク・コンデンサのサイズを小さくし、最適な効率性を保ちながら、電源部品を最小化し、様々な超音波システムの効率を最大限に高めることができます。

TIのリファレンス・デザインは、小型システム・メーカーのニーズも満たします。その革新的なパッケージにより、電力消費の効率を高め、デバイスの温度を低く抑えながら、電磁両立性(EMC)を維持できます。またアナログのフロント・エンドや同様のデバイスでの高度な統合は、より多くの電子部品がプローブ内部に収まることを意味します。

TIの超音波CWドップラー向け高解像度、高信号対ノイズ比、真のロー・データ変換リファレンス・デザインは、業界最高の信号対ノイズ比を提供するほか、解像度と信号対ノイズ比をさらに高めるためにデジタル・フィルタリングを搭載できることから、超音波デザインの主な課題に対応します。また業界で最も低いノイズ減衰補正により、より正確なイメージングが可能になります。

あらゆるプロセッシングおよびディスプレイ・システムに接続できるスマートなプローブが登場したことで、今後重要となるのがワイヤレス機能です。

Ravindraは、「スマート・プローブはほとんどのデータをデバイス内で処理しますが、消費電力を抑えたい場合は、一部のデータをディスプレイ・システムで処理する必要があります。」と述べています。多くの顧客が当社のWiLink™デバイスを使用してこの目標を達成しています。

次世代の超音波技術
TIのエンジニアは、設計者が高品質の超音波を低価格で提供できるイノベーションに継続的に貢献しています。途上国向けには、コストを抑え、ポータビリティを実現する技術が重要です。支援体制や修理サービスが整っていない地域では、頑丈さと高い信頼性が不可欠です。Ravindraは、身体の内部を観察できるデジタル聴診器は、使い易い医療器具になると予想しています。

一方、ハンドヘルドの超音波機器により、大型の機器が陳腐化することはありません。リアルタイム3Dイメージングや超音波エラストグラフィといった、ニッチな新しいアプリケーションは引き続き、カート式のシステムとして提供されるでしょう。

Ravindraによると、今後の課題は、小型で手頃な超音波技術を開発することではなく、ユビキタス機器が生成する大量のデータをどのように処理、転送、保存するかにあります。大量のデータから有益な情報を読み解ける放射線科医やその他の医者の数には限界があります。しかし、このことがきっかけで、将来は診断の自動化や分析の標準化が推し進められると思われます。

可能性は無限に広がっていますが、重要なことは、TIの革新技術が人々の生活の質の向上と人命救助に関して大きな影響を与えるということです。次世代の超音波デザインに活用できるTIの技術に関してはこちらを参照ください。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年1月9日)より翻訳転載されました。

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