TI E2E™コミュニティの非絶縁型DC/DCフォーラムでよく受ける質問に、「コンバータに入力電圧が印加されていない場合、DC/DCコンバータの出力側に電圧を加えることができますか?」というものがあります。そういったケースは、製造工程でプロセッサやマイコン(MCU)をプログラミングする場合によくあります。そのような場合、AC電源やバッテリーからシステムの入力電圧は通常与えられません。単に、プログラミング用にマイコンに給電するだけの目的で、出力側に外部電圧が印加されます。図1に、一般的なビル・オートメーション・システムのブロック図を示します。
図1:プログラミングされるMCUのブロック図
降圧型コンバータの出力側に電圧を加えるのは、明らかに通常のアプリケーションの使い方ではありません。ですので、慎重な検討の上で行うことが必要です。電圧の印加中は、デバイスとアプリケーションの安全が維持されなければならず、また、それらが期待どおりに機能するとは限りません。アプリケーションノート「入力電圧を与えずに外部電圧を出力側に印加する場合のテストのヒント)」(英語)に、詳しい情報と典型的なソリューションが記載されています。ここでは、出力側に電圧を印加する設計で評価する必要がある、システムレベルで重要な7つのポイントを紹介します。
- 降圧型コンバータの入力電圧レールに接続されている回路がすべて、印加された出力電圧から給電される。降圧型コンバータのハイサイドMOSFETには、ほぼすべての場合ボディ・ダイオードが形成されており、出力側から入力側への経路となります。
- デバイスを通して出力側から入力側に流れる逆電流がある。この電流は、デバイスの定格内に抑え、加熱を防ぐ必要があります。
- デバイスはイネーブル時に電流を消費する場合がある。印加された電圧の電流を測定し、製造の合否検査に使用する場合には、この電流を考慮する必要があります。
- デバイスはディスエーブル時にも電流を消費する場合がある。デバイス(TPS 62097など)によっては出力放電回路を内蔵しており、デバイスのオフ時に出力側から電流がシンクされます。
- 電圧が印加される全デバイスの各ピンの定格電圧以内である事が維持されていること。電圧のホットプラグを行うと、ピンの定格を超えるオーバーシュートが簡単に発生します。
- 昇圧モードをディスエーブルにする。そうしないと、デバイスが損傷するおそれがあります。昇圧モードがイネーブルになるのは、強制PWM(パルス幅変調)モードで動作させた降圧型コンバータに、設定値よりも高い電圧が出力側に印加され、その入力負荷が不足している場合です。昇圧モードでは、降圧型コンバータは、印加された出力電圧をシンクするため双方向で動作します。このエネルギーは入力側に移動し、電圧を上昇させます。電圧が十分高くなると、デバイスが破壊されます。
- パワー・グッド(PG)出力が所定の状態である。印加する電圧レベル、イネーブル(EN)ピンの状態、および特定のデバイスによっては、PGが正しい状態を示さず、システム内の他の要素の動作に影響するおそれがあります。
上記各ポイントは、たいていのシステムでは簡単に解決可能です。システム設計時に忘れてはならない大切なことは、入力電圧を与えずに出力電圧を加えることがあるかどうかを確認し、設計中に検討しておくことです。そうすれば、簡単で信頼性の高いシステム動作が可能になります。
追加資料:
- ブログ: What is that giant tantalum cap on the input of the EVM?(EVMの入力側にある巨大なタンタル・コンデンサは何ですか?)
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
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