コンシューマ・アプリケーションでは、USB Type-C™などのさまざまな動作条件に対して、出力電圧の調整に対応した電源が必要になることがよくあります。そのために、出力電圧を簡単かつ効率的に調整できる方法が求められています。必要な出力電圧を設定するために、集積回路(IC)のフィードバック(FB)ピンをさまざまな方法で利用できます。たとえば、FBピンにトリム抵抗を付加し、電流を追加でソースまたはシンクするための電圧をFBピンの分圧抵抗回路に印加します。または、I2Cバスを使用して、FBピンを制御する信号をプログラミングする方法もあります。では、可変電圧源やI2Cバスが利用できない場合はどうすればよいでしょうか。このブログでは、簡単な抵抗コンデンサ(RC)ローパス・フィルタ、トリム抵抗、およびマイコン・ユニット(MCU)からのパルス幅変調(PWM)信号を利用して、出力電圧を調整する方法を紹介します。

この方法による回路を図1に示します。

 1PWM注入回路

RCローパス・フィルタはPWM信号をデューティ・サイクルに従って平滑化します。本回路のテブナン等価回路(図2)とフィルタ・コンデンサにより時定数が発生し、FBピンへ注入される信号のスルー・レートが決まります。式1に、この計算を示します。

2:テブナン等価回路

このRCフィルタによって全体の制御ループに極とゼロのペアが追加されるため、RCフィルタを選択する際には注意が必要です。図1をもう一度見てみましょう。低い周波数でClowpassがオープンとなる場合は、RinjectとRlowpassの合成抵抗がRfbbと並列になります。高い周波数でClowpassがショートする場合には、Rfbbと並列になるのはRinjectだけです。従って、RlowpassがRinjectよりも十分小さくなるよう選択すれば、極とゼロのペアが互いに接近し、コントローラの制御ループに対する影響を最小限にできます。

式2、式3、式4によって、最適なRinject、Rfbt、Rfbbそれぞれの抵抗値を選定する方法を計算します。

式3は、最小出力電圧、式4は最大出力電圧に対応します。

たとえば、条件として利用できる3.3VのPWM信号のデューティ・サイクルが6%から94%まで変化する場合、Rfbtには49.9kΩ、Rlowpassには1kΩを選択するとし、出力は1~10Vとして、コントローラのFB電圧は0.8Vとします。このとき、式5と式6に、RfbbとRinjectの計算式を示します。

式5と式6を等しいと置くと、Radjとして16.47kΩ、Rfbbとして5.41kΩが得られます。標準抵抗値から選べば、RinjectとRfbbはそれぞれ15.4kΩと5.36kΩとなります。

FBピンに注入されるリップルが大きくなると、コントローラのデューティ・サイクルに影響が及びます。従って、ローパス・フィルタの容量を選定する際には注意が必要です。良好な設計手法としては、FBピン電圧のリップルが1%よりもずっと小さくなるようにします。たとえば、スイッチング周波数(Fsw)が200kHzの場合、1MHzのPWMでRC時定数が1msのものを使用します。このようにすれば、出力電圧に現れるビート周波数成分は最小になります。FBの分圧抵抗回路側の抵抗値はRlowpassよりはるかに大きなインピーダンスとなるため、時定数ではRlowpassとClowpassが支配項になります。

このブログで説明した設計方法に従えば、複数の出力電圧が必要なアプリケーションの開発時間を短縮し、回路の複雑さを軽減できるでしょう。

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上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/03/06/power-tips-pwm-controlled-output-adjustment-for-usb-type-c-applications

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