コネクテッド・カーによる走行は、試験的には行われているものの、実用化にはまだ時間がかかると思われます。将来、自動車は運転者、他の車、道路などの周辺インフラ、歩行者、クラウドなどと常時接続された状態で通信を行うようになります。このような接続環境の向上にともない、車は車内および外部との間でデータの受信、解釈、送信ができるようになります。また、運転の判断に役立つ情報が提供されたり、車の運転が楽になったりするだけでなく、自動運転の性能も向上します。ここでは、コネクテッド・カーに関する一般的な質問を3つ取り上げ、解説します。
Q1:V2Xとは何ですか。コネクテッド・カーとはどのような関係がありますか?
A1:V2Xは、Vehicle-to-everything(車-あらゆるもの)を略した用語で、自動車と外部との間で情報をやりとりできるようにするマルチポイント・ネットワークです。車の外部の世界には、歩行者、周囲のインフラ(街路灯、信号機、駐車場など)、他の車、クラウド/ネットワークが含まれます。図1に、V2Xの接続環境を示します。
図1:V2Xには、V2C(車-クラウド)、V2I(車-インフラ)、V2P(車-歩行者)、V2V(車-車)
の接続環境が含まれる
V2Xネットワークの中核は、テレマティクス・システムの頭脳ともいえるテレマティクス制御ユニット(TCU)です。無線通信によって外部から車に送信されるほとんどの情報のハブとして役割を果たします。
Q2:DSRCとC-V2Xの違いは何ですか?
A1:DSRC(狭域通信)とC-V2X(セルラーV2X)は、いずれもV2X接続の標準を目指して争っている無線技術規格です。表1に、これら2つの技術の長所/短所を示します。
DSRC |
C-V2X |
IEEE(米国電気電子技術者協会)のWi-Fi規格802.11pを使用する通信技術 |
5Gオートモーティブ・アソシエーション(5GAA)が推進するセルラーLTE規格 |
長所:
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短所:
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短所:
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表1:自動車用通信技術、DSRCとC-V2Xの比較
(出典:5G Automotive Association、Electronic Design)
Q3:車の中でデータを管理する主なドメインにはどんなものがありますか?
A3:外部から受け取ったデータを安全かつ確実に車内に転送する役割を果たす、ゲートウェイと呼ばれるドメインがいくつかあります。車に複数のゲートウェイが搭載される場合には、センター・ゲートウェイといくつかのドメイン・ゲートウェイという構成になります。これらのゲートウェイについて、説明します。
- オートモーティブ・ゲートウェイ – センター・ゲートウェイのモジュールです。データを管理して車内のさまざまなネットワーク・ドメインにデータをルーティング
- スマート・テレマティクス・ゲートウェイ – デジタル・コックピット内のインフォテインメント・ゲートウェイのモジュールです。高度に統合された次世代TCUの代表的なゲートウェイで、緊急通報(eCall)、車両追跡、通行料金自動収受、診断、無線アップデートなど、センター・ゲートウェイと外部との間の通信を管理
- ADASドメイン・コントローラ – ADASゲートウェイのモジュールです。センター・ゲートウェイとパワートレイン・システムとの間の通信を管理してさまざまなレベルの自動運転を実現
かつて誰も経験したことがない運転体験を提供するコネクテッド・カーを設計するための競争は、すでに始まっています。ここで紹介した新しい接続環境が実現すれば、自動運転は、状況対応力に予測機能が加わって性能が大きく向上します。ドライバーにとっても歩行者にとっても、より安全な交通システムの到来が期待されます。
参考情報
+コネクテッド・カーの詳細はこちら
+インフォテインメント・システム向けの最適なソリューションはこちら
+ホワイトペーパー “ドライバーの気を散らさない、 対話型インフォテインメント・ システムの設計.”
※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2019年8月30日)より翻訳転載されました。
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