デバイス・レベルの機能とパッケージ・オプションで車載設計のEMIを削減する方法


車載システムの進化が続く中、電力をさらに必要とするアプリケーションの数がますます増えています。高電力システムを設計するエンジニアは、低ドロップアウト(LDO)レギュレータから、効率が高く熱特性も良いDC/DC降圧コンバータに切り替えようとします。しかし、DC/DC降圧コンバータはLDOレギュレータに比べて電磁干渉(EMI)がかなり大きくなります。

EMIは、AM/FMラジオ受信機や運転アシスト・センサといった感度の高いコンポーネントに影響する場合があり、実際に多量のEMIは正常なシステムの動作を低下させたり、妨害したりもするので、CISPR(国際無線障害特別委員会)25クラス5のような公的規格では、内燃エンジンを有する車両および船舶に対してEMIの制限が定められています。

基板レイアウトの制約の裏をかく

最も簡単にEMIを低減する方法の1つが、正しいプリント基板(PCB)レイアウトを用いることです。降圧コンバータの場合、最も考慮すべき重要な点には次のものがあります。

  • 高過渡電圧(dv/dt)ノードの表面積の縮小
  • 高過渡電流(di/dt)ループのループ面積の縮小

これらの考慮事項によって特定のコンポーネントの配置が決定され、適切に配置すれば、EMIを最小限に抑えることができます。

しかし、基板のサイズや形状によっても、特定のコンポーネントの配置が制限されることがあり、基板の作り直しに多大な時間とコストがかかるかもしれません。では、このような制約の中でアプリケーションをCISPR 25クラス5のEMI制限内に収める必要がある場合には、どういった方法があるでしょうか。

EMIに対するレイアウトの最適化が不可能な場合は、デバイス・レベルで機能が強化された、レイアウトに依存しないパッケージのDC/DCコンバータを使用できます。EMIに対してレイアウトを最適化するという手段がとれないときのEMIの削減に有効です。

EMIに配慮したデバイス・レベル機能

スペクトラム拡散は、スイッチング周波数をディザリングすることで、スイッチング・ノードから発生するEMIの高調波のピークを拡散させる機能です。高調波ピークのエネルギーを拡散して、鋭く高いエミッションをなだらかで低いエミッションにすることで、設計をエミッション制限内に抑えるのに必要なフィルタリングや最適化を削減することができます。

スルー・レート制御を行うと、ハイサイドFET(電界効果トランジスタ)のターンオン時間が短縮されるので、高周波数の高調波に含まれるエネルギーが低下します。単純にブート・コンデンサと直列に小型の抵抗を追加するか、この機能が組み込まれたデバイスの専用のRBOOTピンにブート抵抗を使用してください。FETのスルー・レートが遅くなるとEMIが改善されますが、効率は低下します。

EMIに配慮したパッケージ

EMIの低減に役立つパッケージ・レベルの機能が、TIのHotRod FCOL(Flip-Chip On-Leadframe)パッケージです。図1からわかるように、内部にボンド・ワイヤがありません。入力コンデンサを流れる非連続的な電流による高di/dtループのパスから誘電性ボンド・ワイヤがなくなることで、入力ループ・インダクタンスの大きな要因が排除され、高di/dtループの面積を縮小するという、前述の重要な考慮事項の1つが満たされます。

 1:標準的なワイヤボンドQFNQuad Flat No-lead)パッケージとHotRodパッケージの断面図

パッケージ・レベルの機能には他にも、重要なパスに対称なピン配置を使用する方法があります。『LMR33630-Q1』、『LMR36015-Q1』、『LM61460-Q1』、『LMQ61460-Q1』といったDC/DC降圧コンバータには、中央にスイッチ・ノード・ピン、それを挟む各側にPGNDとVINがあります。このように対称にすることで、発生する磁場の閉じ込め性能が向上し、近くの回路との結合が減少します。

入力コンデンサを内蔵

デバイス・レベルでさらにEMIを低減するために、『LMQ61460-Q1』といった製品ではパッケージに入力コンデンサを内蔵しました。図2aでは、これらのコンデンサは、右上と右下の対になったVINピンとPGNDピンにまたがる黒っぽい長方形として現れています。ピン配置は図2bのようになっています。入力コンデンサをパッケージに内包することで、寄生インダクタンス、リンギング、高周波数EMIが低減されます(2番目の条件を満たします)。高周波数EMIが特に重要である理由は、車載アプリケーションにはよくあるように、入力電圧が高く出力電流が大きいと、高周波数領域の問題がいっそう悪くなることがあるからです。

 (a)                                                     (b)

2:コンデンサが内蔵された『LMQ61460-Q1』のX線画像(a)と、『LMQ61460-Q1』のピン配置(b)

EMIは確かに車載アプリケーションの課題です。しかし、基板レイアウトに制約があるからといって、他に方法がないわけではありません。デバイス・レベルの機能と最新のパッケージ・タイプは、EMIを低減して設計を改善できる確実なテクニックなので、確信を持ってEMIエミッションを限度内にとどめておくことができるでしょう。

参考情報(英語):
+トレーニングビデオ:Reduce EMI and shrink solution size with HotRod packaging
+アプリケーション・ジャーナル:Reduce buck-converter EMI and voltage stress by minimizing inductive parasitics
+アプリケーション・レポート:Reduce Conducted EMI in Automotive Buck Converter Applications

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年8月21日)より翻訳転載されました。 
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