解像度は、どのディスプレイにとっても非常に重要な仕様です。プロジェクタの場合、解像度が高くなるほど表示環境に明確な好影響が生じ、真に迫った精細な画像を表示できます。
ただし、1080p や 4K UHD (ultra-high-definition:超高精細) のような高解像度のプロジェクション システムは部品表コストが高く、多くの消費者にとってこの種のプロジェクタは手が届かない領域にとどまっていました。この記事では、製品設計者がより低コストでより小型の高解像度モバイル プロジェクタを市場に送り出すのに役立つ 2 つの手法に注目します。
モバイル プロジェクタのコストに最も大きく影響する要因は、設計上の 2 つの検討事項、つまりディスプレイ チップセットと光学機械システムです。
1080p または 4K UHD の解像度に対応した、より低コストのディスプレイ チップセットを採用することで、製品設計者やプロジェクタ メーカーは、最新のストリーミング コンテンツ、ビデオ ゲーム (図 1 を参照)、ノート PC などに向けた高解像度規格を満たしながら、新しいエントリ レベルの製品カテゴリを消費者に提示することができます。
図 1:バッテリ動作の 1080p モバイル スマート TV を使用し、外出先でゲームをプレイ可能
プロジェクタのシステム コストに影響するもう 1 つの重要な要因は、照明アーキテクチャや熱管理機能を含めた光学機械システムです。4 チャネル LED 照明など、より明るい LED 照明を採用したプロジェクタは、複数の LED や光学素子の内蔵が原因でコスト上昇につながります。また、そのような高い電力レベルで動作する LED を冷却するために、より強力な熱管理機能も必要になります。よりシンプルな 3 チャネルの RGB (赤、緑、青) LED アーキテクチャの方が、エントリ レベルのモバイル プロジェクタにとって望ましく、最高クラスの効率、ヒートシンクの小型化、可能な範囲で最小クラスの照明コストを達成しやすくなります。
プロジェクション システムとは別に、設計者はプロジェクタの機能セットを減らすことも検討できます。たとえば、フル機能のプロジェクタは、ワイヤレス接続、スマート TV のオペレーティング システム、自動的な画面サイズ調整や変形、オートフォーカス、プレミアム オーディオ、バッテリ電源などに対応している場合があります。これらの機能のいくつかまたはすべてを除外または縮小すると、コストを削減し、製品を差別化するのに役立ちます。
より低コストのプロジェクション システムに適した低コストのディスプレイ チップセット
2 種類の新しい DLP® Pico チップセットは、エントリ レベルの 1080p および 4K UHD DLP Pico モバイル プロジェクタ用に新しい標準を確立します。DLP230NPSE と DLP471TPSE の各チップセットは、1080p や 4K UHD に対応する従来の DLP チップセットより安価に、前者は 1080p のフル HD 解像度、後者は 4K の UHD 解像度を実現します。
DLP230NPSE と DLP471TPSE はそれぞれ、0.23 インチ 1080p の DLP230NP および 0.47 インチ 4K UHD の DLP471TP という TI の従来のチップセットに対して、ピン互換性と光学互換性を確保しています。DLP230NP または DLP471TP を採用した既存の光学モジュールを取り扱っているサプライヤ各社は、より低コストの新しいバージョンを提供できるようになります。また、システム インテグレータ各社は、単にソリューションの DLP コントローラを置き換え、DLP ファームウェアを更新するだけで済みます。
これらの新しいチップセットを採用すると、照明の消費電力を削減できます。その結果、設計者はヒートシンクやファンを含め、熱管理システムのコストを大幅に削減できます。照明の消費電力の削減は、ヒートシンクのコスト削減だけでなく、熱管理システムのサイズの小型化にもつながります。たとえば、照明の消費電力を 50% 削減できれば、必要なヒートシンクのサイズは、元のサイズに比べておよそ 1/3 に小型化できます。ヒートシンクのこのような大幅なサイズ縮小は、プロジェクタの軽量化と小型化の両方に役立ちます。
まとめ
新しいビデオ ゲームを 1080p でプレイする場合でも、近くに住む人とともに屋外で 4K UHD の映画を鑑賞する場合でも、高解像度のモバイル プロジェクタはユニークで記憶に残る体験の実現に役立ちます。DLP230NPSE と DLP471TPSE の各チップセットは、高解像度のモバイル プロジェクタの携帯性と低コスト化をいっそう推進することができます。
参考情報
- DLP LightCrafter Display 230NP または 471TP 評価基板をご注文いただけます。
- アプリケーション ノート『TI DLP のシステム設計:輝度要件とトレードオフ』およびアプリケーション レポート『TI DLP Pico のシステム設計: 光学モジュールの仕様』をご覧ください。