電源システムの設計技術者から、コストや回路の簡単さを保ったままで、正負両極性のバイポーラ電圧レール用電源をどのように作るかという質問をしばしば受けます。また、同時に、ガルバニック絶縁や広い入力電圧から、基板面積の小型化、EMC(電磁適合性)対策まで多様な困難をどのように対処したらよいかという質問もあります。

例として、建物やファクトリ・オートメーションテスト・計測 向けの機器や、産業用通信 アプリケーションの絶縁型RS-485 や CAN トランシーバなどを考えてみます。

 

Fly-Buck 電源コンバータ

Fly-Buck™ (フライバック)トポロジは低電流の補助電源やバイアス電源、特に非絶縁と絶縁、両方の出力が必要な場合に最適です。100V動作の LM5017 レギュレータを使ったFly-Buckコンバータの回路を図1と図2に示します。

図1. ±12Vレール用の非絶縁Fly-Buckコンバータ回路

 


図2. ±12Vレール用の絶縁Fly-Buckコンバータ回路


図1の回路は、 昇降圧型 トポロジと1:1の巻線比の結合インダクタを使い、非絶縁型の±12Vの電源レールを提供します。フィードバック・ループはVOUT+ VOUT– の全体を安定化し対称なスタートアップ動作を実現します。これに対して図2の回路は、絶縁型の±12Vレールを提供することで、適切なノイズの低減、グラウンド・ループの切断や、ユーザーの安全性などを提供します。一次側の予備レールは、LM5017 のVCC入力へのバイアス電源を提供、高い入力電圧の場合の消費電力を削減します。個別レール用の二次巻線はバイファイラ巻で、直流抵抗や漏れインダクタンスなどバランスの取れた巻線パラメータを提供し、負荷レギュレーションを向上します。

 

精密アナログ・アプリケーション用の電源

低ノイズや信号品位を重視する、PLL、VCO、バイポーラ・オペアンプや A/Dコンバータなどの高性能アナログ・アプリケーションの電源に理想的な、ポスト・レギュレーション方式のFly-Buckコンバータの例を、図3に示します。この回路では二次側のスレーブ出力を、正電圧と負電圧用ポスト・レギュレータLDOを使ってさらに安定化しています。両方のLDOは、入力電圧や負荷の変動に対して高い直流精度を提供するほか、PSRR(電源リップル除去比)やノイズのスペクトル密度など、最高の交流特性も提供します。この回路例では、Fly-Buck・コンバータを300kHzで動作し、広帯域のPSRR特性を持つLDOが出力のスイッチング・モードのリップルとノイズを減衰させます。



図3. 精密アナログ・アプリケーション向けの、Fly-Buckコンバータによるポスト・レギュレーテッド方式の±12Vレール電源回路

 

さらに、LDOレギュレータに搭載された種々の制御機能や保護機能が、フライバック・コンバータ回路のシステム・レベルの性能を補完します。これには、二次側電源のON/OFF、プログラマブルのソフトスタートのほか、電流制限や過熱シャットダウンなどの機能が含まれます。また、Fly-Buckコンバータの絶縁出力電圧はトランスの巻線比によって決定されることから、ポスト・レギュレータ回路によって、目的の設定出力電圧を得るための微調整が簡単になります。

 

幅広い用途に対応するFly-Buckソリューション

すべての技術者は、FLy-Buckコンバータ回路を良く理解しておくべきです。この観点から、私はPower Electronics Technologyに“Post Regulated Fly-Buck Powers Noise-sensitive Loads,”(ノイズに敏感な負荷向けの、ポスト・レギュレーテッド回路付きフライバック・コンバータ回路、英文)という記事を書きました。この記事では高精度オペアンプやデータ・コンバータ向けの低ノイズのソリューション を説明しています。まとめると、Fly-Buckトポロジは、電源ソリューション要件に対応する、次のような密着した特長を提供します。

 

    • 高い信頼性の同期整流降圧型または降圧/昇圧型コンバータをベースとした設計

    • 最高の過渡応答性能を提供する、コンスタント・オンタイム制御手法を使用

    • 実現しやすいBOM(原材料リスト)で、ループ補償やフィードバック用のフォトカプラが不要

    • 実装面積に制約を持つ設計に理想的な、小型の磁気部品

    • トランスの漏れインダクタンスによる一次側の電圧スパイクが発生しない

 

フライバック・トポロジの詳細と、広い入力電圧範囲のコントローラやパワー・モジュールの、使用目的別の製品ポートフォリオに関しては、ti.com/widevin をご覧ください。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2014/12/09/powering-bipolar-rails-with-wide-vin-fly-buck-converter

 

*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。



Anonymous