パワー MOSFET データシートについて関する、この『MOSFET データシートについて』ブログ・シリーズの最後の投稿までご覧いただき、ありがとうございます。 今回のブログ投稿では、MOSFET データシートに掲載されているさまざまなスイッチング・パラメータのいくつかに注目し、全体的なデバイス性能に対する関連性を検討します。
一方、出力電荷(QOSS)や FET の固有ボディ・ダイオードに関する逆回復電荷(Qrr)のようなスイッチング・パラメータは、多くの高周波電源アプリケーションにおける FET のスイッチング損失のうちかなりの部分を占める重要な要因です。 パラメータに基づいて複数の FET を比較しようとするときには、条件に注意する必要があります。多くの場合と同様、テスト条件が重要な役割を果たすからです。
次の図 1 に、出力電荷と逆回復電荷がコインの裏表のような関係にあることを示しています。これは、TI の CSD18531Q5A 60V MOSFET を 2 つの異なる di/dt レートで実測した結果です。 左側では、360A/μs で測定したところ、Qrr は 85nC になりました。右側では、2000A/μs で測定したところ、146nC になりました。 パーツの測定に使用する di/dt に関して業界標準は存在していませんが、見かけ上非常に小さい Qrr を得るために、他社が 100A/μs を最小値としてさまざまな値を使用していることを確認してきました。
図 1: Qrr と QOSS に関する CSD18531Q5A での実測値。測定条件は、左側が 360A/μs、右側が 2000A/μs。
Qrr は、テストを実施したときに使用したダイオードの順方向電流(If)にも大きく依存する可能性があります。 事態をさらに複雑にするのは、一部のベンダが QOSS を単独のパラメータとして掲載せず、代わりにこの値を Qrr 仕様の一部として取り込んでいることです。 データシートに掲載されているテスト条件に加えて、ボードの寄生インダクタンスや主観的な測定方法のような他の考慮事項が原因で、異なるベンダのデータシートに掲載されているこれらのパラメータを比較することは事実上不可能になっています。 データシートに掲載されているこれらのパラメータが重要ではない、または設計の際に考慮する必要がない、と言っているわけではありません。ただし、信頼性の高い方法で比較できるデータを入手しようとする場合、唯一の効果的なソリューションは、共通の測定方法と共通のボードを使用し、ベンダに依存しない方法でデータを収集することです。
このシリーズで最後に説明するパラメータは、スイッチング時間です。 これら 4 つのパラメータは全般的に、以下の図 2 の波形で定義され、事実上どのベンダのデータシートにも掲載されています。 これらのパラメータはボードとテスト条件に大きく依存するので、ある熟練技術者は、「FET データシートで最も役に立たないパラメータ」と何回も表現しています。 これらのパラメータはスイッチング速度を示すことを目的にしていますが、現実は、FET の特性であるドライバの強度とドレイン電流をかなりの程度反映する可能性があります。 TI はこれらのパラメータに対して、デバイスの定格電流で測定した値を掲載していますが、他のベンダは、わずか 1A の ID で測定した値を掲載して、見かけ上高速なスイッチング・デバイスであるという印象を与えようとしていることもあります。 デバイスの実際のスイッチング速度をより的確に示すのは、ゲート電荷パラメータと、デバイスの内部ゲート抵抗 Rg です。これらは両方とも、仕様重視の観点ではあまり考慮されていません。
図 2: MOSFET データシートでスイッチング時間を定義する波形。
この MOSFET データシート・シリーズをお読みいただき、ありがとうございました。 情報紹介を目的としたこれらのブログを通じて、皆様が MOSFET データシートに掲載されているパラメータの値とそのあいまいさについてより明確に理解されることを願っています。 MOSFET データシートを読み解くためのこのような観点が役に立つと思われる人々に、シリーズ全体 を紹介してください。 また、これまでも申し上げているように、「NexFET™: Lowest Rdson 80 and 100V TO-220 MOSFETs in the World(英語)」のビデオをご覧になり、次期設計で採用できそうな TI の NexFET パワー MOSFET 製品をご検討ください。
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