電源除去比(PSRR)とは、入力に印加されたリップル電圧を除去する電源の能力です。通常は高電流パワー・アンプを入力ソースと直列に追加し、それを信号アナライザからの周波数掃引信号で駆動して、VINとVOUTの比率をそれぞれの測定周波数で測定することにより実現します。しかし、このようなパワー・アンプは高価であり、テスト中に容易に損傷します。この記事では、電圧ループ・アナライザに低コストの修正をいくつか施し、パワー・アンプの代わりに利用する方法について説明します。
テスト構成
下の図1を見てみましょう。信号トランスによって注入された周波数掃引AC(交流電流)信号をVINで印加するために、入力に対して直列に小さな抵抗を配置しました。信号は、実際にはこの小さな抵抗に印加されます。0.45Ωを得るために、3W定格の0.15Ωの抵抗を3個直列に配置しました。入力を調整したのは、DC/DC(直流/直流)コンバータの入力で目標の3.3Vが得られるようにするためです。
図1: テスト構成
Venable 3120周波数アナライザと“ボード・ボックス”を使用し、いくつか変更を加えました。
ボード・ボックスは通常、V1とV2に分離された信号を注入し、V1およびV2の各信号とテスト対象コンバータからのグランドを周波数アナライザのV1、V2、グランドの各入力に接続するよう設定されています。これにより、テスト対象コンバータへの3つの接続のみでループ・ゲインを測定できるようになります。
ただし、これらの接続を信号注入と測定の両方に使用すると、投稿記事の『Power Tips: How connection wires affect Bode plot measurements』で説明されているように、誤差が生じることがあります。著者のManjing Xieは、トランスによる接続は信号注入のみに使用し、V1とV2の測定にはそれぞれ別の接続を使用することを推奨しています。
VOUTが注入トランス・ポイントに接続されていない状態でのPSRR測定では、どのような場合でもV2の測定をトランスの接続から分離して行う必要があります。このテストでは、信号の注入にはボード・ボックスを使用し、V1(VIN)とV2(VOUT)の測定用としては、それぞれ別の接続を用意しました。
測定にはTPS 40041 EVM – 001評価モジュールを使用しました(VOUTを1.8Vから1.0Vにするため、R5を10kから30.1kに変更しています)。スイッチング周波数は565~567kHzとしました。
テストは無負荷と2.6A負荷(1.0V出力)の両方で実施しました。
異なる各周波数範囲に対して、Venable 3120では以下のジェネレータ設定とボード・ボックスを使用し、周波数ディケードごとに20点のデータを取得しました。
- 100Hz~1kHzの範囲では、100Hz~10kHzのボード・ボックス(200-002モデル)と、ジェネレータからの出力として1V RMS(2乗平均平方根)を使用。
- 1kHz~100kHzの範囲では、1kHz~100kHzのボード・ボックス(200-003モデル)と、ジェネレータからの出力として1V RMSを使用。
- 100kHz~1MHzの範囲では、1kHz~100kHzのボード・ボックス(200-003モデル)と、ジェネレータからの出力として10V RMSを使用。
以下の図2には2.6A負荷(1.0V出力)でのPSRRの結果、図3には無負荷でのPSRRの結果を示します。VOUT/VINの比率はdB(デシベル)単位で赤色で示しています。位相関係(度)は青色で示しています。
図2: 変更を加えたTPS 40041 EVMのPSRR(2.6A負荷)
図3: 変更を加えたTPS 40041 EVMのPSRR(無負荷)
ゲインおよび位相のパターンは無負荷と2.6A負荷で非常によく似ていますが、減衰は無負荷のほうがわずかに優れ、最大で3dBほどの差があります。
TPS 40041降圧DC/DCコントローラには、フィードフォワード入力電圧補償が付いていません。この補償があると、パルス幅変調回路のランプ(傾斜)がVINに比例し、入力電圧除去性能が向上します。TPS 40170 PWM降圧コントローラのようなフィードフォワード補償のあるコントローラを使用することで、PSRRのさらなる向上が期待できます。
これで、電圧ループ・アナライザに低コストの修正をいくつか施し、パワー・アンプの代わりに利用する方法がおわかりいただけたと思います。TPS 40041評価モジュールまたはTPS 40170評価モジュールを入手し、同じようなテストを実施してみてください。
その他のリソース
- こちらの電源関連のトピックをご確認ください。「Power Supply Control Techniques」のトピック内で高速かつ優れた制御ループを確認し、最高のPSRR性能の実現にお役立てください。
- Power Tipsのビデオを視聴し、設計上の課題にお役立てください。
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
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