設計中のアプリケーションで、最高の性能を発揮するSAR(逐次比較型)A/Dコンバータの選択に、入力信号がどのように影響するかをご存じですか。

「入力」という言葉を聞くと、私たちの頭の中には周波数、振幅、サイン波、ノコギリ鋸波その他の言葉が浮かびます。これらのそれぞれが、信号コンディショニングを最適化しようとする場合に、関連した問題を持っています。しかし、事前にあまり考慮されないのが、SAR型A/Dコンバータ の入力タイプです。このブログ記事では、シングルエンド、疑似差動、それに完全差動という3種類のSAR入力と、それぞれのアプリケーションでの使用について検討します。また、後続のブログ記事では性能の差や、最適な入力性能を得るために憶えておくべき、いくつかの重要な基本的注意事項についても説明します。

 

シングルエンド入力SARA/Dコンバータ

3種類の入力タイプの中で、最も簡素なのがシングルエンド入力であり、A/Dコンバータには1本の入力しかありません。印加された入力信号が規定の入力範囲内にある限り、SAR型コンバータは、図1に示すようにSARグラウンドを基準にして入力信号をデジタイズします。

1:  シングルエンド入力の変換の例

 

大多数のシングルエンド入力のSAR型A/Dコンバータ製品はユニポーラ信号を扱いますが、電源電位を超える振幅(A)のバイポーラ信号を扱うよう設計されている製品もあります。1チャネルの製品も、複数チャネルをサポートする製品もあります。シングルエンド入力のA/Dコンバータを使う主要なアプリケーションの一つに、電源電圧のモニタリングがあります。

 

図1に示したシングルエンド入力 SAR型A/Dコンバータ製品例を、次の表に示します。

製品名

分解能

サンプルレート

ADS  8568

16 ビット

500 kSPS

ADS 8517

16 ビット

200 kSPS

ADS 8528

12 ビット

650 kSPS

ADS 7866

12 ビット

200 kSPS

ADS 7867

10 ビット

280 kSPS

ADS 7868

8 ビット

280 kSPS

 

疑似差動入力のSARA/Dコンバータ

疑似差動入力のSAR型A/Dコンバータ製品には、2本の入力端子がありますが、片方の入力を一定のDC電圧(通常はREF/2の電位)に保ち、他方に動的に変化する信号を入力することで、正しいA/Dコンバータの信号変換が行われることから、「疑似差動」と呼ばれます。2本の入力 (AINP-AINM) 間の差動電圧が、デジタル・コードに変換されます。通常、入力の変動に対応するために±100mVの余裕が設けられています。図2に、この様子と、一定入力(AINM) が信号グラウンドに接続され、シングルエンド入力タイプと同様の動作を提供する場合を示します。


2:  疑似差動入力回路

 

疑似差動入力を使う代表的なアプリケーションの一つに、固定のDC電位を基準にして、負荷に直列接続した電流センス抵抗の片側の電圧を計測し、電流値を算出するシャント・モニタリングがあります。

図2に示した疑似差動入力SAR型A/Dコンバータ製品の例を、次の表に示します。

製品名

分解能

サンプルレート

ADS 8319

16 ビット

500 kSPS

ADS 8317

16 ビット

250 kSPS

ADS 8339

16 ビット

250 kSPS

ADS 8324

14 ビット

50 kSPS

 

完全差動入力SARA/Dコンバータ製品

完全差動入力のSAR型A/Dコンバータ製品は、2本の入力端子を備え、図3に示すように、片方の入力が他方の入力との間でコンプリメンタリになっており、2本の入力端子の間の電位差(VDIFF = AINP – AINM) を変換します。

大多数の差動入力SAR型A/Dコンバータでは、両入力に対する固定のDCオフセット(通常はREF/2±100mV)となる、入力同相モード電圧 (VCM = (AINP + AINM)/2) の制約があります。

しかし、図3に示すように、独自の入力ステージを備え、0V~REF電位までの同相モード電圧に対応する、新しいSAR型A/Dコンバータ製品が供給されています。このような入力は「真の差動入力」と呼ばれています。

3:  完全差動入力の回路

 

完全差動入力のSAR型A/Dコンバータ製品は、シングルエンド入力のSAR型A/Dコンバータと同様に、バイポーラ入力、または複数チャネルをサポートします。トランス出力のアプリケーションでは、完全差動入力のSAR型A/Dコンバータを使用します。

図3に示した完全差動入力のSAR型A/Dコンバータ製品の例を、次の表に示します。

製品名

分解能

サンプルレート

ADS 8881

18 ビット

1 MSPS

ADS 8861

16 ビット

1000 kSPS

ADS 8318

16 ビット

500 kSPS

ADS 8323

16 ビット

500 kSPS

 このブログでは、SAR型A/Dコンバータの主な入力タイプについて説明しました。次の解説もご覧ください。SAR型A/Dコンバータの入力タイプの性能比較 – パート1パート2 

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/precisionhub/archive/2014/06/20/input-considerations-for-sar-adcs

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