DC/DCコンバータの仕様で最もわかりにくい部分の1つが、静止電流(IQ)です。わかりにくい理由として、1つには同じものを指す用語や定義がメーカごとに異なるという点が挙げられます(少なくとも、スイッチング・レギュレータの詳細な動作について熟知していなければ、そう感じるでしょう)。
この2部構成のシリーズの第1部では、入力電源から降圧レギュレータの入力電圧(VIN)ピンに流れる電流を中心に説明します。データシートを読むときは、用語を気にするよりも入力電流のデータが取得された条件に注目することが大切です。では、ユーザーが関心を持ちそうな、3つの最も重要な消費電流について見てみましょう。
“シャットダウン時電流”は、通常はレギュレータがオフになったときに測定される消費電流を意味します。このような条件では、公称入力電圧と、コンバータをシャットダウンするためにイネーブル・ピンに必要な電圧が存在し、レギュレータからの出力は0Vとなっています。レギュレータがオフなのに電流が必要になるのは不自然と思われるかもしれません。実際、多くのコンバータは、オフになっている状態でも、ほんの少しのリーク電流が流れます。
しかし、一部のレギュレータは、シャットダウン・モードのときでも入力電圧や高精度イネーブル入力を監視する必要があります。このような機能では、内部回路に電力を供給するために有限量のバイアス電流が必要になります。これは、バッテリからレギュレータに給電する場合(車載アプリケーションやポータブル・アプリケーションなど)に重要なパラメータです。このシャットダウン時電流は、入力電源から供給される電流としては最も小さい電流です。
もう少しわかりにくい用語として、“ノンスイッチング時”電流があります。この用語は、レギュレータがイネーブルになっているものの、出力電圧を生成していないときの入力消費電流を意味します。非スイッチング時電流は、通常は帰還ピンにレギュレータのスイッチングを停止するために必要なだけの電圧が入力され、出力電圧は生成されない、開ループの状態で測定されます。
「レギュレータがオンなのに有効な出力を生成していないような状況で、なぜ消費電流を気にするのか?」と疑問に思われるかもしれません。簡単に言えば、これはレギュレータのアプリケーションで使用される条件ではないので、気にする必要はありません。しかし、この仕様がデータシートに記載されているのには、少なくとも2つの正当な理由があります。第1の理由は、レギュレータが既知の状態であれば、ノンスイッチング時電流は内部回路の正常性を示す優れた指標になり、製造環境において集積回路(IC)の製造時に簡単に測定できるためです。第2の理由(第1の理由より重要)は、この電流が、無負荷での動作時にレギュレータで使用される全消費電流の一部であるためです。
さらに有用な消費電流仕様として、無負荷時に必要な動作電流があります。この条件では、コンバータが出力電圧のレギュレーションを行いますが、負荷電流はゼロです。多くのシステムでは、スタンバイ中にレギュレーションされた電圧が必要になりますが、この場合は入力電源からどれくらいの電流を供給する必要があるか把握しなければなりません。最新のレギュレータの大部分は、この電流がデータシートに指定されています。ただし、記載されている電流が実際に無負荷時の動作電流であることを確認するため、各条件を注意深くチェックしてください。
このシリーズの第2部では、無負荷時の動作電流について、その定義にどのようなものがあるかも含めて詳しく見ていきます。
その他のリソース
- WEBENCH Power Designerで設計を開始しましょう。
- SIMPLE SWITCHER DC/DCレギュレータの幅広いポートフォリオについて詳細をご確認ください。
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。