今回は、反転型昇降圧トポロジにより可変出力電圧を提供する手法を紹介します。このトポロジでは、図1に示されるようにフィードバック電圧分配ネットワーク上の抵抗の選び方で出力電圧が決まります。
異なる出力電圧を用いるには、異なる抵抗値を使用する必要があります。この時、もし出力電圧が常に変化するなら、面倒なプロセスを踏まねばなりません。これを避けるために、抵抗値を変えずに可変出力電圧を実現する電流注入手法について解説していきます。
電流注入手法は名前から分かるように、フィードバック電圧分配ネットワークに少量の電流を注入することで、第1フィードバック抵抗に生じる降下を修正し、出力電圧に影響しないようにするものです。最も簡単に電流を注入するには、図2に示すような、直列に配置された抵抗を持つ電源を使用することです。
抵抗を持たないフィードバック電圧分配器に電源を直接に接続した場合、フィードバック電圧は電源により決まる値に固定されます。この固定された電圧が内部の誤差増幅器の基準電圧より高い場合、そのデバイスの電源は完全に切れます。一方、基準電圧より低い場合は、そのままの状態が継続し、結果としてデバイスを損傷させることになります。図2のRctrlとRFBTは並列に接続しています。この構成において、方程式1は制御電圧(Vctrl)と出力電圧(Vout)の直線関係を示しています。
この手法の利点は、実装が容易なことです。しかし、いくつか欠点もあります。
- 電源により決まる出力電圧値を得るために3つの抵抗を正確に設置する必要があるため、抵抗値を慎重に選択する必要があります。また、外部電源が切断されると、抵抗値が変化し、フィードバック・ネットワークに支障が出て、望んでいた出力電圧を得られない可能性があります。
- フィードバック・ノードが負電位に、電源の入力が陽電位になる可能性があります。また、電源のプラスノードがACアース端子に参照されることで、回路とデザインが不安定になる可能性があります。
- この構成では、フィードバック・ネットワークと電源を分離することができません。電源が逆極性で接続された場合、RctrlとRFBBが並列になり、結果として、出力電圧に影響が出ます。
これらの問題を解消するために、図3のような、最初の手法と少し異なる別の構成について検討してみましょう。この手法では、抵抗とともにPNP型トランジスタを使用します。
方程式2は、本質的に直線関係にある、出力電圧と制御電圧の関係を示します。
この場合、RFBTとRFBBの値を計算するだけで出力電圧を決めることができます。PNPはいわばバイアスされるため、継続的な電流ソースとして機能します。フィードバック・ノード、すなわちコレクタ電圧におけるこの変化により、注入電流が影響を受けることはありません。
PNPを使用することで制御電圧とフィードバック・ノードを互いに分離できます。また、PNPコレクタの高い出力抵抗により、デザインが不安定になることもありません。電源が逆極性で接続された場合も、PNPトランジスタは起動しないため、確実に保護できます。この手法の唯一の欠点は、出力電圧の制御が一方向で、そのために外部部品が必要になることです。
どちらの手法も、それぞれ利点と欠点があります。しかし、PNPトランジスタを使用する手法は、より堅牢で、信頼性の高い制御ができ、出力電圧を変化させることができます。
昇降圧トポロジにより出力電圧を変化させるこの手法には、3.5Vから36Vの5A『LM7 3605』降圧型コンバータが含まれます。TIが提供する広範なステップダウン・コンバータに関しては、DC/DCスイッチング・レギュレータ概要ページを参照ください。
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※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年10月12日)より翻訳転載されました。
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