このシリーズの過去3回の記事では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)用の電源を作成するうえでの、設計上の基本的な考慮すべき点をいくつか説明しました。電源に対する要求の見極めと必要ないくつかの機能および性能仕様が確定しましたので、いつでも部品を選ぶことができます。

設計経験が浅い場合や時間に余裕がない場合のFPGA電源を簡易化する方法の1つに、電源モジュールを選択するという方法があります。最小限の設計で簡単なソリューションを構築するために、モジュールにはインダクタやその他の受動部品が組み込まれています。TIのモジュールの多くは、入力コンデンサ、出力コンデンサ、出力電圧を設定する抵抗という3つの部品しか必要としません。そのため、電源レイアウトの専門知識がなくても、小型で占有面積の小さい設計が実現できます。

部品数が少なくなれば、ソリューションが単純化されて設計やデバッグに必要な時間が短くなるだけでなく、信頼性も向上します。使用する部品の数を最小限に抑えることで、部品の不具合や設計ミスのリスクが低下します。TIでは、電磁干渉(EMI)性能、熱特性、効率性を含む数多くの性能パラメータをデータシート上で保証しています。つまり、電源の設計にはあまり労力をかけずに、最終製品の付加価値を高めることや市場投入を早めることに、より重点的に取り組むことができます。

モジュールの欠点は、インダクタや受動部品の選択によってソリューションを柔軟に最適化することができないという点です。通常のモジュールは一般的なシステム・アーキテクチャに適合するように設計されているので、性能要件が特に厳しい場合を除けば、優れた選択肢と言えます。モジュールは、ほとんどの電源設計に高い性能とコンパクトなソリューション・サイズを提供でき、特にスペースまたは時間に制約のある設計や、経験の浅い電源設計者にとっては優れた選択肢となります。

表1は、TIの電源モジュール・ポートフォリオのFPGA電源レール要件に対応するデバイスを示しています。

 表1:FPGA電源向けの推奨モジュール

コア・レールのような大電流を要するレール向けには、定格がそれぞれ30A/20Aまたは10A/7A/4Aで、3%の公差要件を満たすLMZ 31530/20またはLMZ 31710/07/04をお勧めします。これらのデバイスには、負荷レギュレーションを向上させるリモートセンス、ノイズを軽減する周波数同期、および、簡単なシーケンシングに利用できるパワー・グッドといった追加機能もあります。

補助と入出力(I/O)については、TIの補助レールまたは汎用I/O(GPIO)レール向けLMZ 21700/1またはLMZ 20502/1ナノ・モジュール、さらに大きな電流が必要な場合はLMZ 31704/7/10の使用をお勧めします。ナノ・モジュールの使用については、サイズの小ささという利点もあります。表2に示すとおり、特にナノ・モジュールは、小型の3mm×3mmパッケージにより非常に小さなソリューション・サイズを実現でき、必要な外付け部品も最小限で済むため、省スペース化が容易に行えます。

 表2:I/OおよびAUXレールに電力を供給するための最小ソリューション

トランシーバ・レールはノイズ要件が厳しいため、設計にあたって特に注意が必要になることの多いレールです。幸いにも、すべてのTIモジュールはシールド付きインダクタを使用しており、モジュールが低ノイズ要件を満たしていることを保証する国際無線障害特別委員会(CISPR)22クラスB標準に基づきテストされています。一部のTIモジュールには、非常にノイズに敏感な医療機器のようなアプリケーション向けに、ノイズをさらに低減できる周波数同期機能が搭載されています。

TIでは、既製のソリューションとして利用できるリファレンス・デザインなどのリソースを提供しており、お客様はそこから設計を開始できます。また、FPGA要件と電力要件に基づき部品の推奨と全体の設計を行うことができる、FPGA Power Architectと呼ばれるWEBENCH®上のツールもあります。

要約すると、設計を開始する際は、以下の基本的な手順に従うことをお勧めします。

  1. ベンダーのツールを使用して電流要件を見極める。
  2. TIのリファレンス・デザインで既製のソリューションを確認する。
  3. WEBENCH FPGA Power Architectを使用して設計を作成する。

これらの手順に従うことにより、優れた条件で設計を開始し、それを実際の要件に合うように最適化していくことができます。

このトピックの詳細については、FPGA電源設計に関する以下のリソースをご確認ください。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/11/20/fpga-power-made-simple-design-steps

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