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人工知能(AI)は、マシン・ビジョン・アプリケーションや画像処理アプリケーションの能力を根本的に変化させています。最先端での意思決定を可能にする人工知能のサブセットであるエッジAIは、新たなインフラストラクチャの開発において、5Gネットワークやモノのインターネット(IoT)などにおいて重要な役割を果たします。エッジAIにより、高解像度の画像処理データのリアルタイム解析、パターンや異常状況の高速検出などで、精度や感度を向上できます。これらの能力は、ロボット支援手術や、3D画像処理ベースのセキュリティ監視プラットフォーム、ファクトリ・オートメーション環境でのビジョン・ベースの産業用ロボット制御などに役立っています。

このエッジAIベースの処理への移行は、センサ技術の進歩に加え、小さなモジュール型パッケージの超高精細/4Kビデオ・イメージ・センサの開発によって可能になっています。

ロボット支援の内視鏡プラットフォームやマシン・ビジョン・カメラなどのアプリケーションでは、極めて小さいプローブ・チップに搭載されたセンサからの高解像度イメージ・データを、物理的に接続されたビデオ・キャプチャおよび解析システムへと、非常に細い1本のケーブルを通して転送する必要があります。同時にビデオ・キャプチャ・システムからの制御情報がプローブ・チップへと返されることで、傾きやズームなどの面からプローブ・チップの位置を制御することができます。

図1にある産業用モバイル・ロボットのようなビジョン・ベースの制御システムでは、リアルタイム取得と高解像度ビデオ・データ解析のため、レイテンシを非常に低くする必要があります。また、カメラ位置を修正するのに逆方向に制御情報を送信するためにも、非常に低いレイテンシが必要となります。ケーブルおよび導線の数、導線のサイズ、およびセンサ側での消費電力は、内視鏡やマシン・ビジョンのようなスペースの制約が厳しいアプリケーションでは大きな制限要素となり得ます。

 図1:ビジョン・ベースの制御システムとしての産業モバイル・ロボット

既存の高速インターフェイス技術の多くが、高解像度ビデオ・データの確実な伝送の実現に役立ちますが、ビジョン・ベースの制御システムに対してはマイナス面もあります。例えば、イーサネットなどの標準技術には、プロトコル関連のオーバーヘッドによって余分なレイテンシが伴います。イーサネットの物理層デバイスはセンサのネイティブ・ビデオ・インターフェイスに直接接続できないため、水晶発振器などの追加の配線や部品が必要になります。例えば、4MP、30fpsの高解像度イメージャは、約3.2Gbpsのビデオ・データを生成します。1000-BaseTなどの1本のギガビット・イーサネット・リンクでは、この高解像度データを圧縮なしで搬送するにはスループットが不十分であるため、イメージ・ストリームにアーティファクトが生じ、マシン・ビジョン・ベースのビデオ処理でエラーの原因となる可能性があります。 

 


V3LinkTM SerDes ICとは?

V3LinkインターフェイスICがどのようにしてビデオ・データ、制御信号、電力を1本のワイヤで非圧縮伝送できるのかを、TIのビデオV3Link SerDesとは?」(英語)でご覧ください。

V3Link 『TSER953』シリアライザや『TDES954』および『TDES960』デシリアライザなどの専用シリアライザ/デシリアライザ(SerDes)技術の連携によって、高解像度ビデオ、制御信号、電力を1本の極細ワイヤで同時に転送できます。これらのデバイスにより、センサとプロセッサの間に、クロック、非圧縮ビデオ、制御、電力、および汎用入出力信号を集約するリンクが確立されます(図2を参照)。


2V3Linkデバイスを使用したデータのシリアライズ/デシリアライズおよび電力伝送の概略図

この構成では、センサ・モジュールに配置されたシリアライザから、センサ・フュージョン解析システムに配置されたデシリアライザまたはデシリアライザ・ハブまでの転送チャネルを介してビデオ信号が伝送され、同時に制御信号と電力のパスも提供されます。

また、V3Linkデシリアライザから接続されたすべてのシリアライザに内蔵クロックを供給することで、複数のセンサ間でのビデオ同期が可能になります。これにより、3D再構成と深度センシングのためのビデオ・スイッチング、画像ブレンディング、ステレオ・ビジョンが可能になります。『TDES960』から内部で生成されたフレーム同期信号を使用して、複数のカメラを同期し、600nsの精度を達成でき、マシン・ビジョンで複数のタイム・トリガー・アプリケーションを有効にできます。リバース・チャネルからの基準クロック抽出を使用したグランドマスター・クロック同期により、複数のイメージャをクロックする様々なオシレータの相対ドリフトによって引き起こされる同期エラーが排除されます。

適応型のイコライザ技術による信号損失と消費電力の低減

ビデオ・データ、制御信号、電力を1本のケーブルで容易に転送できるだけでなく、V3Linkデバイスには適応型のイコライザ技術が搭載され、2.1GHzで最大21dBの損失を補償できるため、非常に細い28~32AWG(米国ワイヤ・ゲージ規格)のケーブルを使用できます。AWGの数値が大きいほど、ケーブルは細くなり、信号損失も増えます。

ケーブルは細いほど柔軟性があり、内視鏡のようにスペースの制約によってセンサを狭い場所に配置する必要のあるアプリケーションに適しています。また、電力と制御信号を同じ細いケーブルで転送できるため、導線の数も最小限に抑えることができます。

センサ側の標準的な250mWの消費電力で、V3Linkシリアライザは非常に小さい電力しか消費しないため、センサとシリアライザを非常にコンパクトな領域に、追加の放熱手段なしで搭載でき、余分なスペースが不要になります。V3Link製品には独自のグランドマスター・クロック同期技術が搭載され、センサ側に水晶や発振器は不要であるため、コストや全体的なスペース要件がさらに削減されます。

まとめ

医療用画像処理アプリケーションからマシン・ビジョン・カメラまで、エッジAIはリアルタイムのビデオ・キャプチャ、転送、解析のニーズを推進しています。V3Link SerDes ICによって、エンジニアはこれらのニーズを満たしながら、ケーブルの数、消費電力、およびシステム全体のコストを削減できます。V3Linkデバイスには汎用性の高いリンク技術が搭載され、高解像度ビデオ・データのリアルタイム・キャプチャ、転送、解析を必要とするほとんどのアプリケーションに適しています。これらのデバイスは、同軸、シールドなしツイストペア、シールド付きツイストペアなど各種のケーブル構成に加え、同期、非同期など各種のクロック・モードもサポートしています。

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上記の記事はこちらの技術記事(2021年7月12日)より翻訳転載されました。 
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