Other Parts Discussed in Post: IWRL6432, AWRL6432

レーダー・ベースのセンサ IC は、位置センシングや近接センシングの設計で一般的な技術になりつつあります。長距離対応、優れた動体感度、プライバシー保護という特長があるからです。レーダー・センサは精度が高いため、車載や産業用の分野において、死角検知、衝突検知、乗員検知、動体検知などのアプリケーションで一般的になっています。

近年は 60GHz 77GHz の各レーダー・センサが 24GHz レーダー・センサを置き換え、分解能や精度の向上と、フォーム・ファクタの小型化を実現しています。60GHz 77GHz の各レーダー帯域を採用した結果、自動車内での幼児置き去り検知や、病院内での高齢者の転倒検知のような新しいアプリケーションも実現可能になりました。

レーダー・センサにはこのような利点がある一方で、60GHz 77GHz の各高性能 SoC (システム・オン・チップ) センサは従来、消費電力要件の厳しいアプリケーションでの採用には制限がありました。IWRL6432 AWRL6432 など、より新しい各種レーダー・センサは低消費電力アーキテクチャを採用しているので、従来製品より消費電力が小さく、産業用、パーソナル・エレクトロニクス、車載の各アプリケーションでレーダーを導入しやすくなります。スリープ・モードを搭載し、効率的なデューティ・サイクル動作に対応しているため、低消費電力レーダーを採用したセンシング・システムでは、電力要件が 5mW 未満という条件下で、動きを検知し、いつ作動するかをインテリジェントに判断することができます。このような能力があるので、バッテリ駆動アプリケーションや、ライン (商用電源) 電力が限定されているアプリケーションのように、以前はレーダー・センシングを活用できなかった用途でも、高性能レーダー・センシングを導入できます。

この記事では、家庭、工場、パーソナル・エレクトロニクス、車載向けの各設計で低消費電力レーダー・センサを活用する方法を紹介します。

TI の 60GHz レーダーを使用するビデオ・ドアベルのデモ動画 (英語) をご覧ください 
 TI の低消費電力 60GHz レーダー・センサを採用すると、最大 20m 離れた場所での検出や、最大 3 人の同時追跡などを含め、機能を拡張することができます。ビデオ「Using 60-GHz radar sensors in video doorbells」 (英語) で実際の動作をご覧ください。

ビル・オートメーション向けの低消費電力レーダー・センシング

家庭、都市、オフィス空間のスマート対応、効率性、安全性、快適性を向上させるには、その環境に継続的に注意を払う必要があります。よりエネルギー効率が高く、インテリジェントなセンシングに関する需要を満たすために、IWRL6432 のようなセンサが役に立ちます。この種のデバイスには複数のディープ・スリープ・モードがあるため、デューティ・サイクルがより低い場合は平均消費電力がわずか 2mW 5mW で済みます。より長期間にわたって継続的にセンシングを行う必要がある家庭やビルにとって、これらのモードは重要な機能です。これらの新しい低消費電力デバイスは、以前の世代のミリ波レーダー・センサに比べて少ない消費電力で、スマート・ホームやスマート・シティ向けの各種最新アプリケーションが必要とするインテリジェンスを、オンチップのデータ処理能力を通じて実現します。具体的には、動体検知、ジェスチャ認識、エッジ側での意思決定などです。

サポート対象アプリケーションの例:

  • 家庭やオフィスのセキュリティに適した動体検知や存在検知用センサ
  • 人の検知率に基づくクライメイト・コントロール (自動的な空調制御) を実現するためのスマート・サーモスタットと HVAC (エアコン) システム
  • 暗闇でも小さな物体を検知でき、高い効率によってユーザーの快適性向上に貢献する芝刈り機、掃除機、サービス・ロボット

1ビル・オートメーション分野のセンシング・アプリケーション (ビデオ・ドアベルとホーム・セキュリティ・カメラ)

ファクトリ・オートメーション向けの低消費電力レーダー・センシング

世界各地への出荷に伴う需要に対応できるように、メーカー各社は製造プロセスのオートメーションとインテリジェントな輸送を通じて効率を高める必要があります。スマートで信頼性の高いセンサを活用すると、機械が高精度かつ迅速に物体を検出できるセーフティー・ネットを構築し、人と機械の連携をいっそう安全にすることができます。

複数のセンサを搭載した無人搬送車 (AGV) や自律型移動ロボット (AMR) は、人間を含めた各種の障害物を認識して回避しながら、計画済みのルートに基づいて地点 A から地点 B に移動することが可能です。TI の低消費電力ミリ波センサを活用すると、AGV AMR の動作時間を延長できるほか、低コストであるため、これらのテクノロジの採用が容易になります。 

住宅向けの場合、ロボット芝刈り機や掃除機が搭載している IWRL6432 センサは、他のセンシング技術では検出が難しい小さな障害物を検出することができます。消費電力を低減しているので、バッテリの再充電が必要になるまでの動作時間を延長できます。

2ファクトリ / ホーム・オートメーション分野のセンシング使用事例 (芝刈り機、物流用ロボット、掃除機)

パーソナル・エレクトロニクス向けの低消費電力レーダー・センシング

小型フォーム・ファクタの 60GHz センサを統合すると、各種ノート PC は周囲にいる人の有無をセンシングできるようになります。人が近くにいることを検知して自動的にテレビの電源をオンにし、ジェスチャを検出して、カスタマイズ済みのユーザー環境を表示することもできます。フィットネス機器やスマート・ウォッチは、単位時間あたりの心拍数や呼吸回数を推定できます。

3パーソナル・エレクトロニクス分野のセンシング使用事例 (各種ノート PC、テレビ、ホーム・シアター・システム、サウンドバー)

車内アプリケーション向けの低消費電力レーダー・センシング

自動車メーカー各社は、車内の乗員検知や侵入監視を目的として、自動車に複数のセンサを搭載しています。これらの機能の一部は、Euro NCAP (European New Car Assessment Program:欧州の新車アセスメント・プログラム) のような安全規制が推進しているものです。Euro NCAP では 2025 年から、エンジンが停止した状態で子供が車内に残っている場合にそのことを検知して警告を発する自動車に対して、評価ポイントを付与する予定です。車内安全性要件を満たすためのレーダー・センサの詳細については、「Meet Euro NCAP Child Presence Detection Requirements with Low-Power 60-GHz mmWave Radar Sensors (英語) という記事をご覧ください。

自動車メーカー各社では低消費電力 60GHz ミリ波レーダー・センサを活用することで、Euro NCAP のような規制要件を満たすと同時に、図 4 に示すように単一のセンサを複数の機能に活用して、センサ・システム全体のコストを最適化できます。

高性能 60GHz レーダー・センサは、検出感度に優れ、動きを分類する能力があるため、各種車内アプリケーションで適切に機能します。さらに、消費電力が非常に低いため、侵入検出用途で現在一般的に採用されている超音波ベースのセンサを置き換えることができます。詳細については、「Meet Euro NCAP Child Presence Detection requirements with low-power 60-GHz mmWave radar sensors」 (英語) をご覧ください。

460GHz レーダー・センサによる継続的な車内監視を示す図

従来は消費電力要件の厳しさが原因でセンシングに制限があった状況でも、低消費電力の 60GHz レーダー・センサを活用すると、各種市場で新しい各種センシング・アプリケーションを実現できます。この分野でイノベーションが続く中、設計エンジニアはより小型でより能力の高いアプリケーションを開発できます。その結果、私たちを取り巻く世界、家庭、ビルのスマート化はさらに進化してゆくでしょう。

Anonymous