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誰も見ていないのに、テレビがずっと電源オンになっている状況を想像してください。エネルギー コストが上昇を続ける現在、テレビの前に誰もいないことを自動的に検出し、テレビが自らの電源をオフにできるとしたら、節約に役立つのは確実です。テレビが前に座っている人々の距離や方向を検出し、その情報を活用して画質を最適化したり、音声が最もよく聞こえるように視聴者の方向に向けて送り出したりできれば、より充実した視聴体験が得られるでしょう。一方、コンピュータなどのモニタが、自らに向かって近付いてくる人を検知し、ログイン プロセスを自動的に開始するならば、より迅速なサービスの提供に役立ちます。また、特定の番組を放送している時間帯に、テレビが室内にいる人々の数を検出できる場合、サービス プロバイダやコンテンツ プロバイダはより良いデータを入手できます。さらに、ユーザーがワークスペースから立ち去ったときに、モニタがそのことを把握して直ちにログオフを実行すれば、セキュリティ プロセスをいっそう強化できます。

60GHz レーダー センサを採用すると、このようなさまざまな機能拡張を実現できます。各種 60GHz レーダー センサは、より短い波長と、より多くの送信アンテナや受信アンテナを使用するため、1 つの部屋にいる 4 人以上の人々の存在、動き、位置を高精度で検出できます。ミリ波 (mmWave) レーダーには、複数のゾーンを監視する能力があり、占有位置を特定することや、各ゾーンを通り抜ける動きを追跡することができます。

シリコンの設計とプロセスに関連する各種テクノロジーが進歩した結果、レーダーに対して無線周波数向けフロント エンドを単純に追加するだけでなく、オンチップのハードウェア アクセラレータ、信号プロセッサ、メモリを統合できるようになりました。この種のアーキテクチャには、複数の利点があります。まず全体として、テレビの中でのレーダーの配置を簡素化できます。加えて、オンチップの信号プロセッサにより、外部プロセッサなしでレーダーが動きを検出することができます (その結果、信号の配線が不要になり、他のシステムに関するリソース要件を引き下げることができます)。さらに、メイン プロセッサをウェークアップする場合はそれに関連する待ち時間が発生するのに対し、オンチップの信号プロセッサは待ち時間が非常に短く、時間短縮にも役立ちます。

レーダーのデータを活用していくつかの特徴をリアルタイムで抽出することもできます。機械学習アルゴリズムを使用してそれらの特徴を処理し、動きを分類する機能などを開発することも可能です。掃除機、ファン、ペットのような物体や動物の動きを、人間の動きと区別することで、インテリジェンスな決定を下すのに役立ちます。また、誤検出の回数を減らせる可能性もあり、不要なウェークアップや他の処理機能の呼び出しを減らすことにつながります。

距離、速度、到来角を高精度で測定できる 60GHz レーダー センサは、非接触型のヒューマン マシン インターフェイス (HMI) に適したジェスチャ認識などの高度な機能を実現することもできます。レーダーは、右から左または逆方向のスワイプなど、手を使用した複数のジェスチャを認識できます。この方法で、テレビをオンにしたり、チャンネルを切り替えたり、ボリュームを大きくまたは小さくしたりできます (図 1)。

 

1:手を使用したジェスチャでテレビのチャンネルを切り替える

より短い波長の信号を使用し、高精度測定を実施する 60GHz レーダーは、呼吸など身体の微妙な動きを検出することができます。それにより、呼吸回数の非接触型測定を行うことや、睡眠モニタとして高度な機能を実行することも可能です (図 2)。

  

2:レーダーを使用して呼吸回数を測定

視聴可能領域を最大化し、画面のサイズを大型化する (継続的な課題) ために、テレビとモニタの新規設計は。ベゼルの幅を超薄型にする必要に迫られています。TI の IWRL6432 のような 60GHz レーダーは、デバイス サイズの小型化、コストの削減、および小さな領域への受信 / 送信アンテナの複数配置によってこの課題に取り組み、意図した機能で必要となる性能や分解能を実現しやすくしています。超広帯域デバイスや 24GHz デバイスなど他のテクノロジーは、この水準の性能に対応することはできません。より長い波長を使用していることが原因で、アンテナの数に制限があるためです。

ミリ波レーダーは一般的に、アンテナをパッケージにエッチングした形で製品化されています (「アンテナ オン パッケージ」とも呼ばれます)。その結果、ボード設計を簡素化できますが、設計が固定されているため、アンテナの配置に関するフレキシビリティは制限を受けます。設計の多様な要件に関連する課題に取り組めるように、IWRL6432 レーダー センサは低コストのプリント基板にアンテナをエッチングできる小型パッケージを採用しています (図 3 を参照)。それにより、開発者は設計をカスタマイズするフレキシビリティを確保できます。

 

3IWRL6432 のリファレンス アンテナ設計の例

大半のアプリケーションでは、動きを監視して検出できるように、ミリ波レーダーを常時オンにしておく必要がありますが、電力を節約できるように、製品の他の部分はスリープ状態にとどめることになります。TI では、超低消費電力を達成できるように IWRL6432 レーダー センサを設計しました。そのため、2mW というわずかな消費電力で存在を検知する能力があります。また、ターゲット アプリケーションに基づいて電力を最小化するようにデバイスを構成することもできます。たとえば、低デューティ サイクル (オンになる頻度が低い) アプリケーションで、電力効率をさらに高める必要がある場合、デバイスをディープ スリープ モードに設定することができます。高集積レーダー設計の例については、図 4 をご覧ください。

 

4IWRL6432 のブロック図

まとめ

テクノロジーの進歩を通じて、テレビやデスクトップ モニタのようなコンシューマ / パーソナル エレクトロニクスに 60GHz レーダー センサを実装できるようになりました。IWRL6432 のようなレーダー センサを採用すると、これらの製品にインテリジェントなセンシングを搭載し、以下のような拡張機能を実現することができます。

  • スマートな意思決定を下せるように、状況に応じて存在と動きを検出
  • HMI 向けのジェスチャ認識
  • バイタル サインによる呼吸や睡眠の監視
  • 存在と動きの監視を超低消費電力で実行すると同時に、使用していないときは製品の他の機能を停止
  • デバイスのコストと部品表コストの削減、小型のソリューション サイズ、構成可能なアンテナ設計

参考情報

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