携帯電話/スマートフォンだけを持ち歩いて、充電器は家や会社のデスクのコンセントに差したまま。皆さんもこのような経験があると思います。 大騒ぎするほどのことではないと思われますが、実は大事なことなのです。 未使用の充電器が何百万個もあることを考えると、その消費電力は相当な量になります。実際、国内の消費電力のうちの 10% を消費しているのです。

消費電力を低減する確実な方法として、デバイスを接続していないときは充電器のコンセントを抜いておくことが挙げられます。 しかしながら、身に付いた癖はなかなか直らないものです。そのため、私たち電源設計者の目標は、コンセントを抜くように消費者を説得するのではなく、無負荷時(スタンバイ時とも呼びます)の消費電力ができる限り少ない充電器やアダプタを設計することです。

コンセントを差した状態でどこまで消費電力を低くできるかが重要です。最近、業界をリードする携帯電話メーカーによってスコア図による評価体系が構築されました。この体系は、無負荷時の消費電力に基づいて星を付けることで、スタンバイ時の消費電力を最小に抑えることが可能なアダプタの設計を推進することを目的としています(図 1)。 5 つ星評価を求める点もありますが、最終的な目標はこの評価から「電力ゼロ」のソリューションを推進することです。 アダプタは、230Vac の入力電圧で測定した場合、無負荷時の消費電力が 5mW を下回ると電力ゼロと見なされます。 ただし、他の設計目標と折り合いがあるため、5mW を下回る無負荷時の消費電力を実現することは決して容易ではありません。

図 1: 消費者が最も効率的な携帯電話充電器を選択できるように、携帯電話メーカーによって無負荷時の消費電力に基づいて作成されたスコア図

テキサス・インスツルメンツは最近 UCC 28730UCC 24650 のチップセットをリリースしました。UCC 28730 は電力ゼロの 1 次側レギュレーション(PSR)フライバック・コントローラおよびウェークアップ・モニタで、 UCC 24650 は高速過渡 PSR 用の 200V ウェークアップ・モニタです。このチップセットは、高速過渡応答、部品点数の削減、サイズの小型化といった設計目標を犠牲にすることなく、スタンバイ時の消費電力を 5mW 未満に抑える設計を実現できるさまざまな機能を提供します。図 2 は、UCC 28730/UCC 24650 チップセットの代表的なアプリケーションを示しています。

 

図 2: UCC 28730/UCC 24650 を使用した代表的なフライバック・コンバータ・アプリケーション

高電圧スタートアップ・スイッチによって、起動抵抗に伴う一定損失がなくなるほか、 PSR によって部品点数を削減でき、フォトカプラと電圧レギュレータ関連バイアス損失を低減できます。 また、スタンバイ時には、UCC 28730 の低電圧ロックアウト(UVLO)ヒステリシスにより、UVLO をトリガすることなく、 VDD 電圧を 8V まで下げることができます。 例として 12V の低電圧バイアスと低待機状態時消費電流(通常は 52µA)を組み合わせて使用した場合、約 0.624mW しか消費しません。 UCC 24650 のバイアス電流も極めて低く(通常 41µA)、出力レールから直接バイアスが供給されるため、 5V のアダプタの場合消費電力は約 0.205mW となります。 バイアス電源全体で使用される電力は、全消費電力量予算量の 0.830mW 未満に抑えられます。

他に、考慮する必要がある損失としては回避できない、出力コンデンサとショットキー・ダイオードに関連する 2 次側のリーケージ損失が挙げられます。 代表的な 10W の設計では、バイアス電力に匹敵するリーケージ損失が発生する恐れがあります。 バイアス電力とリーケージ損失の組み合わせにより、各スイッチング・サイクルの最小必要エネルギー量が決定します。  

エネルギー供給動作によって、各スイッチング・サイクルで消費されるエネルギーに比例する損失が発生します。 スタンバイ時の消費電力を低減するための最適な方法は、無負荷状態時のスイッチング周波数を低減し、ピーク電流を最小限に抑えることです。 UCC 28730 の広ダイナミック・レンジ制御方式により、無負荷時のピーク電流が全負荷値の 1/3 まで低減されるほか、スイッチング周波数が 32Hz まで下がるため、動的なスイッチング損失を低く抑えながらスタンバイ動作を維持できます。

無負荷時の消費電力を最小限に抑えたら、次に他の設計目標を検討する必要があります。 通常、スイッチング周波数が低い場合、高負荷過渡時の出力電圧調整を維持するために、大きな出力キャパシタンスが必要となります。  UCC 24650 は、UCC 28730 にウェークアップ信号を送信するよう設計されているため、高速な負荷応答が実現でき、大きな出力コンデンサがなくても出力電圧降下を最小限に抑えることができます。

UCC 28730/UCC

24650 チップセットでは、システムレベルの損失を最小限に抑えながら、スタンバイ時の消費電力を最小限に抑えることで電力ゼロ状態を実現できます。  UCC 28730UCC 24650 を組み合わせることで、1mW 未満のスタンバイ電力を維持できるほか、突発的で過大な負荷変動にも対応できます。 また、UCC 28730 の広ダイナミック・コントロール・レンジによって、スタンバイ時のスイッチング周波数とピーク電流を低減できます。 外部コンポーネントが不要で、バイアス電力を最小限に抑えることができる UCC 24650 ウェークアップ・モニタは、無負荷時の電力や過渡応答に対応できるよう、1 次側 UCC 28730 を補完します。 スタンバイ時の全体的な損失を最小限に抑えるためには、あらゆる要因に十分に注意を払う必要はありますが、UCC 28730UCC 24650 を使用することで、5 つ星のスコアや電力ゼロさえも実現することができます。

電力ゼロの実現に役立つ、チップセットを使用したリファレンス・デザイン

  • 5V/10W オフライン DCM フライバック・コンバータ(PMP 9561
  • 24V/12W オフライン DCM フライバック・コンバータ(PMP 10927
  • UCC 24650 ウェークアップ・モニタと UCC 28633 ハイパワー・フライバック・コントローラを使用して高速過渡応答を実現するためのアプリケーション・ノート(英語) 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2015/03/06/how-low-can-you-go-without-actually-pulling-the-plug

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