ローカル・コンピュータのハードディスクの代わりに、データとプログラムをインターネット上に格納するクラウド・コンピューティングがますます普及しつつあります。クラウド・コンピューティングへの移行については、可動性、アジリティ(俊敏性)、セキュリティ、コストや性能など、ほんの少数の重要な利点だけが認識されています。このトレンドの中心にあるのは、サーバと企業向けシステムです。需要が増加するにつれて、企業向けサーバ製品内で処理速度、データ完全性やデータ持続性を向上する新しいテクノロジが必要になってきました。DDR(ダブル・データレート)メモリ・スイッチ製品を使うことで、図1や図2に示すように、これらの複雑なシステムの設計に、コスト効率に優れた新しい手法を取り入れることができます。
図1: NVDIMM アプリケーションでのメモリ・スイッチの使用例
NVDIMM(不揮発デュアルインライン・メモリ・モジュール) は、予期しない停電、システム・クラッシュや通常のシステムのシャットダウンなどが原因で発生する、システム電源の突然の喪失が起きてもデータの保持が可能なコンピュータ用メモリ・モジュールです。JEDECのSolid State Technology Association (半導体技術協会)は、最近、DDR4 NVDIMMをサポートする最初の標準規格を発表 しました。この標準規格では、ほとんどのマザーボードが装備している標準のDDR4 DIMMソケットにDIMMを接続します。NVDIMMは、通常動作時にはシステム・コントローラにとっては標準のDDR4メモリとして動作しながら、システム故障の場合には、不揮発性データ回復機能を提供します。NVDIMMのアーキテクチャの一つに、NVDIMM-Nと呼ばれるものがあり、これはDRAM(ダイナミックRAM)、NANDフラッシュやスーパー・キャパシタ・テクノロジを使って、不揮発メモリ機能を提供します。
DDR4メモリ・スイッチはNVDIMM-Nの構成要素に必須の部品です。システムの通常動作時には、メモリ・スイッチはシステムとDRAMの間でやり取りされるDDR信号を通過させ、正常なデータ・アクセスを可能にします。システム電源の喪失時には、一時的にスーパー・キャパシタ(電気二重層コンデンサ)に充電した電荷でNVDIMMコントローラを動作させます。コントローラはメモリ・スイッチを再設定し、DRAMからのデータをNANDフラッシュにコピーできるようにします。NAND フラッシュはもともと不揮発性であることから、スーパー・キャパシタが放電した後もデータは保持されます。システム電源が回復すると、NVDIMMコントローラはメモリ・スイッチを再設定し、NANDフラッシュに記憶されたデータをDRAMに書き戻すことが可能になります。この一連の動作によって、サーバー・システムは、システム・キャッシュやサーバのステータス情報などの重要なデータを保持できます。
より高速なデータ・トランザクション
サーバ内のデータが飛躍的な増加によるデータ・スループットの向上への要求に対応しなければならないため、大容量のSSD(ソリッドステート・ディスク)製品が普及しつつあります。
SSD製品は、システムの総合的な消費電力を削減しながら、従来のHDD(ハードディスク・ドライブ)製品と比べ物にならない飛躍的な速度性能を提供します。
SSD製品の記憶容量が増加すると、個々のドライブ内のフラッシュ・メモリ・デバイスの個数を増やす必要が出てきます。フラッシュ・メモリ・デバイスは、コントローラと通信するために同一の制御バスとデータバスを共有することがありますが、このためにすべてのデータ・トランザクションで、それぞれの通信チャンネルの負荷が増大します。この過大な負荷は、SSDの記憶容量の増加の可能性を低下させるボトルネックになります。
図2: 負荷アイソレーションのアプリケーションへのメモリ・スイッチの使用例
メモリ・スイッチは負荷のアイソレーション機能を提供することから、システム性能の向上にも役立ちます。あるチャネルでメモリ・スイッチを有効にした場合、他のチャネルはオフとなり完全に分離されます。メモリ・スイッチは使用しないチャネルによるデータ・トランザクションの破壊を防止します。
メモリ・スイッチは、サーバ製品や企業向けシステム向けのシステム性能を向上する、迅速で、高いコスト効率の手法を提供します。TIでは『TS3DDR4000』をはじめとした、クラウド・コンピューティングをさらに高効率、高信頼性にするために役立つ高性能メモリ・スイッチ製品ポートフォリオを供給しています。
参考情報:
・DDRスイッチについて
・高性能、低消費電力のデジタル、アナログおよびスイッチの詳細について:
「アナログ・スイッチ・ガイド」をダウンロード(英語)
・『TS3DDR4000』評価モジュールで開発を促進
※上記の記事はこちらのブログ記事(2016年1月5日)より翻訳転載されました。
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