システムの小型化がますます加速するなか、プリント基板(PCB)のわずかな面積も無駄にできなくなっています。それと同時に、データの需要の高まりから、モニタリングが必要なセンサの数も増えています。
この記事では、TIの小型データ・コンバータを使って、PCBのフットプリントを大幅に削減し、チャネル密度を高め、他の部品や機能をより高度に統合することで、小型ながら高い価値を提供する方法を説明します。
メリットその1:PCBフットプリントの削減
設計やパッケージの技術の進歩に伴い、電子部品のサイズは縮小し続けています。図1のように、TIの最新のシングルチャネルADC『ADS7042』のフットプリントは2.25mm2と、10年前の同等のADCと比べてサイズがほぼ半分にまでなっています。同じく、TIの最新のシングルチャネルDAC『DAC53401』は、10年前の同等のDACの4分の1の大きさです。同様にマルチチャネル・アプリケーションに対しては、TIの最新の8チャネルADC『ADS7138』とDAC『DAC53608』のフットプリントはいずれも9mm2(1チャネルあたり約1mm2)です。
図1:TIの超小型データ・コンバータ
このような小型のデータ・コンバータを用いれば、スペースに制約のある設計でPCBのサイズを削減したり、同じPCBサイズに詰め込めるチャネル数が増えたり、あるいはその両方が可能になります。
メリットその2:アナログ機能の統合
多くのシステムで、シグナル・コンディショニングやバイアス処理、コンパレータなどのさまざまなアナログ機能を実装するために、ディスクリート部品やパッシブ部品が使われています。しかし、TIの小型データ・コンバータにはこれらの機能が内蔵されているため、多数のディスクリート部品やパッシブ部品が不要になり、それにより、PCBのサイズの削減、設計の簡素化、性能の改善、信頼性の向上が実現されます。
このような統合の例をいくつか紹介します。
- 外付け部品数の削減
図2に示すように、『DAC53401』には出力バッファに加えて内部リファレンスが備わっているため、PCB面積とコストが削減されます。
図2:リファレンスとバッファを内蔵した『DAC53401』
その他にも図3の『ADS7138』では、ほとんどのアプリケーションで入力側のドライバ・アンプを必要としないため、この場合もPCB面積とコストが削減されます。
図3:外付けアンプが不要な『ADS7138』
- 固定と可変両方のバイアス電圧の生成
『DAC53401』のEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)とスルー・レート制御機能は、固定または可変のバイアス電圧の生成に最適です。図4は、照明アプリケーションの例です。
図4:LEDにバイアス電圧をかける『DACx3401』
- アナログ/デジタル・コンパレータ
コンパレータは、電流、電圧、温度といった重要な信号のどれかが想定範囲から外れた場合に、ただちにホスト・コントローラにアラートを出すために、システムでよく使われます。このコンパレータは、反応時間が高速でなければならず、誤警告も避ける必要があります。
図5に示すように、別個にフィードバック・ピン(FB)を使うことで、プログラム可能な閾値電圧を使ったアナログ・コンパレータとして『DAC53401』を使うことができます。
図5:内部アンプのフィードバック・パスへのアクセスを備えた『DACx3401』
図6に示すように、『ADS7138』は、プログラム可能な閾値、ヒステリシス、イベント・カウンタといった機能の付いたデジタル・コンパレータ機能を内蔵するため、誤って警告を出す可能性が非常に低くなります。
図6:デジタル・コンパレータとして機能する『ADS7138』
メリットNo.3:デジタル機能の統合
小型データ・コンバータは、リモートでセンサ・コンディショニングができるだけでなく、リモートでのデータ処理も可能です。その場でデータを処理できることで、リモート・センサの性能が向上し、警告が発生した場合の反応時間が短縮されると同時に、中央プロセッサの処理帯域がある程度解放されます。
例をいくつか紹介しましょう。
- ノイズ特性を改善する出力平均化
一般的な手法として、システム内のノイズの影響を弱めるために、短い期間にわたるセンサ測定値の平均化が行われます。図7に示すように、『ADS7138』は、128ものサンプルを平均化できるため、ノイズの影響が10倍以上も軽減されます。
図7:『ADS7138』内部の平均化機能
- 汎用入出力(GPIO)
多くのシステムで、警告を検知したらすぐに、(発熱している部分をオフにしたり、ハザード表示をオンにしたりするなどの)制御行動を起こす必要がありま���。『ADS7138』では、アナログ入力チャネルの一部でセンサをモニタリングしながら、未使用のアナログ入力チャネルはGPIOピンとして使用できます。図8に示すように、モニタリング対象のセンサでGPIOピンの状態をローカルで制御すること��、あるいは中央プロセッサがI2Cインターフェイスを介してリモートで状態を制御することもできます。
図8:ADCとGPIOとしての『ADS7138』
- 波形生成
システムによっては、(医療アプリケーションの場合のように)ピッチ音を出したり、(照明アプリケーションの場合のように)LEDをゆっくりと点滅させたりするために、ある特定の波形を生成する必要があります。『DAC53401』のようなDACには連続波形生成と呼ばれる機能があり、図9のように三角波、方形波、台形波、あるいはノコギリ波を生成することができます。
図9:さまざまな波形を生成する『DACx3401』
- 巡回冗長性チェック(CRC)
『ADS7138』のようなADCを極めて重要なモニタリング機能や冗長性測定などに使用するときには、データ整合性の維持が重要になります。図10に示すように、『ADS7138』は、ADCと中央プロセッサとの間のデータ通信にCRCを組み入れることで整合性を維持します。
図10:入出力データのCRCを備える『ADS7138』
図11に示すように、『DAC53401』や『DAC43401』のようなDACは、CRCを使って、不揮発性メモリやEEPROMの書き込み/読み込みデータが壊れていないことを保証します。
図11:CRC付きNVMを備える『DACx3401』
これらのアナログ機能とデジタル機能を内蔵すると集積回路がより複雑になるかもしれませんが、処理機能や診断機能が加わることで、システム全体としては大幅にシンプルになるでしょう。
参考情報
+データシート
+アプリケーション・ノート(英語)
+“LED and laser diode biasing solution”
+“Reduce false triggers using digital comparator”
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※上記の記事はこちらの技術記事(2019年12月11日)より翻訳転載されました。
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