Other Parts Discussed in Post: OPA2206, OPA2205

オペアンプのCMOS(相補型金属酸化膜半導体)設計とJFET(接合型電界効果トランジスタ)設計が進歩していることには誰も異論はないでしょう。しかし、厳しい精度要件と効率性への対応という点では、バイポーラ・オペアンプが非常に有利です。TIの『OPA2206』といった最近のバイポーラ・オペアンプは、オフセット電圧が2µV、オフセット・ドリフトが0.04µV/℃と優れており、最高レベルのチョッパ安定化(ゼロドリフト)オペアンプに引けを取りません。

バイポーラ・オペアンプは、DC精度と低ノイズの点で人気があるにもかかわらず、入力バイアスの高さ、比較的低い入力インピーダンス、電流ノイズ密度の高さという問題があり、医療機器や生命科学分野の生体センサといった、高インピーダンスに接続するアプリケーション回路には適用できません。

しかし、厳密にマッチングされたスーパーベータ・トランジスタとTI独自のe-trimTMテクノロジを実装した最新のバイポーラ・オペアンプは、オフセット電圧とオフセット・ドリフトが非常に低くなっています。e-trimテクノロジを加えることで、産業用アプリケーションで重要視される長期的な安定性が向上しています。スーパーベータ・トランジスタは、入力バイアス電流が非常に低く、電流ノイズ密度も低下しています。最新技術のCMOSと比較したとき、『OPA2205』などの最近リリースされたデバイスの方が入力バイアス電流が低いことがはっきりと示されます。


業界最先端のオフセット電圧と超低ドリフト

高精度バイポーラ・オペアンプOPA2205OPA2206により、システム効率の向上とシステム保護の強化を実現 

高精度CMOSオペアンプ『OPAx192』を例にしましょう。このデバイスの入力バイアス電流は、25℃では最大でもわずか20pAですが、125℃になると5nAに増加します。一方でe-trimテクノロジを搭載したスーパーベータ・バイポーラ・オペアンプ『OPA2205』は、125℃でも入力バイアス電流がわずか±1.2nAです。温度要件が厳しいアプリケーションでは、これは大きな改良点です。図1に、『OPAx192』の温度と入力バイアス電流の関係を示します。図2には、『OPA2205』の入力バイアス電流を示します。

 1:『OPAx192』の温度に対する入力バイアス電流


 2:『OPA2205』の温度に対する入力バイアス電流

一般に、電流ノイズ密度は、次の式1で表されます。

 (1)

ここで、qは電荷(1.6×10-19)、Ibは相殺されない入力バイアス電流です。

式2により、半回路の概念とπモデルを使用して入力インピーダンスを得ることができます。

 (2)

これを単純化すると式3になります。

 (3)

効率への取り組み

誤差バジェットの合計を求めるときは、オフセット電圧、オフセット電圧ドリフト、入力バイアス電流、ノイズを計算に入れなければなりません。ソース・インピーダンスによっては、入力電流ノイズと電圧ノイズの関係も慎重に考慮する必要があります。

低ノイズのオペアンプの問題の1つが、電流をかなり消費する傾向があることです。これは、ノイズが静止電流に反比例するためです。具体的な例で言うと、静止電流が200µAの、低電力、高精度CMOSオペアンプの電圧ノイズ密度は約15nV/√Hzになります。一方、バイポーラ・オペアンプ『OPA2205』は、静止電流がわずか250µAながら生成ノイズは約7nV/√Hzです。

帯域幅が狭かったり、温度監視・制御といった動きが遅い信号を扱ったりするアプリケーション、またはプログラマブル・ロジック・コントローラやアナログ入力モジュールといった多チャネル回路では、ノイズ要件を考えるときに低周波ノイズ(1/f成分)も考慮する必要があります。このような場合、CMOS入力またはJFET入力のオペアンプと比べて1/f成分がかなり低いバイポーラ・オペアンプの方が優れています。バイポーラ・オペアンプを使用して設計すると、一般に1/f成分が1桁低くなることが期待できます。

ゼロドリフト・オペアンプは1/f成分の削減になるか

ゼロドリフト・オペアンプは、1/f成分を削減するには優れています(チョッパ安定化オペアンプでは除去、自動ゼロ設定オペアンプでは√2 x Vnoise_bb )。しかし、低周波数の広帯域ノイズは、ある特定のIQの場合にバイポーラ・オペアンプよりもかなり高くなります。CMOSアーキテクチャであるにもかかわらず、入力バイアス電流がずっと高い傾向があり、インピーダンスのマッチングが必要です。さらに、ゼロドリフト・オペアンプのオフセット電圧とドリフトはこれまでになく低いものですが、効率はバイポーラ・オペアンプほどではありません。言い換えれば、同程度の静止電流だと、バイポーラ・オペアンプの方が帯域幅は広く、ノイズ・フロアも低くなります。

効率、ノイズ耐性、高精度が求められる設計では、本記事で紹介した最新のバイポーラ・テクノロジが、他のどのプロセス・テクノロジよりも優れているでしょう。

参考情報:
高精度オペアンプ
アンプ回路
Analog Engineer’s Circuit Cookbook(my TIへのログイン必須)

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※上記の記事はこちらの技術記事(2021年6月23日)より翻訳転載されました。 
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