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モーター・ドライブソーラー・インバータのような大電力の産業用システム、また電気自動車 (EV) のチャージャトラクション・インバータオンボード・チャージャDC/DC コンバータなどの車載システムで、故障検出メカニズムは必須です。

故障検出では、電流、電圧、温度の測定を通して、AC 電源ラインの変動、またはシステム内の機械的過負荷や電気的過負荷を診断します。故障イベントを検出した時点で、ホスト・マイコン (MCU) は保護動作として、該当回路のターンオフや、パワー・トランジスタのスイッチング特性の変更、サーキット・ブレーカーのトリップ (回路遮断) などを実行します。

効率の向上とシステム・サイズの縮小を目指して、設計者は従来の IGBT (絶縁型ゲート・バイポーラ・トランジスタ) からワイド・バンドギャップ素材である SiC (シリコン・カーバイド) や GaN (窒化ガリウム) の各スイッチング・トランジスタへの移行を進めつつあり、これらの移行を実施した場合、より短い耐久時間 (5μs 未満) であっても 100kHz を上回るスイッチング速度の高速化を実現できます。

パワー・スイッチング・トランジスタを故障条件から保護するために、最初はシャント・ベースまたはホール・ベースのソリューションを使用し、過電流の条件を検出します。ホール素子ベースのソリューションを採用するとシングル・モジュールのアプローチを実現できますが、(特に過熱に関して) 測定精度が低下します。シャント・ベースとホール素子ベースどちらのソリューションを選択するか判断するための他の検討事項は、絶縁仕様や 1 次導体抵抗です。ホール素子ベースのソリューション内の 1 次導体抵抗は、以前はシャント・ベースのソリューションと同程度の発熱につながる可能性がありました。ただし、シャント技術の改良により、シャントの抵抗は以前よりかなり小さくなって、発熱が最小限に抑えられているので、広い温度範囲と寿命全体にわたって非常に高い精度を維持できます。

故障検出に関するシャント・ベースの方式をいくつか見てみましょう。

業界最小の絶縁コンパレータ
 AMC23C12』ファミリは、正確で分離された過電流、過電圧、および過熱の検出を提供します

絶縁型アンプの採用

図 1 に、絶縁型アンプと非絶縁型コンパレータを使用したシャント・ベースの過電流検出ソリューションを示します。必要な場合、フィードバック制御の目的でこれと同じ絶縁型アンプを使用することもできます。マイコンはコンパレータの出力を受け取り、ゲート・ドライバのイネーブル・ピンを制御するために、またはゲート・ドライバの入力に渡す PWM (パルス幅変調) のサイクルを変更するために信号を送信します。

 図 1:絶縁型アンプと非絶縁型コンパレータを採用した故障検出

絶縁型アンプを使用したシャント・ベースのアプローチは、故障検出とフィードバック制御両方の目的で高い測定精度を実現します。この絶縁型アンプは、基本絶縁または強化絶縁のどちらかです。

ただし、絶縁型アンプの伝搬遅延は、2 ~ 3μs に達します。過電流検出のレイテンシ要件にもよりますが、絶縁型アンプを使用する方式は十分高速とは言えない可能性があります。

絶縁型変調器の採用

図 2 に示すように、過電流検出とフィードバック制御を同時に実行するために、絶縁型変調器を使用することも可能です。絶縁型変調器の絶縁型データ出力 (DOUT) は、1 と 0 で構成されたデジタル・ビットストリームをかなり高い周波数で供給します。このビットストリームをある程度の期間にわたって平均すると、アナログ入力電圧に比例する値が得られます。マイコン内部のデジタル・フィルタが、測定された信号の再構築を行います。マイコンは同じビットストリーム出力を使用して、複数のデジタル・フィルタを並列動作させることができます。1 つのデジタル・フィルタは高精度フィードバック制御の目的で、また、もう 1 つのデジタル・フィルタは短いレイテンシで過電流検出を行う目的で構成します。

 図 2:絶縁型変調器を採用した故障検出

絶縁型変調器を使用したシャント・ベース方式は、故障検出とフィードバック制御の両方に関して、絶縁型アンプよりさらに良好な測定精度を達成します。過電流検出に関するワーストケース伝搬遅延は最短 1μs に縮めることができます。

標準的なコンパレータとデジタル・アイソレータの採用

図 3 に、標準的な非絶縁型コンパレータを配置し、その後段に過電流検出目的の複数のデジタル・アイソレータ、およびフィードバック制御目的の絶縁型アンプまたは絶縁型変調器を配置する方式を示します。選定するコンパレータとデジタル・アイソレータにもよりますが、過電流検出に関するワーストケース伝搬遅延は 1μs 未満に縮めることができます。ただし、ディスクリート実装を採用すると、より多くのプリント基板 (PCB) 面積を占有するほか、より高い精度を必要とする設計の場合は高額になる可能性があります。

 図 3:標準的なコンパレータとデジタル・アイソレータを採用した故障検出

絶縁型コンパレータの採用

図 4 に示す絶縁型コンパレータは、標準的なコンパレータとデジタル・アイソレータの機能を統合して過電流を検出する、小型で超高速の方式を示します。フィードバック制御の目的で、絶縁型アンプまたは絶縁型変調器を使用することもできます。

 図 4:絶縁型コンパレータを採用した故障検出

『AMC23C12』のような絶縁型コンパレータは、故障検出に関して、コスト効率の優れた小サイズのソリューション実現に役立ちます。これらのデバイスはレイテンシが非常に短く (400ns 未満)、その結果、超高速な過電流検出が可能になります。『AMC23C12』は、ハイサイドへの電流供給を目的とした入力範囲の広い (3V ~ 27V) 低ドロップアウト (LDO) レギュレータと、1 個のウィンドウ・コンパレータ、およびガルバニック絶縁バリアを統合しているので、ディスクリート実装に比べて、最大 50% の PCB 面積節減と、部品表 (BOM) 点数の削減を実現できます。『AMC23C12』ファミリには、調整可能なトリップ・スレッショルドや、誤差 3% 未満のワーストケース精度という利点があるので、過電流、過電圧、過熱、低電圧、不足電流の検出に関するニーズの増大に対応できます。

表 1 で、故障検出に関するシャント・ベースのさまざまな方式を比較します。

パラメータ 絶縁型アンプ 絶縁型変調器 ディスクリート実装 絶縁型コンパレータ
レイテンシ 良くない 適切 適切 とても良い
精度 とても良い とても良い 適切 とても良い
サイズ 良くない 適切 良くない とても良い
コスト 良くない 良くない 良くない とても良い
絶縁 とても良い とても良い とても良い とても良い

表 1:故障検出に関するシャント・ベースの各種方式の比較

システムの復元力向上が求められ、SiC や GaN のような高速スイッチング・トランジスタの採用例が増加する中で、高精度かつ高速な故障検出のニーズがますます優先度を高めています。AMC23C12 ファミリの各種絶縁型コンパレータは、さまざまな故障イベントを迅速に検出するので、設計者がフォールト・トレラント能力のいっそう優れた高電圧システムを開発するのに役立ちます。

参考情報:
絶縁型アンプ
+アナログ・デザイン・ジャーナル:
Using Isolated Comparators for Overcurrent and Overvoltage Fault Detection in Electric Motor Drives”(英語)

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年4月1日)より翻訳転載されました。
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