スマートフォン(スマホ)は、大画面化、高解像度化、モデムの高速化、バッテリの長寿命化が進んでいます。しかし、これらの特長はスマホのバッテリを消耗させる要因となります。必要なのは迅速な充電です。

スマホやモバイル機器がより大きなバッテリを搭載するようになるにつれ、充電アダプタの高速充電が必要となります。各メーカーは様々な手法を提案していますが、共通するテーマは「電源コネクタに対するより高い入力電圧の必要性」です。入力電圧が高くなれば、急速充電が求められるシステムにはより多くのパワーが必要ですが、コネクタの電流能力の限界以上に電流を増すことはできません。このアダプタ電圧のデフォルト値の設定は、通常5Vレベルですが(USB VBUS)、外部アダプタとモバイル機器間のD+/D-データラインに信号を送ることにより、アダプタの出力を必要に応じて高く調整することができます。典型的な電圧は5V、9V、12V、20V出力レベルで、アダプタの容量に依存します。充電IC、あるいはシステム側のアプリケーション・プロセッサは、アダプタ電圧だけが適切なレベルになるように信号を調整します。

典型的な例としてUSBコネクタを挿入すると、アプリケーション・プロセッサ(AP)とTIの『bq25890』のような充電ICとの間に電力を伝送するためのアナログ・スイッチが必要です(図1)。接続すると、まずAPはD+/D-の制御機能でもって、それが充電器なのか、USB機器なのかを検出します。

   

 図1 USBと充電器を使用したアプリケーション回路図

TIは、回路構成や電圧範囲、オン抵抗 (RON) 、バンド幅に関して広い範囲をカバーする多数のUSBスイッチを提供しています。

APは高電圧には耐えられません。一般に高速充電は9Vで行いますが、APは9Vに耐えられないため、9Vを超える状況にさらされることはありません。

USBにはピンが4本(図2:右からVBUS、D-、D+、 GND)あります。高速充電できる状態を認識できたら、VBUSを9Vにします。

図2 USBスイッチとピン構成

このUSBプラグが適切に挿入されていなかったり、VBUSが9Vの時に、ある角度で抜き取ったりすると、VBUSピンはコネクタのD-ピンとショートする可能性があります。このような場合、APはD-ピンからVBUSに接続され、図3の通り損傷を受けます。

図3 ショートが発生した時、9VでTS3USB3000を使用しない結果

図4に示すように、TS3USB3000 USBスイッチは、APと充電器/ UART(ユニバーサル非同期レシーバ/トランスミッタ)との間でスイッチングしながらAPを9Vから保護します。充電器をUSBポートに接続した後、APは、充電器がつながったことを検出し、出力イネーブル(OE)ピンを高レベルにし、スイッチを使えない状態(ディスイネーブル)にします。このAPは充電器と通信し、9Vで高速充電モードになるようにVBUSとやり取りします(図4)。このようにして、TS3USB3000は低電力状態になり、スイッチはディスイネーブル状態で、APを保護しています。

図4 TS3USB3000はショートが発生した時、9VでAPを保護

TS3USB3000スイッチには二つの動作目的があります。一つはホストと充電器間をスイッチする、二つ目は 5 ~ 9VでのAPの保護です。一点目の場合、お客様が希望されるバンド幅とRON の種類によって変わりますが、どんなUSBスイッチも使用可能です。しかし、二点目については、ショートが起きた時にAPを保護できるのはTS3USB3000しかありません。このTS3USB3000は、9Vで動作する設計に対して、デバイスがホストとAPの間を簡単にスイッチできるようにし、USBコネクタを挿抜する間、VBUSとD-の間でショートが発生した時にAPを保護する、という二つ目的を遂行します。

補足情報
TI USBスイッチの詳細
TS3USB3000 データシートを参照

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/analogwire/archive/2016/02/23/protect-your-application-processors-from-short-circuit-at-9v

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