本稿のテーマは、モノのインターネット(IoT)の産業分野への応用例、具体的にはいたみやすい商品の製造、包装、輸送プロセス、いわゆる「コールド・チェーン」への応用についてです。特に、データ・ロガーと呼ばれるシンプルで低コストのソリューションについて解説します。
コールド・チェーン管理はアセット・トラッキングの一種です。製造時または収穫時から、使用もしくは消費時までの全期間にわたり、商品を一定の温度に保つためのすべての手段が管理の対象となります。コールド・チェーン管理が重要な意味を持つ業種には次のようなものがあります。
- 食品
- 小売り
- 医療(病院:移植臓器、血漿)
- 医薬品
- 輸送(空海陸、鉄道)
- 倉庫
図 1 は食品のコールド・チェーン管理プロセスのフローチャートです。温度モニタが要求されるステップに温度計のマークを付けました。
図 1:食品のコールド・チェーン管理プロセスのフロー
コールド・チェーンの各ステップで、商品の温度の確認と記録が各プロセスの従事者人に求められます。このため、政府機関もコールド・チェーンの温度管理に関する説明責任と義務に関して法制化を進めています。その一例が 2011 年に成立した米食品医薬品局(FDA)の食品安全近代化法(FDMA)です。この法律は食品供給の安全確保のための重点を、汚染への事後対策から汚染予防に移行しています。この法律の施行により、温度の常時モニタと記録のための装置、ないしはリアルタイムでデータをレポートする装置の使用が広がるとみられます。現在、大きな積荷には温度トラッキング装置が使用されています。しかし、規則の適用範囲がさらに広がると、商品輸送用パレットに 1 個ごと、あるいはパレットの中の複数の箇所で、モニタが直接行われるようになります。
温度トラッキング装置は、温度インジケータとデータ・ロガーで構成されます。温度インジケータはシングル・イベントの温度逸脱を記録します。一般に使い捨てで、タイプとしては化学方式と電子方式があります。データ・ロガーはより複雑なソリューションで、輸送中に商品が想定範囲外の温度にさらされるとアラートを発生します。湿度、光への露出、振動など、温度以外のパラメータを記録できるものもあります。データ・ロガーは、有線式(積荷の複数箇所の温度を常時モニタする保冷トラック用など)と無線式(NFC、Bluetooth® Low Energy(BLE)、ZigBee、Wi-Fi、セルラー、衛星通信)があります。
TI は最近、温度センシング・デバイスの広範な製品ラインアップに TMP107 温度センサ IC を追加しました。測定範囲は -20°C ~ +70°C、精度は ±0.4°C です。1 本の通信ライン上で 32 個のデバイスをデイジーチェーン接続できるため、他のソリューションと異なり、追加配線を行わずに複数個所の温度モニタが可能になります。データ・ロギング・アプリケーションの迅速な設計開始を可能にするため、TI はアセット・トラッキングとコールド・チェーン管理用のデータ・ロギング向けリファレンス・デザインを開発しました。バッテリ寿命は 5 年以上で、設定と読み出しのための NFC インターフェイスを備えています。複数のセンサ IC と新しい NFC デバイスのほか、超低消費電力のマイクロコントローラ(MCU)を組み合わせたハードウェア・デザインも用意しています。このリファレンス・デザインは複数種のセンサを組み合わせており、非常に高い柔軟性を提供します。採用しているのは温度センサ(TMP112)、周辺光センサ(OPT3001)、湿度センサ(HDC1000)です。NFC 機能を提供するのは TI の RF430CL331H で、MCU として 64KB の不揮発性 FRAM メモリを搭載した MSP430FR5969 が採用されています。
図 2 に構成の簡略ブロック図を示します。
図 2:アセット・トラッキングとコールド・チェーン・データ・ロギング・システムのブロック図
TMP112 は米国立標準技術研究所(NIST)トレーサブルなデバイスです。このことは、生産されたデバイスが NIST トレーサブルなセンサを使って全数テストされ、ISO/IEC 17025 規格準拠のキャリブレーションにより NIST トレーサブルな機器を使って検証されていることを意味します。TI では今後、NIST トレーサビリティに対応したデバイスの種類を増やします。これにより、エンドユーザーにシームレスな測定チェーンを提供する一方、設計者にとってデバイスの温度計測精度のトレースが可能になります。規制の整備が進むにつれ、NIST トレーサブルなデバイスは世界的に広く普及していくとみられます。
IoT 新時代にはコールド・チェーンにおける商品モニタへのニーズはますます高まります。例えば、コールド・チェーンで輸送される処方薬の場合、輸送中にさらされた最高温度、推奨温度範囲からの逸脱時間などが正確に把握できるようになれば、薬剤師は処方薬を廃棄すべきか、使用できるかについて適切な判断を下せるようになります。コールド・チェーンのデータ・ロギングにより、輸送サイクルで高価な薬の適切な温度管理が行われていたかどうか、簡単に確認できる時代が訪れます。
その他のリソース
- TMP107 評価モジュール(EVM).
- NFC インターフェイス付きの超低消費電力マルチセンサ・データ・ロガー・リファレンス・デザイン.
- アプリケーション・ノート(英語):ビルディング・オートメーションの RTD とサーミスタの問題に対応する半導体温度センサ
- ブログ記事(英語):Ditch the NTC thermistor: use an analog temp sensor
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
http://e2e.ti.com/blogs_/b/analogwire/archive/2015/11/20/cold-chain-in-the-iot
*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。

