内燃エンジン(ICE)は、19世紀頃から存在している機械システムです(図1)。燃料だけで何千馬力もの力を生み出し、止まっている状態の車を3秒以内でおよそ時速96キロに加速することを考えると、その働きは驚異的です。しかし、その恩恵をいつまでも受けられるわけではありません。アメリカやEU、中国といった各国政府の規制強化により、輸出車の排ガスを最低レベルにすることが求められています。自動車産業はそれに応えて、電気自動車(EV)に加え、従来のICEの内部に電気サブシステムを組み込んだハイブリッド電気自動車(HEV)を作るための電化に取り組んでいます。

1:従来の内燃エンジン

 


TIの車載12V24Vエンジン負荷インターフェイスのリファレンス・デザインをご覧ください。


設計の準備はいいですか?

どのようにエンジンを電化するのか?

もちろん、燃焼プロセス自体を電化することはできません。しかし、燃焼プロセスを除くエンジン・プラットフォームの部分には多数のエンジン・センサがあり、温度、位置、排気といったシステムのパラメータを常に監視しています(図2)。センサがエンジン制御ユニット(ECU)にデータを送り、エンジンの現在の性能を算出して、求める性能と比較します。ECUで制御されるソレノイド、リレー、DCモーターがバルブを開閉して、流れる液体の量が適正になるようにサブシステムを通して調整します。この動作でシステムの働きを「適正」にしますが、エンジンが動いている限り、この閉ループのサイクルが繰り返されます。

2ECUとインターフェイス接続する入力センサと出力負荷スイッチ(赤枠の部分)を含む、
エンジン・プラットフォーム設計の概要ブロック図

12Vまたは24Vのバッテリを電源に、電化されたセンサとエンジン負荷を使用することで、エンジンのサイズが大幅に縮小され、主なエンジン動力源として燃焼を使い続けながら、排ガスの排出量が抑えられます。車載アプリケーションの電化で特に注意したいのが、すべての電子部品に温度グレード1か0の車載対応品を使用することです。これにより、設計するシステムがISO(国際標準化機構)26262に適合し、機能安全性の面で安全性要求レベル(ASIL)に準拠できるようになります。

エンジン負荷を駆動する方法は?

ソレノイドとDCモーターは、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)ステージを使用して誘導性負荷を駆動し、さらなる保護のために設定が可能になっています。N型MOSFETは始動時に最大で数十個のアンプを駆動でき、どういった構成で負荷を駆動しようとするかに応じて必要な数のMOSFETを使用することができます。

ソレノイドは、ハイサイド(HS)、ローサイド(LS)、またはプッシュプル構成で駆動されます(図3)。これらの構成には、実装方法、必要な部品数、電源段に用意される保護機能の点でトレードオフがあります。

3:各種のソレノイド駆動構成におけるトレードオフ

ソレノイドを効率的に駆動するために、ゲート・ドライバからパルス幅変調(PWM)信号を使って電流を調整できます。ソレノイドを始動させるには大電流が必要ですが、ソレノイドをその状態で保持するのはわずかな電流で済みます。ソレノイドが始動したらPWMのデューティ・サイクルが低くなるように切り替えることで、ソレノイドの巻線による電力損失が減少して発熱が少なくなり、負荷の寿命が長くなります。

DRV8343-Q1』のような車載デバイスは、個別のMOSFETモードを使用して最大6個の独立した負荷を駆動できます。定格電圧は最大60Vで、電流シャント・アンプを3個内蔵し、実装された構成のための保護機能と診断機能を備えます。車載ソリューションをお探しであれば、『DRV8876-Q1』、『DRV8874-Q1』、『DRV8873-Q1』はそれぞれ、独立したソレノイドを最大2個駆動でき、MOSFETと電流レギュレーションを内蔵しています。これらのデバイスの定格電圧は最大37Vで、それぞれ異なるピーク電流と総RDS(on)の値により、幅広いソレノイド電流に対応します。

どちらのソリューションも(図4)、車載アプリケーションに対するAutomotive Electronics CouncilのAEC-Q100基準と温度グレード1(周囲温度-40℃~125℃)について認定済みです。

 

4:『DRV8343-Q1』と『DRV887x-Q1』をそれぞれ使用したソレノイド駆動

実際の設計に取りかかる際��、TIの車載12V~24Vエンジン負荷インターフェイスのリファレンス・デザインをご覧ください(図5)。このソリューションは、12Vと24Vの両方の定格の車載システムに対応し、マイコンと『DRV8343-Q1』ゲート・ドライバを用いて、4種類の構成(HSドライバ、LSドライバ、HS+LSドライバ、プッシュプル・ドライバ)でエンジン負荷を駆動します。この設計には逆極性保護も含まれ、保護と診断の機能を備えながら、そのサイズは16平方インチ未満です。

 

512Vおよび24V車載システム向けエンジン負荷インターフェイス・ソリューション

ここでは、TIが提供する、エンジン負荷とインターフェイス接続するためのさまざまなオプションを紹介しましたが、TIウェブサイトにはエンジン・プラットフォームのプリント基板設計に役立つコンテンツや情報が他にもたくさんあります。エンジンは機械的に複雑ですが、電気的に複雑にする必要はありません。

エンジン・プラットフォーム設計にどの機能が、最も重要でしょうか。エンジン・プラットフォーム設計に役立つ製品や設計については、ガソリン/ディーゼル・エンジン・プラットフォームのページもご覧ください。

参考情報(英語):
+アプリケーション・レポート:
Using DRV to Drive Solenoids – DRV8876/DRV8702-Q1/DRV8343-Q1
Automotive Reverse Polarity Protection.”
『DRV8343-Q1』データシート
『DRV8873-Q1』データシート
+ビデオ:“Motor Drivers in Engine Control Units

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年7月9日)より翻訳転載されました。
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