Other Parts Discussed in Post: AWRL6432

初出:Electronic Products 社 Web サイト (英語)、共同執筆者:Kishore Ramaiah

安全性を意識する消費者が新車を購入する場合、新車評価プログラム (New Car Assessment Program:NCAP) のレーティングを参照し、自動車と NCAP レーティングの対応が地域によってどのように異なるのか確認することができます。その中で Euro NCAP (欧州の NCAP) は、そのロードマップの一部として、自動車内での子供の存在検知 (置き去り防止) 機能の導入を推進してきました。

2025 年以降は、直接センシングによるソリューションのみが NCAP ポイントを獲得する見込みです。そのため、自動車メーカー各社は、開扉 (ドア開放) ロジック、静電容量式圧力センシング、信頼性の高くない重量センシング・ソリューションといった間接的センシングの選択肢を取りやめ、単一の 60GHz レーダー・センサを使用するアプローチを目指す方向にあります。

60GHz レーダー・センサは精度の向上を達成しており、重量センサやカメラをベースとする他の選択肢よりコスト効率が優れています。カメラ・ベースのソリューションは、実際の照明条件への対処に大きな課題を抱えています。60GHz レーダー・センサである AWRL6432 を採用すると、足元の空間を含め車内で子供の存在を検知する車内センシングを実現して、Euro NCAP の設計要件を満たすと同時に、システムの部品表 (BOM) コストを大きく削減することができます。

TI の車載 60GHz レーダーのデモ動画 

このデモ動画『Using 60-GHz radar sensors for automotive child presence detection and intruder alerts』 (英語) では、低消費電力の 60GHz ミリ波レーダー・センサを使用し、車内全体で子供の置き去り検知と侵入者監視を実現する方法をご紹介します。  

自動車内での子供の置き去り検知の合理化

多くの企業では、自動車の中に取り残された子供を救出できるようにするための各種機能をテストしてきました。たとえば、TI は AWRL6432 を使用して、2 列シートの SUV (スポーツ・ユーティリティ車両) での子供の置き去り検知に関連する複数のテストを実施してきました。一部のテストは、人間の子供に似た状況を作り出すために、呼吸のような動作をする人形を自動車内で前向きまたは後ろ向きのシートに座らせたり、足元に寝かせたりして行いました。1 個のセンサを使用するだけで、人形が 2 列のシートのどこにいても、さらには 1 列目と 2 列目どちらのシートの足元に寝ていても、人形の存在を検知することができました。図 1b に、レーダー・センサを頭上に取り付けた状況を示します。

1 に示すテスト結果は、センサの精度と、SUV の中に置き去りにした呼吸する人形を検知する能力を明らかにしています。前席の足元に置いた人形や、前列助手席側と後列運転席側のそれぞれで後ろ向きに座らせた人形のいずれも、「Detected」 (検出しました) または「Occupied」 (占有しています) と表示されていることがわかります。これは自動車のエンジンがオフの場合にも機能します。

1AWRL6432を使用して SUV 車内で (a) 前列運転手席の足元、(b) 前列助手席側で後ろ向き、(c) 2 列目運転席側で後ろ向きの子供 (人形) をそれぞれ検知。

ミリ波レーダー・センサの低消費電力特性を活用

Euro NCAP では、エンジンを停止した後、最低でも 15 分間にわたって子供の置き去り検知システムを動作させることが要求されます。それにより、センサがスキャンと検出を確実に行い、子供が車内に取り残された状況や、無人の車内へのアクセスを捕捉した状況でアラートを生成することができます。

大半のレーダー・センサは一般的に平均数百 mW の電力を消費し、一部の製品では 4W にも達します。AWRL6432 など、より新しい各種 60GHz ミリ波センサには低消費電力のアーキテクチャが採用され、500ms (ミリ秒) のフレーム期間にわたって平均 10mW 未満の電力しか消費しません。チャープ時間 (レーザーを連続送信する時間) と処理時間を最小限に抑えることで、平均消費電力を最適化し、最小 2mW を達成できますが、これは自動車メーカーにとって次の 2 つのメリットがあります。

  1. 複数回の走行に備えた電力節減のために性能面で妥協する必要なく、子供の置き去り検知を高精度で実現できます。
  2. 同じセンサを侵入検知にも活用し、次回乗車するときまで自動車を保護することができます。

侵入検知機能に関しては、レーダー・センサは、長時間にわたって継続的に動作して監視を行い、自動車内への侵入者を高精度で検出できる必要があります。

図 2 に、AWRL6432 センサが近接センシングを実行し、自動車から 1m の距離に接近した人物を検知できる能力を示します。この機能は、不要なアラートを防ぐために重要です。たとえば、あなたが食料品店の駐車場に自動車を駐車している間に、他の誰かが自分の車に荷物を積み込もうとして、あなたの車の近くに立っているような場合です。一方、誰かがあなたの車に実際に侵入した場合、たとえば車の窓から手を差し込んで近接ゾーンに押し入った場合には、センサは侵入者がいることをアラートであなたに伝えます。

2AWRL6432 を使用した侵入検知のシミュレーション。(a) 自動車の近くに生物は存在していない。(b) 人物が自動車の近くに立っている。(c) 人物が車内に達しており、センサは自動車のウィンドウ越しに伸びている手を検出する。 

まとめ

AWRL6432 のような低消費電力 60GHz レーダー・センサを採用すると、自動車メーカー各社は子供の置き去り検知や侵入検知を実施し、強化の続く NCAP 要件に対応しやすくなります。AWRL6432 センサの低消費電力動作は、電力枠の厳しい電気自動車 (EV) に最適です。これらの機能をシングルチップで実装すれば、スペースとコストの両方を削減できるため、自動車メーカー各社は、エントリ・レベルのモデルにもこれらの重要な安全性機能を搭載しやすくなります。

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