Other Parts Discussed in Post: DRV10983-Q1

この記事では、電子制御モジュール設計に関する設計課題への対処に有効な、モータ・ドライバICに内蔵された個別のアナログ機能について説明します。

自動車の車両電子システムは電動モータを使用して、最適な位置にシートを調整したり、トランクを楽に開けられるようにしたりして、乗員の乗り心地の良さや便利さを高めます。

このような用途では、アルファベットの「H」の形に並べられたMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が電動モータを制御します。しかし、電子制御モジュール設計でMOSFETをスイッチとして使用すると、電磁干渉(EMI)、熱管理、電流センシング、パワーオフ・ブレーキ、診断および保護などの技術的課題が新たに生じます。TIが開発した多種多様な集積回路(IC)モータ・ドライバ製品は、アナログ機能を内蔵することで、電子制御モジュール設計のこれらの課題に対処しながら、ソリューション・サイズの縮小と開発期間の短縮を可能にします。その上、TI製品はシングル・ハーフブリッジからマルチHブリッジ・ゲート・ドライバまで幅広くカバーしているので、それぞれの具体的な設計実装に合わせて簡単に設計を拡張できます。   

EMIの低減

EMIの低減は、ICレベルとプリント基板(PCB)レベルの両方の機能とソリューションを使って行います。EMIを低減する主な方法の1つが、パルス幅変調(PWM)エッジ・レートの制御です。ブラシ付きDC(BDC)モータ向けゲート・ドライバ『DRV8705-Q1』、『DRV8706-Q1』、『DRV8714-Q1』、『DRV8718-Q1』や、ブラシレスDC(BLDC)モータ向け3相ゲート・ドライバ『DRV8343-Q1』といったゲート・ドライバ製品はすべて、スマート・ゲート・ドライブ・テクノロジを搭載しています。このテクノロジは、特にPWMエッジ・スルー・レートの制御に使われます。さらに、これらのデバイスは、EMIの低減に最適なスルー・レートを選択できる機能を備えます。EMIの低減によく使われる別のテクニックとして、メイン・クロック周波数のディザリングがあります。MOSFET内蔵の3相BLDCモータ・ドライバ『DRV10983-Q1』はメイン・クロック周波数のディザリング機能も搭載し、周波数帯全体にピークを拡散することで振幅を抑えます。

熱管理

モータの動作電流と停止電流の値は、駆動される負荷に応じて広範囲にわたります。高電流負荷の場合には、ゲート・ドライバ製品を用いることで、ディスクリートMOSFETを使用した設計実装を選択できます。電子制御モジュールを設計する際にレイアウトを最適化できるため、最適な熱管理が可能になります。低負荷電流の負荷の場合は、HブリッジMOSFET内蔵の『DRV8873-Q1』、『DRV8874-Q1』、『DRV8876-Q1』といったデバイスを使って負荷を駆動すると同時に、最適な熱管理を実現します。 さらに、3相BLDCモータ駆動による低電流負荷には、MOSFET内蔵の『DRV10983-Q1』を使用できます。なお、『DRV10983-Q1』は通信アルゴリズムも搭載しているので、モータを駆動するソリューションを1チップで実現できます。

電流センシング

モータ内の電流を計測することで、回路やモータの故障を検知したり、リップルを集計してモータの位置を推測したりできます。TIのすべてのBDC/BLDCモータおよびゲート・ドライバ製品は、抵抗にかかる電圧を増幅する電流検知アンプを内蔵しています。その上、『DRV8106-Q1』、『DRV8706-Q1』、『DRV8714-Q1』、『DRV8718-Q1』は、インライン電流検知アンプを備えます。インライン電流検知の測定値を利用して、モータの回転方向を判断することもできます。

ウィンドウの操作には従来からBDCモータが使われてきました。しかし、BLDCモータの方が静かなので、システム設計者はBLDCモータを使ってウィンドウを操作する方法を調べています。それに加えて、自動運転車でシートを回転させるのにもBLDCモータを使用しようと考え始めています。このようなアプリケーションには、電流検知機能を内蔵した3相スマート・ゲート・ドライバ『DRV8343-Q1』を使用するといいでしょう。

パワーオフ・ブレーキ

MOSFETソリューションの場合、モータの電源がオフのときは、モータは自由に回転できます。このような場合に、パワー・トランクを手で開け閉めするというように手動で負荷を動かすと、大きな逆起電力が生じて電子機器にダメージを与える可能性があります。トランク制御モジュール・アプリケーション向けの『DRV8714-Q1』と『DRV8718-Q1』は、発生した電圧を測定してモータに電気的ブレーキをかけるパワーオフ・ブレーキ機能を搭載しています。この機能がモータの回転を止めることで、電流の発生も止まります。

診断および保護

回路の故障を検知して、この故障による影響からシステムを保護することは、モータを制御する際の重要な要件です。BDCおよびBLDCゲート・ドライバは、回路の短絡/断線を検知する診断機能回路を内蔵しています。それに加えて、TIの一部のICには、必要に応じて機能安全設計を補助する、障害モードの配信およびピン障害モード解析情報を用意しています。

車両用アプリケーションへの制御モジュールの実装

表1に、これまで述べたようなアプリケーションに使われるモータと、それに対応する製品を示します。

制御モジュール 負荷 製品
ドア BDCモータ使用シングル・ウィンドウ DRV8705-Q1』、『DRV8706-Q1

ドアロック用モータ
BDCモータ使用デュアル・ウィンドウ

DRV8714-Q1』、『DRV8718-Q1』、『DRV8873-Q1
BLDCモータ使用シングル・ウィンドウ DRV8343-Q1

ミラーX/Y軸モータ
ミラー格納用モータ

DRV8908-Q1』、『DRV8873-Q1
ルーフ ルーフ用モータ DRV8705-Q1』、『DRV8706-Q1
マルチ・ルーフ用モータ DRV8714-Q1』、『DRV8718-Q1
トランク シングル・トランク・リフト用BDCモータ DRV8705-Q1』、『DRV8706-Q1
マルチ・トランク・リフト用BDCモータ DRV8714-Q1』、『DRV8718-Q1
シングル・トランク・リフト用BLDCモータ DRV8343-Q1
トランク・シンチ用モータ DRV8873-Q1
シート シート位置調整用モータ DRV8718-Q1』、『DRV8714-Q1
ランバー・サポート・ブラダー・ポンプ用モータ DRV8873-Q1』、『DRV8874-Q1
シート換気用モータ DRV10983-Q1
シート回転用モータ DRV8343-Q1

1:車両用モータ・アプリケーションに利用可能な製品ラインナップ

TI製品はシングル・ハーフブリッジからマルチHブリッジ・ゲート・ドライバまで幅広くカバーしているので、それぞれの具体的な設計実装に合わせて簡単に設計を拡張できます。

参考情報:
+詳細情報:BDCBLDC
+アプリケーション・レポート(英語):“Understanding Smart Gate Drive
+技術記事(英語):
What is a smart gate-drive architecture? – Part 1
Integrated intelligence part 1
+ホワイト・ペーパー(英語):“Smart Gate Drive.” 
速度レギュレーション機能付き、単層、12V、プログラマブル 3 相 BLDC モーター・ドライバのリファレンス・デザイン
+トレーニング・ビデオ(英語): “automotive electric motor EMC overview” 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年10月23日)より翻訳転載されました。 
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