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自動車業界ではメーカーもサプライヤも、自律性、電動化、コネクティビティを実現するために、新しい機能・性能を追加するソフトウェアの研究開発を精力的に行っています。しかし、多数の電子制御ユニット(ECU)を追加してこれらの機能を実現できたとしても、その結果、複雑さが増し、コストアップになったのでは持続可能な取り組みとはいえません。 

多数の車載ECUを一元的に管理して効率的に運用する方法には、ドメイン型アーキテクチャを採用するか、ゾーン型アーキテクチャを採用するかによって2つの方法があります。ドメイン型アーキテクチャは、サポートする機能に基づいてECUを管理するのに対し、ゾーン型アーキテクチャは、ECUがある場所(たとえば、車体の右前方のゾーン)に基づいてECUを管理します。システムの複雑さとコストを最小化するために2つの方法を併用することもできますが、ゾーン型アーキテクチャでは、処理の合理化により配線長の最小化も可能です。

図1に、自動車のゾーン型アーキテクチャを示します。

1:センター・ゲートウェイおよびゾーン・ゲートウェイとして『DRA821U』を使用した
自動車用ゾーン型アーキテクチャ

ゾーン型アーキテクチャに対応するゾーン・ゲートウェイは、各ロケーション内にあるECU間のコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)とローカル相互接続ネットワーク(LIN)による通信を従来どおり維持する必要があります。さらにセンター・ゲートウェイや他のゾーン・ゲートウェイと接続する必要もあるため、高帯域幅のギガビット・イーサネットが使用されます。 

ゲートウェイ・システムは、複数のインターフェイスをサポートするだけでなく互いの橋渡しもする必要があり、自動車業界はその重要性を表明しています。DRA821プロセッサは、柔軟な車載向けネットワーク機能を備え、爆発的に増加する自動車のデータを管理できるゲートウェイを実現します。このプロセッサはゾーン型アーキテクチャをサポートするために、従来型のCANおよびLINに加え、高速PCI Express、TSN(Time-Sensitive Networking)対応イーサネット・スイッチなど豊富かつ多様なネットワーク・インターフェイス・セットを搭載しています。 

ゾーン型アーキテクチャを採用して機能を追加する場合、安全上重要なECUとそうではないECUとを一元的に管理することによって生じる限界に直面する場合があります。複雑さを最小限に抑えながら機能を追加しようとするサプライヤは、ミックスド・クリティカリティ(安全上重要な機能とそうでない機能がワンチップ内に混在している状況)に対応する必要があり、重要な考慮事項となっています。たとえば、ブレーキ・システムとの通信を行う先進運転支援システムの計算モジュールにクラウド接続機能を追加するようなケースで、ミックスド・クリティカリティに対応したゲートウェイは、ゾーン間のネットワークを効果的に維持することができます。 

TIは、DRA821プロセッサの広範なファイアウォールを駆使してミックスド・クリティカリティに対応し、無干渉(Freedom From Interference)を実現しています。このデバイスは、安全要件に対応するためにArm® Cortex®-R5Fマイクロコントローラ(MCU)を計4個搭載しています。このMCUは、TSN(Time Sensitive Networking)をサポートし、ロックステップでの実行が可能です。これらのMCUコア、CAN/LINインターフェイス、オンチップ・メモリ、ダブル・データ・レート・インターフェイスは、ファイアウォールによってチップ内の他の部分から保護されるため、安全上重要な機能を維持できます。一方、無線アップデートや予知保全などの新しいビジネス・モデルやユーザー体験を創出するためにはクラウド接続管理などの機能が必要です。安全上重要な機能から分離されるデュアルCortex-A72コアを使用することによって、別のアプリケーション・プロセッサを使用することなくこれらの機能を追加できます。このように、DRA821では無干渉(FFI)により安全上重要な機能とそうでない機能を分離できるため、車載ネットワークの複雑さを最小限に抑えながら革新的な機能をゲートウェイに簡単に統合できるようになります。

性能要件も機能も進化する中で、総コストの最小化という目標が変わることはありません。ゲートウェイには、機能安全に必要なセーフティ・マイコンに加え、新しい車載アーキテクチャに対応する外部イーサネット・スイッチが必要です。DRA821は、セーフティ・マイコンと外部イーサネット・スイッチを搭載しており、システム・コストを節減しながらゾーン型の車載アーキテクチャを実現できます。Jacinto DRA821プロセッサに基づく車載およびIoTゲートウェイのリファレンス・デザインを参照してください。

ソフトウェア性能の課題は多岐にわたります。TIは自動車業界での長年の経験から、こうしたさまざまな課題に対するお客様の取り組みをスケールアップしていくことの重要性を十分に認識しています。自動車業界のサプライヤは、まったく別のプロセッサでゼロからスタートするのではなく、既存のソフトウェアを再利用できる方法を採用することにより、ソフトウェアの研究開発を最小限にして開発期間を短縮できます。DRA821は、セントラル型、ドメイン型、ゾーン型各アーキテクチャのすべてに対応する先進的な車載ネットワーク機能の実現を目指しています。

より安全で、クリーンな、コネクティビティに優れた車を実現する取り組みには、数多くの課題が待ち受けています。サプライヤは、革新的な取り組みを続ける中で、システムのコストと複雑化を考慮しながら増大する一方のシステム要件を管理する必要があります。DRA821は、スケーラブルな性能に加え、すぐにでもソフトウェア開発を開始できる評価モジュールも用意されています。効率的なネットワーク機能とミックスド・クリティカリティへの対応によって機能豊富な車載ゲートウェイ・システムを実現するシステム・オン・チップです。

詳細については、ビデオをご覧ください。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年11月17日)より翻訳転載されました。 
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