TI独自の高度に統合された窒化ガリウム(GaN)ソリューションは、エントリレベルから高級モデルまでのハイブリッド車/電気自動車の充電の高速化と走行距離の延長に役立ち、普及率向上へのハードルを下げることができます。  

 TIでは電気自動車やハイブリッド車の電源管理用に高効率の集積回路を作成することで、お客様がより効率が高く手頃な価格の車両を設計し、排気ガスを減らしてクリーンな環境作りに貢献できるようにします。

走行距離の不安や、充電ステーションを探す手間、充電のための長い停車時間などから、ドライバーは従来型の自動車からハイブリッド車や電気自動車(HEV/EV)への乗り換えに躊躇してきました。

しかし、電源管理の革新が、乗り換えを進める後押しとなっています。

TIの最新の車載対応窒化ガリウム(GaN)電源管理技術を搭載したHEV/EVは、従来のシリコンベースの充電技術に基づく車両よりも高速で充電でき、より長い距離を走行できるようになります。自動車メーカーがHEV/EVの幅広い普及に向けたこれらの障壁を取り除けるようにすることは、世界全体の大気汚染や気候変動の要因となる物質の排出量低減に向けた大きな一歩となります。

TIの高電圧パワー・チームを率いるSteve Lambousesは、次のように語っています。「私たちのお客様は、車両の重量やコストを大幅に増やさずにパワーをより強化する方法を求めています。TIの高度に統合されたGaNソリューションなら、車載設計者は、より信頼性が高く、価格が手頃で、電力の利用効率が大幅に向上した充電システムを開発できるようになります。これは本当に画期的なことです」

業界初の統合型車載向けGaN FETの詳細をご覧ください。

 

信頼性の高い電源管理技術

GaNは、きわめて汎用性の高い半導体材料であり、高温、高電圧で動作できます。このことは、発光ダイオード、ソーラー・インバータ、再生可能エネルギー・ストレージ・システムなどの電源管理アプリケーションで重要な意味を持ちます。  この10年にわたり、TIのGaN製品は幅広い範囲の通信機器や産業用機器の設計で効率の高い電源として使用され、各製品のリリースごとに新しいレベルの電力密度や効率を達成してきました。

そして今、TIは、業界で初めて電気自動車のオンボード充電システムに電源を供給する車載対応製品により、GaNのメリットを車載市場にも提供します。

HEV/EVの製造に際して、従来のシリコンまたは新しい炭化ケイ素(SiC)技術では、充電プロセス中に大きな熱が発生し、エネルギーが逃げることで充電時間が長くなるというデメリットがありますが、TIのGaN製品はそれらと比較して有利です。業界最速の統合ゲート・ドライバにより、電力出力が2倍になることで、シリコンMOSFETと比較して電力密度が倍増し、車載設計者はオンボード充電アーキテクチャの設計を最適化できます。

TIで車載バッテリ製品のビジネス開発を主導するIvo Maroccoは、次のように語っています。「効率の高い電源管理の次のステップは、3つのことが中心となります。第1に、高精度の充電が必要です。第2に、バッテリ・システムに高い安全性が必要です。第3に、価格の手頃さが鍵となります。  リチウムイオン・バッテリは自動車のコスト全体の30%を占める場合もあり、GaNベースのソリューションは電力損失を50%減らすことで、ずっと効率の高いアプローチを提供します。TIのGaN技術は、それらすべての問題に対処します」

より速く、小型で、信頼性の高い電源管理

小型の消費者向けハンドヘルド・デバイスやノートパソコンから、大規模なデータ・センターまで、テクノロジはますます電源管理への依存度を高めており、電気自動車も例外ではありません。絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)や金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)など、従来のパワー・スイッチング技術は、長期間にわたって良好に動作してきた一方、設計者はサイズの制限、発熱、スイッチング速度の遅延や不具合などに直面してきました。

電源管理には常にスイッチングが伴い、電流のオン/オフを切り替える必要があります。スイッチングの効率が低いと電力損失が生じるため、その損失を補償するために、より大型で重い電源と長い充電時間が必要になります。高速で高精度のスイッチング技術は、よりシームレスで効率の高いエネルギー・フローにつながり、システムの小型化やコストの削減など、さまざまなメリットを提供します。

Steveは次のように述べています。「GaNの高速スイッチングは効率を高め、それによって車両内の冷却の負担が軽減されます。その結果、GaNがもたらす効率はシステムのコストを削減し、全体の電力密度を高めます。電源周辺の重い磁気部品が60%近く小さくなるからです。それによって最終的に車両の重量が減り、走行可能距離が長くなります。これが、GaNベースの電源管理システムが約束するものです」 

また、HEV/EVエンジニアはGaNによって、既存のソリューションの最大2倍の電力密度と、より高速なバッテリ充電、より信頼性の高い動作、より高い全体効率を電気自動車のオンボード充電システムで実現できます。

Ivoは述べます。「GaNは導入からしばらくたち、誰もがその利点を知っていました。しかし今、私たちはそれが自動車の世界で理論から現実のアプリケーションへと移行しているのを目の当たりにしています。これは素晴らしいことです。」

TIの高度に統合されたGaNソリューションでコストと電力を最適化

TIがもたらすGaNの革新は、単なるスイッチよりもさらに先へと進んでいます。HEV/EV市場に向けた大きなステップとなるGaNベースのオンボード充電システムを作成するために必要な、すべての機能を提供します。

車載製品の専門知識を活かし、TI製のGaN-on-Silicon FETと高速スイッチングの2.2MHzシリコン・ゲート・ドライバを1つのパッケージに収めることで、スイッチ、コントローラ、保護技術を1つのチップに統合し、設計者は必要なすべての要素を簡単に搭載できるようになります。

Steveは言います。「私はこれを、頭脳と筋肉の統合と考えています。スイッチは筋肉ですが、TIのGaNによる革新的な統合コントローラが提供するインテリジェンスによって、開発者は私たちのソリューションから最高のパフォーマンスを引き出すことができます。」

GaNのテスト

GaNやその他のワイド・バンドギャップ・トランジスタは、構造や材質がシリコン・デバイスと異なるため、デバイスの信頼性を確保するために、特別に調整されたテスト・ガイドラインを必要とします。テスト・ガイドラインは、GaNの信頼性を高め、業界全体での導入を加速するための鍵となります。

TIではJEDECのJC-70ワイド・バンドギャップ・パワー・エレクトロニクス変換半導体委員会を共同で設立し、堅牢な設計を作成するための有用なガイドラインをエンジニアに提供しています。この委員会では最近、GaN独自の新しいスイッチング・ガイドラインである「JEP180:窒化ガリウム電力変換デバイスのスイッチング信頼性評価手順のガイドライン」を発表しました。

TIのGaN技術革新アーキテクトであるStephanie Watts Butler博士は、次のように語っています。「この新しいガイドラインはエンジニアに対して、スイッチング動作の堅牢な評価を提供します。それによって、業界全体でのGaNの導入、特に、効率、電力密度、信頼性が最優先となる車載および産業用市場での導入がさらに加速します。」

この10年にわたって、TIでは社内の信頼性ラボでGaNの性能をテストしてきました。デバイスの信頼性テストに4千万時間以上をかけ、アプリケーション内でのテストに約5ギガワット時を費やすことで、デバイスの長期的な信頼性を確保してきました。

Steveは言います。「GaNは精密なスイス製腕時計のようなものです。非常に精密に調整することができ、私たちはそこから最高のパフォーマンスを引き出すために何をすればよいかがわかっています。テスト・ラボがそれを与えてくれます。」

よりクリーンで、安全かつスマートな交通社会

自動車業界ではHEV/EVの売り上げが急速に増加していて、年次増加率は約60%であり、現在560万台の車両が2025年までに世界全体の自動車売り上げの30%まで増加すると予測されています。米国内の既存の約25,000箇所の充電ステーションも大幅に増加する見通しです。

「私たちのGaN電源管理技術は、車載設計エンジニアや自動車メーカーに対して、車両の充電時間を劇的に短縮し、電力密度を高め、コスト効率を改善し、走行距離を伸ばして信頼性を向上させる機会を提供します」と、Steveは語ります。「HEV/EVの導入に向けた障壁が低くなり、私たち皆が、よりクリーンで自然な地球環境の実現へと近づくことができます。」

情熱を注いで、より良い世界を創造

電気自動車やハイブリッド車のオンボード充電システム用に高度に統合されたGaN技術を開発することは、TIのイノベータたちが、半導体を通じて電子機器をより身近なものにすることで世界をより良くしようという、TIの情熱を示す1つの例です。過去を土台に生まれる一つ一つのイノベーションが、より小型で効率的な、信頼性が高く求めやすいテクノロジを実現します。新しいマーケットが開かれ、いたるところで電子機器に半導体が使われるようになるでしょう。TIでは、これを「エンジニアリングの進歩」ととらえています。これが、当社が実践していることであり、何十年にもわたって実践してきたことなのです。

参考情報:
+J.P.モルガン レポート:”Driving into 2025: The Future of Electric Vehicles”(英語)


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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年11月9日)より翻訳転載されました。 
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