TI ではステッピング・モータを動かすことに力をいれています。 そしてステッピング・モータをより簡単に駆動できるように、IC や開発ツールを開発しています。 TI製の小型フォーム・ファクタブースタパックによりプロトタイピングが簡単にできます。アダプティブ減衰機能のような先進的な機能により、モーターのチューニングが不要になっています。また、豊富なドライバ IC にはインデクサが統合されており、内蔵または外部の出力段を利用することができ、包括的な保護機能も活用できます。

図 1: DRV8711 ブースタパック: ステッピング・モータには考慮する点があります。

 

ステッピング・モータには、他のモーター製品に比べて、制御が非常に容易であるという独自の特徴があります。 ブラシ付き DC モーターやブラシレス DC モーターでは、回転子がどこにあるかを制御するために閉ループを使用した位置フィードバックが必要とされるのに対し、ステッパは開ループで駆動しても、回転子がどのステップにあるのか常に把握できます。 この事実により、ステッパ・モーターは、舞台照明、セキュリティ・カメラ、現金預払機(ATM)、医療用分析器、繊維機器、スキャナ、プリンタなど、多様なアプリケーションで有用な機能を果たします。 3D プリントは、ステッピング・モータを使用して位置を制御する優れた例の 1 つです。

図 2: 3D プリントで出力されたフィギュア。 これらの小さい人形が実際に出力されれば、3D プリンタの利点を誰でも理解できます

 

ステッピング・モータの欠点は、利点と同じ、つまり開ループで駆動されていることです。 モーターが停止することを防止する目的で、あらゆる状況でモーターが適切なトルク・マージンを確保できるように、十分な電流を供給してステッパを駆動する必要があります。 そのため、ステッピング・モータは多少温度が高くなることがあり、ブラシレス DC モーターに比べると特にその傾向があります。 ステッピング・モータは、非常に多くの電力を消費することもあります。

筆者は、ステッピング・モータをより効率よく動作させる方法を研究していますが、以下のような重要な事項を自問しています。

  • 無負荷の状態でステッパ・モーターを動作させる場合、自由回転の状態であることを検出し、出力電流を小さくする方法はないだろうか。
  • モーターの負荷が大きくなった場合、モーターが停止することを防止するために電流を大きくすることができるだろうか。
  • 電流制御に紙面の半分を費やすことなく、ステッパ・モーターに関するブログを執筆できるだろうか。

図 3: ステップ数を増加または減少させる際のステッパ・モーターに対する電流制御。 いえ、ここでは詳細な説明を省略します

 

最後の質問はさておき、最善の答えを見つけたいと考え、筆者はステッパ・モーターの負荷の大きさを判定するいくつかの方式を調べてきました。 モーターの逆起電力(BEMF、Back Electromotive Force)は有望に思えますが、モーターの負荷が小さくなるにつれて逆起電力の電圧は小さくなります。 少なくとも理論的には、逆起電力に注目し、その測定値に基づいてステッパ・ドライバの出力電流を設定することは可能です。

筆者が理論上想定したシステムでは、逆起電力を磁気的に測定し、そのデータをコントローラに送信します。 コントローラはステッパ・ドライバの出力電流を調整してステッパ・モーターに反映し、その結果、閉ループ動作を実現できます。 唯一の注意点は、逆起電力が存在するのは、モーターが回転しているときのみである事です。 したがって、この方式は、ステッパ・モーターが特定の位置を保持している場合や、非常に低速で回転している場合は機能しません。

図 4: 手順 1:モーターを回転。 手順 2:逆起電力を測定。 手順 3: 電流を調整 手順 4:電流の削減という利点。

 

どのようなモーターでも、逆起電力は容易に測定できない可能性があります。モーターの巻線に対してエネルギーが供給されている場合は、逆起電力は隠蔽されるからです。 電流が巻線を流れると、モーターの両端で観察される電圧は、逆起電力に、モーターの抵抗値に起因する I x R を加えた値に等しくなります。 モーターと電流に関する既知の値に基づいて、逆起電力を逆算する必要が生じます。 この計算方法は少々難しいように感じられるので、採用したいとは思いません。 幸いにも、この逆算を実行する必要はありません。ステッピング・モーターがマイクロステップ動作しているときはいつでも、巻線を流れる電流がゼロになるステップが存在します。 この「ゼロ電流ステップ」は、モーターの逆起電力を測定する理想的な時期のように感じられます。

図 5: 立ち下がりステップで、より積極的な電流制御を行うと... 待ってください。 この話を進めることを意図していません

もちろん、適切な時期に逆起電力を実際に測定するには、このゼロ電流ステップがいつ発生するかを把握しておく必要があります。 この時期判定は非常に困難です。インデクサを使用するステッパ・モーター・ドライバの大半は、ゼロ電流ステップに達するたびにそのことを通知するわけではないからです。 したがって、逆起電力を自動的にサンプリングするステッパ・ドライバを製作するか、2 個の独立した H ブリッジを使用してステッパ・モーターを手動で駆動し、コントローラを使用して電流波形の各ステップを制御するという困難な経路を選択する必要があります。

執筆者からのお知らせDRV8711 は、自動的に逆起電力をサンプリングするステッパ・ゲート・ドライバです。

このブログ・シリーズの次回投稿では、DRV8711 ブースタパックMSP430™ LaunchPad バリュー・ライン開発キット を使用した、電力効率の優れたステッパ・ドライバに関する筆者のプロトタイプを詳細に説明する予定です。

その他のリソース:

DRV8711 Quick Spin and Tuning Guide(英語)

DRV8711 Decay Mode Setting Optimization(英語)

 

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/motordrivecontrol/archive/2015/05/07/how-to-spin-your-stepper-motor-more-efficiently-part-1


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