このシリーズのパート 1 では、InstaSPIN-FOC™ 内で ForceAngle を使用して起動時にモーターを安定化する方法を説明しました。 今回は、起動の間に十分なトルクを生成し、整列を維持してトルクを最大化する方法に取り組みます。

十分なトルクの生成

起動時の負荷が増加すると、設計者が生成することのできるトルクは、電流と、フィールドの整列に基づく大きさになります(角度推定の精度により決定)。

十分な電流を確実に生成できるようにUSER_MOTOR_MAX_CURRENT 変数を、定格トルクを生成するために必要とされる定格電流より大きい値に設定することが不可欠です。 USER_MOTOR_MAX_CURRRENT は、速度コントローラの(正と負の)最大出力を設定する変数です(この値は、図 1 の Iq PI 電流コントローラで Iq_ref 入力として使用されます)。

たとえば、最大負荷でモーターを起動したときに次の波形がキャプチャされたとしましょう。 この定格負荷を動かすために必要なトルクを生成するには、4A の電流が必要です。 この例では、USER_MOTOR_MAX_CURRENT が(6.0)に設定されていました。最初の電気的サイクルで、回転子を移動するためにこの 6A の電流に到達したことを確認できます。 その後、FAST™ は有効な角度を供給できるようになり、その結果、コントロール・システムは、要求されている 4A のみを使用するように電流使用量を直ちに安定化することができます。

図 1: 最大負荷(4A の連続/6A のピーク)の起動

 

ForceAngle を使用する場合は、安定したフィードバック角度を生成している状況であっても、最大トルクを生成するための適切な位置に必ずしも整列されるとは限りません。 基本的に固定子のフィールドをスイープし、回転子のフィールドがロックオンされて同期されるのを待つのみです。 固定子のフィールドが適切な角度に向いていない場合は、十分なトルクを生成できないか、ワーストケースでは、要求とは正反対の方向のトルクを生成する結果になります。 この挙動を実際に動作で確認するために、ForceAngle を使用していくつかの実験を行うことができます。時には回転子が非常になめらかに正しい方向に起動され、時には一時停止されるか、ロックされるか、または短時間にわたって逆方向に動作するのを目にすることができます。 この状況を改善するために必要な作業は、コントロール・システムでより適切な起動角度を設定することです。 とはいえ、速度ゼロの時点で FAST が有効な角度を供給できない状況で、この作業をどのように実行すればよいでしょうか。

整列

フィールド・オリエンテッド・コントロール・システムで初期の整列を実行する 1 つの方法は、コントロール・システムの Id 部分に DC 電流を供給する(Iq には供給しない)ことです。 これは D 軸であり、回転子フラックスの方向として定義されています。 

図 2: フィールド・オリエンテッド・コントロール。 固定子フラックス(緑色)を回転子フラックス(赤)の方向に合わせ、所定の固定子電流から生成されるトルクを最大化します

 

この電流が、回転子(および任意の負荷)を移動するために十分な大きさである場合は、モーターが既知の角度(0 ラジアン)に合わされる結果になります。つまり、強制された角度が引き続きエミュレートされている間は、少なくともモーターが正しい方向で起動されること、また、トルクを生成するための最善の位置にあることを意味します。 このような DC 電流の供給は、「手動で」実行することもできますが、InstaSPIN-FOC にすでに搭載されている RsRecalibration フラグを活用することもできます。 固定子の抵抗(Rs)を識別する作業は、モーター・パラメータ識別機能の一部であり、User Guide(英語)のセクション 6.5.4 で説明されています。 初期のモーター識別を行うには、DC 電流の値(USER_MOTOR_RES_EST_CURRENT)を定格の約 10 ~ 20%に設定して、有効な値を取得することをお勧めします。 実行時の動作で使用できるように RsRecalibration フラグが用意されているので、これと同じ DC 供給を再度実行し、Rs の値を測定して、コントロール・システムに対して更新することができます。 重い負荷で起動する場合は、回転子フラックスを既知の位置に対して機械的に整列するための十分なトルクを生成する目的で、この DC 電流の値を大きくすることができます。 この DC 電流を大きくすると、固定子の巻線の温度が上昇する可能性があり、その結果、推定される Rs も大きくなることに注意する必要があります。 FAST から得られる推定値が、起動後にモーターを動作させることを予定している動作領域で引き続き有効であることを確認するために、実際のアプリケーションで実験してみる必要があります。

負荷テストの一環として実行する起動については、最近の記事で取り上げました。これは、TI の EDN Spin Cycle blog(英語)に掲載されています。

これらの方式により、大半のアプリケーションではセンサレスの起動能力が大幅に改善されますが、特に定格トルク出力に対して最大 100% に達する変動性の高い動的負荷では、依然としていくつかの制限が課されます。 このシリーズのパート 3 もお読みになり、これらの制限を克服する方法をご確認ください。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/motordrivecontrol/archive/2015/05/28/motor-start-up-techniques-part-two


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