FA(工場自動化)やプロセス自動化、グリッド・インフラ、ビル・オートメーションなどの分野で、シリアル・ベースのフィールドバスに代わり産業用イーサネットが主要な役割を果たすようになっています。産業用イーサネットは、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)と現場に設置されたセンサ/アクチュエータ、I/O モジュール、バス・カプラ、ドライブを接続します。
困ったことに、製造業全般をカバーする共通の産業用イーサネット規格は存在しておらず、30 を超える規格が工場で利用され、現場では規格がばらばらになっています。多くの業界をリードするメーカーが、既存のシリアル・ベースのフィールドバスの一つを元に、自社のニーズに対応した個別の産業用イーサネット規格を定義しています。
ほとんどの産業用イーサネット規格は個別のデバイス・ソリューションを必要とします。図 1 はマイコン・ユニット(MCU)またはマイクロプロセッサ・ユニット(MPU)と、別の産業用イーサネット・デバイス、すなわちメディア・アクセス・コントローラ(MAC)で構成されるソリューションを示しています。MAC はリアルタイムのイーサネット・フレーム・プロセッシング・タスクをサポートしており、技術的には、「オンザフライ」あるいは「カットスルー」フレーム・プロセッシングと呼ばれています。このため、ほとんどの産業用イーサネット規格は、リアルタイム・イーサネット・フレーム・プロセッシングのために ASIC(特定用途向け集積回路)や FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を必要とします。
図 1:産業用イーサネット採用のための伝統的な方法
製品に産業用イーサネット規格の一つを採用し、規格認証機関から通信インタフェースの認証を取得することは、とても大きな課題となります。ほとんどのメーカーは異なる規格を採用している複数の顧客に対し自社の製品を販売するため、複数の産業用イーサネット規格のサポートを必要とすることになります。
2 種類、3 種類、あるいはもっと多くの産業用イーサネット規格に対応した製品を製作するためには、製品開発に新たな次元の複雑さが加わることになります。ある製品の開発の際に、複数の産業用イーサネット規格を採用するために可能性のある一つのソリューションが、個々の産業用イーサネット規格に対応した個別の PCB モジュールを製作することです。メインボードのスロットにモジュールの一つをプラグインするだけで、すぐにそうした個別のモジュールを製作できます。しかし、この方法ではプロトコルを変更する際に、常にハードウェアの変更が必要になります。BOM 管理の面で製品の複雑さが増すほか、複数の PCB モジュール生産やマルチチップ・ソリューションの調達が必要になります。
こうした問題を解決するためにお薦めしたいのは、TI Sitara™ ARM プロセッサの採用を検討することです。このアプリケーション・プロセッサは、プログラマブル・リアルタイム・ユニットと産業用通信サブシステムを一体化した PRU-ICSS を内蔵し、マルチプロトコル産業用イーサネットのサポートが可能です。このソリューションの他との相違点と利点について見ていきます。
PRU はプログラマブル・リアルタイム・コアです。デバイスのランタイムに産業用イーサネットプロトコルのファームウェアを読み込みます。EtherCAT、PROFINET、Sercos III、Ethernet/IP、Ethernet PowerLink 向けには、利用可能な PRU-ICSS プロトコル・ファームウェアが複数リリースされています。これらのプロトコル・ファームウェアは、「オンザフライ」や「カットスルー」フレーム・プロセッシングなどのリアルタイム・クリティカル・タスクを実行します。これらのクリティカル・リアルタイム・タスクを担っているのが ASIC や FPGA だと前述しましたが、注意してほしいのは、今ではこれらのタスクは PRU-ICSS によって処理できるようになっていることです(図 2 を参照)。
図 2:TIはマルチプロトコル産業用イーサネットをSitaraプロセッサに統合
PRU-ICSS は、スケーラブルでパワフルな ARM コア(Cortex-A8、A9 または A15。Sitara プロセッサのファミリによって異なる)と連携し、FA 製品向けのシングルチップ・ソリューションの実装を可能にします。これにより、PRU-ICSS ファームウェアのフレキシブルな交換を通じて、複数の産業用イーサネット規格への対応が可能になります。PRU-ICSS はマルチプロトコル・サポートの課題を、複数個の ASIC ないし FPGA を用いてハードウェア的に解決するのでなく、PRU-ICSS 上のプログラマブル・ソリューションによってソフトウェア的に解決します。ソフトウェア・ベースのソリューションには、追加機能をサポートする新しいプロトコル規格がリリースされたときや、まったく新しいプロトコルが登場したときに、容易にアップグレードできるなど、数多くの利点があります。
そうしたさまざまな利点や、産業用イーサネットのクリティカル・リアルタイム・プロセッシング・タスクへの対応が可能なことに加え、PRU-ICSS は以下の特長を備えています。
- 外付け ASIC と FPGA を不要に
- BOM と PCB スペース低減による、コストの削減
- 内部の高速メモリ・バス・インタフェースを介した、ARM プロセッサ間の高速 I/O データ交換が可能に
PRU-ICSS ファームウェアはデバイスのランタイム中の交換が可能です。図 3 は、FA で最も一般的に使用されている 5 つの産業用イーサネット規格を示しています。これらの規格はすべて Sitara デバイス・ファミリ向けの TI のファームウェアによってサポートされています。
図 3:マルチプロトコルのデモンストレーション・セットアップ - TMDSICE3359 AM335x プロセッサ開発プラットフォームは、5 種類の産業用イーサネット規格に対応
追加リソース:
- 産業用イーサネット規格の主力上位 5 種の詳細については、産業用イーサネットブログ・シリーズをご覧ください
- TI のプロセッサがサポートする産業用通信プロトコルのすべてに関しては、こちらをご覧ください
- インダストリアル・オートメーション向けの PRU-ICSS を使用したマルチプロトコル産業用イーサネット検出機能のためのリファレンス・デザイン(TIDEP0032)をダウンロードできます
- AM3359 プロセッサベースの産業用通信エンジン開発プラットフォームについてはこちらをご覧ください。
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