国連の経済社会局によると、2050年には世界の人口の3分の2が都市に居住することになります。都市化の傾向が急速に強まるなか、人工知能、コンピュータ・ビジョン、人数計測といった建物内部でのスマート人体センシング・テクノロジは、モビリティを改善し、非効率性を軽減し、場合によっては建物の価値を高めます。この記事では、エレベータ・システムのスマート人体センシング・テクノロジにより、どのようにエレベータの利用時間を短縮して利用者体験の向上につなげるかを見ていきます。

図1では、エレベータで目的の階に到着するまでの利用時間を、待ち時間、搭乗時間、移動時間の3つの時間区分に分けて示しています。

 図1:エレベータ利用の時間区分

現在のエレベータ・システムを設計する重要な目的は、すべての利用者の平均利用時間を短縮することです。例えば16階建ての商用オフィスビルでは、平均利用時間は約70秒、平均待ち時間は約25秒ですが、この時間は1日のうちの時間帯によって変動します。ランチタイムのオフィスビルでの利用時間は、人が建物に出たり入ったりして人の流れが双方向になるため、朝に比べて長くなる傾向があります。

最新のエレベータ・システムは、利用者の利用時間を短縮し、ビル全体における人の移動を効率化しようと取り組んでいます。スマートなエレベータ群制御アルゴリズムが、朝やランチタイムといったラッシュ時の人の流れの予測・管理を支援します。既に満員のエレベータが途中の階に停止してさらに人を乗せるのは、エレベータの内部・外部両方にとって効率的な運用とは言えません。また、誰かがエレベータを呼び、到着する前に立ち去ってしまったときなども非効率な運用と言えます。

ミリ波センサを使用した人体追跡、計数、動作検出

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このような課題への取り組みの1つが、エレベータ内部にいる人とエレベータ外部で待っている人の数を計測する方法です。これは効果的かつ動的な群制御アルゴリズムを実現できます。エレベータの前で待っている人と単に通り過ぎる人を判別できるかどうかは、待ち行列のデータをより正確に得られなければならないため非常に重要です。スマートな人体検出機能(計数および動作識別)により、エレベータ群コントローラがより効率的にエレベータを管理し、利用者体験の向上、さらには消費電力や運用コストの削減にもつながります。

TIのビルディング・オートメーション向け産業用ミリ波センサは、屋内で最大14メートル離れた人の検知と追跡が可能です。TIのミリ波センサは高精度の占有検出に使用することができます。例えば、人が対象領域に立ち入ったり特定の方向に移動したりすると、人の位置や速度をトリガとしてエレベータ・システムを作動させます。さらに、エレベータのドアを操作する機能(乗るときにドアを開いたまま、もしくは閉めたりする)もミリ波センサで強化することができます。TIのミリ波センサはオンボード処理を採用し、テーブルや箱などの対象外の静的な物体や、植物や送風機などの動的な物体であっても、その特徴を無視することで誤検知を減らします。このセンサは、直射日光、夜間、煙や霧や粉塵で視界が悪い場合などの、厳しい環境でも動作します。カメラや光学レンズを持たないため、ミリ波テクノロジはプライバシーに配慮が必要なアプリケーションにも適しています。

TIではミリ波センサの使用例、トレーニング・ビデオ、リファレンス・デザインを多数ご用意しています。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年3月22日)より翻訳転載されました。
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