前回のブログ記事では、TIのミリ波センサによる、工場のロボット・アームのエッジ・インテリジェンスの実現方法について説明しました。今回は、ミリ波テクノロジーが自律型ロボットのエッジ・インテリジェンスを提供し、ロボットの動きを遅くしたり停止したりする意思決定をリアルタイムに行い、産業用ロボットアプリケーションにおいて継続的に性能を発揮できる方法について説明します。

衝突事故は人間や他の物と協働するロボットを使用する際に大きな懸念となりますが、TIのミリ波センサは、産業用ロボットの衝突を回避するシステム設計に用いることができます。エッジでの機械学習作業も必要な場合、ミリ波センサは、SitaraTMプロセッサのような産業用グレードのプロセッサとシームレスに連携し、インテリジェンスを強化します。

スマートなロボティクスを実現するTIのミリ波センサとSitaraプロセッサ

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車載先進運転支援システムのサラウンドビュー監視や障害物検知にミリ波を利用する場合と同じく、ミリ波センサは、図1に示す物流ロボット、配送車、フォークリフト、パレットリフトなどの無人搬送車に関連する、似たような課題を解決するのに役立ちます。

図1:さまざまな無人搬送車

3Dポイント・クラウド検出

トランスミッタ・アンテナ3基とレシーバ・アンテナ4基で構成されたミリ波センサを用いて、高所から物体を検知するために、水平面と垂直面の両方の角度情報を伴う、最大30mの距離の3Dオブジェクト検出が可能です。この機能は、地上から高い位置にセンサが取り付けられているフォークリフトなどの車両に便利です。センサ1つで120度の視野角の中の物体を検知できるため、サラウンド監視システムに必要なセンサ数を最小限に抑えることができます。

高い分解能による正確な検知

ミリ波センサは4GHzと広い帯域幅で機能するため、物体同士の距離が4cmの近さでも物体を見分けることができます。また、暗闇、粉塵や物理的な障壁により視界が不明瞭なエリアでも運用できます。センサが物体や人を正確にカウントして識別し、衝突する前にロボットを停止させるといった適切な行動をリアルタイムに行うために、この高分解能力が必要です。

リアルタイムの物体センシングや衝突回避に加えて、ミリ波センサは産業用ロボットをよりスマートにする機能も備えます。

対地速度と境界部の検出

TIのミリ波テクノロジーは、サブミリ単位の精度と高い分解能で、ドップラー偏移による精密な対地速度センシングを実現します。これによりセンサ・システムが車の対地速度を計算し、タイヤが滑る可能性がある荷受けドックなどの地面の境界部を検知して、回復不可能な状況を避けることが可能になります。

透明な物体の検出

TIのミリ波センサは、光を利用する一部のテクノロジーでは検出が困難な、ガラスやプラスチックなどの透明な物体や暗い色の物体も検出できます。検出精度が上がることで、ガラスの仕切り壁やガラス製の物と衝突するような事故を防げます。

SIL-2準拠

TIの60GHzミリ波センサは、人間と機械が近い距離で連携する際のインシデント管理のためのIEC安全整合レベル(SIL)-2規格にシステムが準拠するよう支援します。SIL-2認証システムを設計する際に、TIのミリ波センサを使用することで、認証取得のために本来ならセーフティ・プロセッサ・システムや二重化センサ・システムを追加で実装しなければ得られないような機能を実現できるようになります。

自律型ロボットのTIミリ波センサ

高度に統合されたTIのミリ波レーダー・センサは、エッジでのインテリジェントな自動運用のために、デジタル信号プロセッサの一部として高度なクラスタ化および追跡アルゴリズムを備えています。図2に示すのは、処理を統合したTIのミリ波チップです。

2:標準的なフロント・エンド・センサ・ソリューションと、エッジ・インテリジェンスを実現するTIの統合型ミリ波センサの比較

TIのミリ波センサは、雨や粉塵、煙などの環境条件や照明条件に左右されず、プラスチックなどの物質を透過して検知する機能があるため、ロボットの通り道にある物体を効果的に検知するために外部レンズや開口部、センサ露出面を設けるといったことは必要ありません。

さらなるエッジ・インテリジェンスを実現

産業分野では、機械学習の一部であるディープ・ラーニングが人気を集めています。TIでは、ロボティクスを含め、さまざまなアプリケーションでディープ・ラーニング推論をエッジに組み入れる設計を支援するハードウェアとソフトウェアを用意しています。

スマート・センシングだけでは不十分なアプリケーションには、最大1.5GHzで動作する高性能Arm® Cortex®-A15コアとデュアルコアC66xプロセッサを搭載したSitara AM57xプロセッサ・ファミリをご用意しています。このプロセッサ・ファミリは、従来のマシン・ビジョン・アルゴリズムに加えてディープ・ラーニング推論を実行することで、予知保全や残り実用寿命の推定など、アプリケーションで求められる機械学習のニーズに対応するほか、センサ入力に基づく意思決定を既存の能力以上に向上させることができます。Sitara AM57xプロセッサは、産業用通信(EtherCAT、PROFINET、タイム・センシティブ・ネットワーキング、PROFIBUS、イーサネット/インターネット・プロトコル)専用のハードウェアを搭載し、ロボットのコントローラの中央処理装置として機能できます。

確実な物体検出向けの統合型ミリ波センシング・ソリューションは、機械学習を強化するSitaraプロセッサとの組み合わせにより、ロボット・アーム周辺のエリア・スキャナや自律型ロボットの衝突回避に対応するインテリジェント・ソリューションを提供します。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年4月8日)より翻訳転載されました。
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