スマート センサ トランスミッタは、ファクトリ オートメーション、プロセス計測、制御機器の分野で、温度、圧力、流量、液面など、さまざまなプロセス変数を測定する目的で広く使用されています。図 1 は、測温抵抗体 (RTD)、サーミスタ、熱電対のいずれかを使用し、主な変数として温度を測定するフィールド トランスミッタのブロック図です。
図1：プロセス制御アプリケーション向けの温度トランスミッタのブロック図
このシグナル チェーンは、センサのアナログ フロント エンド、マイコン (MCU)、高精度の A/D コンバータと D/A コンバータを搭載しています。
4 ～ 20mA ループからスマート センサへの電力供給
基本的なセンサ トランスミッタの回路に搭載しているマイコンとデータ コンバータは通常、動作電流の低減向けに最適化済みであるのに対し、高性能スマート センサ アプリケーションの追加機能は、電流要件の増加につながります。たとえば、絶縁、キャリブレーション、診断、液晶 (LCD) インターフェイス、ワイヤレス コネクティビティ オプション (Bluetooth® Low Energy やワイヤレス HART®など) といった機能を回路に追加した場合、消費電流は大きくなります。
このようなインテリジェント センサ システムは、4 ～ 20mA 電流ループのゼロ スケール (ゼロを表す電流値) である 4mA という、標準的なスケール下限に対応できない可能性があります。たとえば、TI の DAC161S997 で、過小エラー電流を表すデフォルト ループ電流は 3.375mA、過大エラー電流は 21.75mA です。NAMUR の NE43 の仕様でも、類似の電流スレッショルドになっています。幸い、高効率の同期整流降圧コンバータは、センサ エレクトロニクスに電力を供給するために低ドロップアウト (LDO) レギュレータより多くの出力電流を供給しながら、ループから取り込む電流は 3.375mA 未満です。
入力電圧範囲 (VIN) が広く、低静止電流 (IQ) である同期整流降圧コンバータ
センサに電力を供給できるように、TI の同期整流降圧ソリューションである LMR36501 は高効率と超低静止電流 (IQ = 1.2μA) を達成しています。この製品は、20:1 の広い入力電圧範囲 (VIN) で動作しながら、反復的な 65V のサージに耐えることができます。またその出力電圧は、振幅が大きくノイズの多い入力電圧への耐性があります。高信頼性を必要とするセンサ アプリケーションにとって、このような過渡耐性性能は不可欠です。
図 2 に、逆極性、過渡電圧、サージ電圧に対する保護を実現し、25mA で 5V を出力するように構成したコンバータの回路図を示します。この構成は、電磁適合性 (EMC) の確保に役立ちます。
図2：5V、100mA 出力の LMR36501 の設計
LMR36501 のさまざまな内蔵機能や特長のうち、スマート センサ アプリケーションに適したものとして、最小の受動部品数で動作する小型 (2mm x 2mm) のコンバータ設計、軽負荷効率と静止電流を重視した最適化、低ノイズのパッケージ デザイン、電源レール シーケンシングと障害報告向けのパワー グッド フラグ、内部固定のソフト スタートなどがあります。また、プログラマブルなライン (商用電源) 低電圧ロックアウト (UVLO) 向けに、ヒステリシスをカスタマイズ可能な高精度イネーブルも備えています。図 3 に、負荷電流が 1mA ～ 100mA の範囲にわたるコンバータの効率を示します。
図3：1MHz、5V 出力時の LMR36501 の効率
入力電圧範囲 (VIN) が広く、低静止電流 (IQ) である降圧コンバータの価値の提示
LMR36501 のように、入力電圧範囲 (VIN) の広い降圧コンバータの利点は、相互に結び付いた機能セットにあり、これらは電源ソリューション固有の以下のような一連のニーズの解決に役立ちます。
- 広い負荷電流範囲にわたって高効率を維持する同期整流降圧の設計。
- 最大 150℃ の動作接合部温度定格を達成する、強化された信頼性。
- 入力電圧の過渡的外乱に耐える十分なマージンを確保した、広い入力電圧範囲 (VIN)。その結果、より電圧の高い (かつフットプリントの小さい) 過度電圧サプレッサ (TVS) ダイオードを使用できます。
- スペースに制約のあるセンサ筐体に適した小型ソリューション サイズ。
- アプリケーションの (安全性) 要件を達成できる、入力静電容量の低減。
- EMC 要件の達成に適した低ノイズのパッケージ デザイン。
最新のループ電源センサ トランスミッタの潜在能力を最大限活用し、シンプルな 2 線式アーキテクチャを維持できるように、低静止電流 (IQ) の同期整流降圧コンバータである LM5165 は、適切な負荷電流を供給すると同時に、電流ループ、ソリューション サイズ、信頼性、EMC の各要件を満たします。
参考情報
- 2 線式 4 ～ 20mA センサ トランスミッタの詳細については、TI の Precision Hub のブログ記事をご覧ください。
- 同期整流降圧コンバータである LM5165 の PFM (パルス周波数変調) とコンスタント オン タイム (COT) に対応した評価基板をご注文いただけます。
- LM5165 のクイックスタート デザイン ツールを使用すると、設計を迅速化し、対数スケールとリニア スケールの出力電流に対比させたコンバータの効率を検討することができます。
- MSP430
マイコンに HART プロトコルとモデムを組み合わせたシングルチップ トランスミッタを採用した TI Design のリファレンス デザインをご確認ください。これは、スマート センサ トランスミッタ向けデザインであり、MSP430 マイコンを使用して HART 通信を実施しています。
