モノのインターネット、つまり IoT は、多様な市場とアプリケーションにまたがって新しい使用状況を実現できるようにする、対応力の高いテクノロジーです。 一般に IoT について考えるときは、ホーム・アプリケーションやパーソナル・アプリケーションが想定される傾向がありますが、実際のところ、IoT で接続された製品が役割を果たすのは小規模製造業、小規模市区町村、車載、ビル・オートメーション、ヘルスケアなどです。  

産業用 IoT には強力な潜在能力があります。より多くのセンサと機器がクラウドに接続されることにより、サービスが提供されるからです。 IoT を M2M(マシン・ツー・マシン)コネクティビティを混同しないように注意する必要があります。これらは完全に同じものを指すわけではないからです。 従来型の M2M は閉鎖的な環境内で独自テクノロジーをベースとして実装されてきたのに対し、IoT はオープン環境で使用され、標準的なインターネット・アクセス機能とインターネット・サービスを活用します。後者は、人間が使用する例も一般的に見受けられます。 IoT で採用されているこのようなレベルのオープン性により、問題が発生したときにガス・センサが音声またはテキストにより症状をオペレータに伝えることができます。また、産業用最終機器は、公開されている汎用データベースを使用し、産業用ベンチマークと比較して自らの性能を判定することができます。これらの挙動は、独自実装の M2M システムでは直接的には実現されていません。

高度なレベルで考慮すると、IoT は効率(エネルギー、製造、メンテナンスなど)の改善、安全性とセキュリティの向上、使いやすさの向上、業務サービスの新規創出などを実現しており、以下のような業種が該当します。

  • スマート製造: メーカーは有線またはワイヤレスのコネクティビティを自社の製品や製品ラインに追加して、製造プロセスを改善しています。 統合型のコネクティビティを通じて、メーカーはより的確な方法で工場の現場から自社のクラウド・システムへの情報取得を実施し、製品が工場から出荷されるよりずっと前に、あらゆる問題を迅速に検出して対処することができます。 また、メーカーはコネクティビティを使用して、フィールドに配置済みの機器に関する情報を収集することも希望しています。 このような情報は、バグの検出や機器の監視に役立つほか、無線を通じたソフトウェアとファームウェアの更新にも役立ちます。これらは、以前は実現できなかった手法です。
  • ビルディング・オートメーション: ファクトリ・オートメーションにかなりよく似ていますが、ビルディング・オートメーションを使用して多数のセンサを接続し、人の有無に基づく照明の点灯と消灯や、HVAC(暖房、通気、エアコン)の動的な制御を実現し、エネルギー消費を最適化することができます。 予測に基づくメンテナンスも、保守サービスを適切な時期に確実に実施するという利点を達成し、コスト削減につながります。
  • スマート・シティ: スマート・シティを形成する多数の要素を IoT に接続すると、環境保護の努力を改善することを目的とした e メーターを使用して、電力と水道の使用効率向上を強化できます。 接続型のスマート街灯と、クラウド接続型の監視カメラや交通制御/監視システムも、都市の円滑に運用に貢献します。 最後に、都市全体に配置されたセンサにより、ガス管や水道管からの漏出を検出して、市民の安全と確実な運用を継続することができます。
  • 車載用: ネットワーク接続型の車載インフォテインメント・サービスを使用してエンターテインメントをストリーミングで供給し、ナビゲーションや他の接続型サービスを実現することができます。 車両内の配線をワイヤレス・コネクティビティに置き換えると、車両の軽量化と燃費向上につながり、センサを活用した予測による保守を実施すると、多くのコストを要する事後の修理に伴う費用を節約できます。
  • 小売店ネットワーク接続された小売店の環境では、在庫をより的確に追跡し、陳列棚に掲示するラベルをデジタル化して動的に変更することができます。 店舗内にある IoT 接続型のビーコンを、顧客の定期的な利用を促進する顧客ロイヤリティ・プログラムと組み合わせると、顧客が店舗内で買い物をしている間に、各顧客の好みに基づいてクーポン発行や割引価格などをスマートフォンに対して直接通知することができます。
  • ヘルスケア: 職場以外の場所にある IoT を通じて、従業員の健康と安全性を向上させる機会を追加することもできます。 接続型のウェアラブル機器とヘルスケア機器による監視を通じて、全体的な健康状態を改善できます。

上記の例の多くは、コンシューマ以外の市場でも役割を果たします。 ただし、産業用 IoT はコンシューマ・アプリケーションとは異なるものです。 産業用途では、使用する状況とアプリケーションが異なることが原因で、雑音や環境の変化に対する耐性を備え、遅延時間を制御でき、高度なセキュリティを確保した、コンシューマ用途とは異なるインターフェイスと通信プロトコルが求められます。

さらに、コンシューマ市場に比べると産業用の市場の変化はかなり緩やかで、IoT 接続 への移行にはある程度の期間を要します。 予測に基づくメンテナンス、監視、ビッグ・データの分析に伴う利点は、出力される成果の向上や作業環境の改善であり、適切なハードウェアやソフトウェア・ソリューションも継続的に利用できるようになります。これらの利点の組み合わせを考慮すると、将来に向かって IoT 接続型のシステムに移行することは経済的にも十分引き合います。問題は、どれほどの速度で実施を進めるか、ということです。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/industrial_strength/archive/2015/04/16/building-the-industrial-internet-of-things


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